チーズ

古い歴史を持つチーズの誕生には諸説ありますが、アラビア商人がヤギの乳から偶然にチーズを発見したという逸話が代表的なものでしょう。古代ギリシャではチーズは女性に「美と知」を与え、男性に「力」を与える食べ物として珍重されていました。中世ヨーロッパでは修道院がチーズの製造・発展に大きな役割を果たし、日本での製造は1875年からです。
●チーズの分類
ナチュラルチーズ:ミルク(牛乳、山羊乳など)を、乳酸発酵させ、水分(乳清)を抜き、酵素などの働きで固めたもの。乳酸菌などの微生物が生き続け、時とともに熟成が進み、味や香りが変化する、いわゆる「生きているチーズ」。(熟成させずに食べるフレッシュタイプのチーズもこの中に含まれる)
プロセスチーズ :1種類、あるいはそれ以上の種類のナチュラルチーズを原料に、それらを加熱溶解して、固めて作るチーズ。加熱によって乳酸菌などは死んでしまうので、それ以上熟成は進まない。一方で、長期間変わらぬ味を楽しめるなど、保存性は高まる。日本では、このタイプのチーズが、主に普及したが、最近、ナチュラルチーズの人気も高まりつつある。

ヨーグルト

ヨーグルトは牛、水牛、山羊などの乳でつくられる発酵乳です。古くからバルカン半島では重要な食物とされており、トルコ語の「ヨウルト(yogurt)=攪拌する」が名の由来です。19世紀末、ロシアのイリヤ・メチニコフ博士がヨーグルトを多食するブルガリアの特定地域に長寿者の多いことを発表したことから、その効能が世界中に広がりました。日本での普及は戦後です。

生クリーム

クリームとは搾乳した乳をそのままにして置くとできる濃い脂肪のことで、生乳は静置されている間に脂肪球が徐々に浮上して、表面にトロリとした濃い層をつくります。添加物が一切加えられていないため、味は乳脂肪に含まれる成分によって決まります。クリームの色味は乳脂肪中に溶け込んだカロテン色素の量で色に左右され、青草をたくさん食べた牛の生乳から取れるクリームは黄色味が強く、干草や配合飼料が多いと白っぽくなるといわれています。一般にいわれる生クリームは俗称です。

練乳

練乳は牛乳の成分を可能な限り凝縮して濃くし、ばい菌などの菌の発生を抑えたミルクです。赤ちゃんに安全に飲ませることを目的に開発され、1856年アメリカのボーデンによってつくられました。日本で初めてつくられたのは1872年、粉ミルクが開発されるまで乳児の人工栄養として利用されました。欧米では現在でも育児用の乳製品の一部に練乳が使われています。
●練乳の種類
無糖練乳:エバミルクと呼ばれている
加糖練乳:コンデンスミルクと呼ばれている

脱脂粉乳

スキムミルクとも呼ばれ、バターをつくる時にできる副産物で、水分を完全に除去して粉末状にしたものです。1947年、敗戦で悲惨な栄養状況だった日本の子どもたちを救うために、アメリカなどから「ララ(アジア救済公認団体)放出物資」という救援物質として日本に入った食材です。脂肪の変敗による臭いの変化が少なく、保存性に優れています。

牛乳

紀元前4千年ころのエジプトやメソポタミアの壁画から牛乳のあったことが推測されるほど古い歴史を持ち、当時は医薬品としても使われていたと考えられています。日本では701年に都の近くに皇族用の搾乳所がつくられ、784年の『医心方』に牛乳の効能が書かれています。8代将軍吉宗はインドから白牛を輸入して牛乳の普及を図りましたが、本格的に普及したのは明治時代になってからです。
●牛乳の種類
牛乳:生乳を加熱殺菌したもので乳脂肪分が3.0%以上で、無脂乳固形分8.0%以上の成分を含むもの。
成分調整牛乳:生乳から乳脂肪分の一部を除去したり、水分の一部を除去して成分を濃くするなどの調整を行ったもの
低脂肪牛乳:成分調整牛乳の乳脂肪分を0.5%以上1.5%以下にしたもの。
無脂肪牛乳:成分調整牛乳の乳脂肪分を0.5%未満にしたもの。
加工乳:生乳の乳脂肪を加工したもの。濃厚ミルクや低脂肪乳などをいう
乳飲料:生乳に乳製品以外のもの(コーヒーや果汁、カルシウムやビタミンなど)を入れたもの 

生後1年未満の子羊肉をラム、1年以上経った成羊肉をマトンと呼び、欧米ではもっともポピュラーな動物で、中世ヨーロッパでは旅行に出る時には必ず1匹連れ歩き、毎日新鮮な乳を得たといいます。1万年以上の歴史を持ち、家畜化されたのは8千年前といわれています。捨てる部分が出ない無駄のない動物で、腸(ガット)は弦に使われることから、テニスの弦はガットと呼ばれています。

豚肉

『日本書紀』にすでに食用の記録が残っているほど、古くから食べられていた肉で、ヨーロッパからアジアにかけて分布していたイノシシが家畜化されたものです。世界でもっとも古くから豚肉を食用として活用していたのは中国民族で、中国では豚は捨てる部位がないといわれています。日本では明治中期以降から飼育が盛んになり、長寿日本一の沖縄でもっとも消費されている食材です。
●部位別
カタ:カタロースとうでを合わせた部分をいう。よく動かす部分なので肉質はかため。ビタミン類やミネラル類が多い。
カタロース:カタのロースの部分をいう。風味がある。脂質が多く、ビタミンB12が多い。
ロース:カタとモモの間にある背側の肉。表面は脂肪で覆われており、きめが細かくやわらかい。脂質が多くビタミンB1が豊富。
バラ:カタとモモの間にある腹側の肉。赤身と脂身が交互に層をなしているので三枚肉ともいわれている。脂質が多くうまみがある。ビタミンAとEが豊富に含まれている。
モモ:脚上部の腰につながる部分の肉をいう。かためだがコクがある。ナイアシンが豊富なので皮膚病や血栓予防に優れている。脂質が少なくビタミンB1が多い。
ヒレ:ロースの内側にある肉をいう。脂質が少なくたんぱく質に富んでいる。部位の中ではビタミンB1、B2ともに一番多く含んでいる。疲労を回復し生活習慣病の予防に有効。
豚足:コラーゲンを多く含み、増血作用も高い。

鶏肉

にわとりはもともと野生の鳥でしたが、今では家禽(かきん)の代表といえましょう。人間が農耕生活を送るようになった約5000年前から一緒に暮らすようになり、鳴き声で時を知らせたり、闘鶏の結果で吉凶が占われていました。昭和30年代から食肉用としての養鶏が盛んになり、用途別に改良が進められました。食肉用若鶏のブロイラーに対し、日本在来の品種は地鶏といわれ区別されています。
●部位別
手羽:手羽元、手羽中、手羽先に分けられる。手羽先はとくにゼラチン質を含んでおり、美肌効果が高い。煮物や揚げ物に向く。
むね:胸部の部分の肉をいう。もも肉よりも白っぽく脂肪が少なく淡白。ビタミンAが多く風邪の予防や肌荒れに効果がある。和風や中華に向く。
もも:ももの部分の肉をいう。赤みがあり脂質も適度に含まれ、料理の応用範囲が広い。ビタミンB2の含有が高く、動脈硬化などの生活習慣病の予防に有効。フライや煮物、焼き物に向く。
ささ身:両手羽に一つずつある深胸筋をいう。形が笹の葉に似ていることからこの名がある。高たんぱくで脂肪が少なく、あっさりした味で、胃腸の弱っている時に向く。新鮮なものは刺身に向く。

牛肉

飛鳥時代の肉食禁止令で禁止された肉は「牛、馬、犬、鶏、猿」の五蓄。ただし毎年4月から9月までの農耕期間と限られ、年間を通じて五蓄以外は食されていたと推測されています。戦国時代には足軽が非常食として牛を鉄板で焼き食したとの文献が残っており、鎖国が布告されるまでは美味な栄養源とされていました。牛肉が日常食として一般化したのは大正時代になってからです。
●部位別
カタ:腕の部分をいう。脂肪が少ない。ビタミンB12を含み悪性貧血に有効。すき焼きに向く。
カタロース:背中に近い肩の肉の部分をいう。霜降りが入りやすい部位。脂質が多い。しゃぶしゃぶに向く。
サーロイン:胸椎の後方部分の肉をいう。脂肪が多くきめの細かいやわらかい肉質をしている。
バラ:腹部の部分の肉をいう。脂肪が多く、肉質はかたい。ビタミンEが多く、老化防止に有効。煮込み料理に向く。
モモ:モモの上部の一番太い部分の肉をいう。脂肪が少なく赤身。鉄、ビタミンB1、B2が豊富で貧血予防、疲労回復、動脈硬化予防に有効。カツに向く。
そとモモ:モモの外側の肉のいう。よく動かす部分なのでかたい。脂質が少なく、鉄、ナイアシンが多い。貧血を予防し血栓を予防する。
ランプ:腰からモモにかけての部分の肉をいう。鉄、ビタミンB1、B2が多い。
ヒレ:サーロインの内側の肉をいう。脂肪が少なく、一番やわらかい。たんぱく質に富み鉄、ビタミンB1、B2、B12を豊富に含む。ステーキに向く。