たんぽぽ

たんぽぽ(蒲公英)とは

たんぽぽ

広範囲に生息する帰化植物

たんぽぽはキク科タンポポ属の多年草で、3~5月に黄色い花(白い花もある)を咲かせる春を代表する野草です。学名は「Taraxacum hondoense」。日本全国の野山や空き地、道端などに自生し、日本たんぽぽ(日本在来種)と西洋たんぽぽ(西洋種)がありますが、現在では西洋たんぽぽの方が圧倒的に多くなっています。たんぽぽは小さな花が100~200本集まって1つの頭花を作り、その頭状花序(とうじょうかじょ)の外側には緑色の総苞片(そうほうへん)が並んでいます。葉はロゼット状(放射状)で、形は倒披針形で深く裂け、切ると白い汁が出ます。根は太く地中深くに伸び、ごぼうのような形状をしています。たくさんの冠毛(かんもう)をつけた種子は綿毛と呼ばれ、風に乗って遠くに運ばれ、着地してから条件が整えば1週間ほどで発芽し、分布圏を広げていきます。

多くの別名を持つたんぽぽ

たんぽぽの種類は20種以上あるといわれ、どの種類のたんぽぽも食すことが可能です。多くの種類があるため、「だいこくばな(大黒花)」「かこもこ」「ででぽぽ」「くじな」「たな(田菜)」「ちちぐさ(乳草)」「つつみぐさ」「ででぽぽ」「ふじな」「たんほほ」「あずまたんほほ」など多くの別名で呼ばれています。英名「Dandelion」、フランス語では「Pissenlit(ピーサンリ)」、西洋では牧童の時計(シェパード・ボーイズ・ウオッチ)との異名で呼ばれています。

場所や環境によっていくつかの種類がある日本たんぽぽ

日本たんぽぽとは昔から日本に自生していたたんぽぽです。一口に日本たんぽぽといっても自生する場所や環境によって、関東地方=関東たんぽぽ、北海道から本州北部=蝦夷たんぽぽ、近畿以西=関西たんぽぽ、その他信濃たんぽぽ、東海たんぽぽなどと分布され、これらをひとまとめにして「日本たんぽぽ」と呼んでいます。

環境省指定要注意外来生物に指定されている西洋たんぽぽ

一方、西洋たんぽぽはヨーロッパ原産の帰化植物で、明治・大正・昭和の時代にかけて全国各地で増え、今なお増殖中。その旺盛な繁殖力から、環境省指定要注意外来生物に指定されています。西洋たんぽぽが始めて文献に登場したのは1904年の植物学誌で、この中で植物学者の古牧野富太郎博士は「やがて日本中に広がるだろう」と述べています。

西洋たんぽぽの渡来説

西洋たんぽぽの渡来にはいくつかの説があります。①エドウィン・ダン(明治の初めに酪農の父と呼ばれた)が、牧草と一緒に導入した ②外国からの荷物に種がついていて運ばれた ③宣教師が持ってきた ④札幌農学校の開校当時に野菜として栽培されたなどの諸説があり、その中で一番有力なのは④だといわれています。「西洋たんぽぽは札幌農学校で農業分野を担当していたアメリカ人教師ウイリアム・ペン・ブルックスがサラダ用の野菜として持ち込み、試験栽植したものから種が各地に広がり繁殖していった」と考えられています。

日本在来種と西洋種の違い

日本たんぽぽと西洋たんぽぽの見分け方のポイントは、黄色い花びらを取り巻いている部分=「総苞(そうほう)」で見分けることができます。総苞は多数の苞葉が集合して形成された一種の葉的器官で、日本たんぽぽの場合この総苞は外片が立っており、西洋たんぽぽは外片が外側に反り返っているのが特徴です。また、西洋たんぽぽの花は一年中見ることができますが、日本たんぽぽの花は春だけ咲きます。

丸ごと食べることができるたんぽぽ。根はコーヒーやきんぴらなどに

たんぽぽはどんな種類でも毒性がなく、花・葉・根と丸ごと食べることができる野草です。春に若菜を摘み、ゆでて浸し物や和え物にするのがポピュラー。サラダとして利用するフランスではサラダ用のたんぽぽが栽培されています。葉は甘味と香気が強く、ほろ苦い味が特徴です。花はしおれやすいので、採取したその日のうちに使用あるいは下処理します。根は洗って乾燥→煎る→粉末の過程を経てコーヒーにしたり、そのままきんぴらやかき揚げなどに利用されています。

生薬は、健胃・消化不良・利胆・利尿などの薬効がある

たんぽぽは貴重な民間薬草で、生薬名は「蒲公英(ほこうえい)」。これは開花前の全草をよく水洗い後乾燥させたもので、一方、根を乾燥させたものは「蒲公英根(ほこうえいこん)」と呼ばれています。たんぽぽの薬効は日本たんぽぽも西洋たんぽぽも同様で、ともに、健胃、消化不良、利胆(胆汁の流れをよくする)、肝炎、利尿、母乳不足、整腸、発汗、解熱、強壮などの目的で広く利用されています。全草を食べると食毒を消し、乳腫を治すと伝えられています。また、女性ホルモンを活発にして美肌効果があるともいわれています。

ノンカフェインのたんぽぽコーヒー

根を焙煎して粉末にしたものは「たんぽぽコーヒー」と呼ばれ、カフェインを含まない健康飲料として好まれています。根には胆汁分泌を促し、食欲不振や消化不良などを含む体質改善に効能があるとされ、また母乳不足の薬効もあることから、たんぽぽコーヒーは妊娠中や授乳期間中の女性に好まれています。

たんぽぽに含まれる主な成分

たんぽぽ

貴重な民間薬として利尿作用や肝機能維持、母乳不足時の催乳などに利用されてきたたんぽぽ。特有の苦味を持ち、乳液にはタラクサシン、ミネラル類(カリウム・カルシウム・鉄分など)、ビタミンB2、A、C、ステロール、葉緑素などが含まれています。花にはルティンやアルニジオールが含まれています。

白い乳液は苦味成分

たんぽぽに含まれる白い乳液にはタラクサシンという成分が含まれています。タラクサシンはたんぽぽの苦味成分で、胆汁の流れをよくする利胆作用や、黄疸の予防に有効とされています。白い乳汁は葉・根ともに含まれていますが、たんぽぽの葉をしぼって出てくる白い乳汁はイボ取り、にきび、虫刺されやトゲの刺さった時に患部に塗る使い方が伝えられています。

調理法に気をつけたいカリウム

たんぽぽにはカリウム、カルシウム、鉄分などのミネラル類が含まれています。カリウムは多くの食品に含まれており、主に小腸から吸収され腎臓から排出されるミネラルです。ナトリウム同様に体液浸透圧などに働き、血圧安定や利尿作用に有効なミネラル。損失量は調理法によって異なるので、煮汁を利用できる調理法がベストです。

ビタミンDと一緒に取ると効果的なカルシウム

カルシウムは体内にもっとも多く存在するミネラルで、大部分は骨や歯に含まれています。不足すると骨が折れやすくなったり歯がもろくなる、筋肉のけいれんや精神的イライラ、出血が止まらないなどの障害が起ります。体の働きを順調にするミネラルで、ビタミンDと一緒に取ると吸収率を高めることができます。

ビタミンCと一緒に取ると吸収率が高まる鉄分

鉄分は主に血液中のヘモグロビン(血色素)に含まれています。不足すると血液に酸素を運ぶ機能が低下し、息切れや疲労、食欲不振などの症状を引き起こします。鉄には植物性食品に含まれる非ヘム鉄と、肉や魚に含まれるヘム鉄があり、吸収率はヘム鉄が優れています。鉄分はビタミンCと一緒に取ると吸収率が高まるので、食べ合わせに気をつけると吸収率を高めることができます。

血中コレステロール値低下に働くステロール

たんぽぽに含まれるステロールは「植物ステロール」とも呼ばれるファイトケミカル(※)の一種です。植物由来の化合物で、白色個体で特有の臭気を持ち、水には溶けませんがアルコールには溶ける性質を持っています。ステロールは食べ物が腸で消化吸収される時に、食品中のコレステロールと競合し、血中コレステロール値低下に働きます。臨床研究による総合効果では、「悪玉コレステロールを低下させ、反作用や副作用は確認されていない」「コレステロール値が高い人ほど効果がある」と言われています(推奨:アメリカ国立衛生研究所付属の国立心肺血液研究所)。
※ファイトケミカル:ファイトとはギリシャ語の「植物(ファイト=Phyto)」、ケミカル=化学で、「植物の持つ化学的な物質」の意味に訳される。果物や野菜に含まれる、栄養素以外の成分(非栄養素=機能性成分)で、動けない植物が、太陽の有害物質や外敵から自分の身を守るために自ら産出する物質で、私たちの体に入ると抗酸化力を発揮する。その抗酸化力は、体を酸化させる活性酸素(フリーラジカル)を無毒化して細胞を守り、酸化によって引き起こされるがんや老化を防ぐ効力を持っている。

光合成に欠かせないクロロフィル(葉緑素)が健康維持に働く

クロロフィルは葉緑素とも呼ばれる緑色をした色素で、どくだみの葉が緑色なのはクロロフィルを含有しているからです。クロロフィルの分子構造は血液に類似しているため「植物の血液」とも呼ばれています。「増血や血液をキレイにする」「肝臓の強化」「損傷を受けた組織の修復」などの働きを持ち、私たちの健康維持に働き、光合成に欠かせない成分です。
※光合成:動けない植物が必要な栄養分(炭水化物)を自分の体の中で作る仕組み。太陽光・空気中の二酸化炭素・根から吸い上げた水を使って、葉緑体の中で栄養成分を作り出し、水を分解する過程でできる酸素は外に排出する。

ビタミンCが鉄分の吸収を高める

たんぽぽにはビタミンAやビタミンCが含まれています。ビタミンAは眼に栄養を与えて皮膚や粘膜を健康にするビタミンで、ビタミンCは血管強化やストレスへの抵抗力をつける働きを持つビタミンです。たんぽぽに含まれるビタミンCは、同様に含まれる鉄分の吸収を高める働きを持っています。

花に含まれている高い抗酸化成分

花に含まれるルティンはカロチノイドの一種で高い抗酸化力を持つ脂溶性の成分です。ルティンはマリーゴールドの花やほうれん草やキャベツなどの緑黄色野菜に多く含まれ、目の病気に効果があるといわれています。目の組織に蓄積されているので、紫外線に対してバリア効果を発揮すると期待されています。同様に含まれるアルニジオールは健胃、利胆、解毒などの作用があります。

たんぽぽの葉のゆで方

たんぽぽのアクは弱から中程度です。花や葉のアクは少ないため、ゆでる時間は短時間で十分です。アクが気になる場合は、水に放す時間を長くすると気にならなくなります。

たんぽぽの葉のゆで方

  1. たんぽぽの葉はよく洗い、水気をきる。
    たんぽぽの葉のゆで方
  2. 鍋にたっぷりの湯を沸騰させ、塩少々を加え、水気をきったたんぽぽの葉をさっとゆでる。
    たんぽぽの葉のゆで方
  3. ゆであがったらすぐに水に放し、水気をきる。
    たんぽぽの葉のゆで方

たんぽぽレシピ

古くヨーロッパでは春先の味覚としてサラダなどで食されてきたたんぽぽ。韓国でもキムチやナムルに利用されています。たんぽぽには多くの種類がありますが、どの種類でも毒性はなく、また、葉・花・茎・根と丸ごと食べることができます。たんぽぽの葉は特に利尿作用が高く、特有の苦味は胆汁の流れをよくする働きに優れて、民間療法では催乳作用があると伝えられています。乾燥させて粉末にしたたんぽぽコーヒーはノンカフェインの健康飲料です。アクが少なく料理に応用しやすいたんぽぽ。良質なたんぱく質や脂質、糖質などと食べ合わせ、日常の食卓に登場させてください。

たんぽぽとイワシのミモザサラダ

たんぽぽとイワシのミモザサラダ
イワシは良質なたんぱく質と脂質を持つ青魚です。たんぽぽの葉と一緒に取るサラダは栄養バランスに優れ、体の生理機能が整う食べ合わせです。イワシとたんぽぽの良質な脂質と、レタスとたんぽぽの豊富な食物繊維、たんぽぽのステロールが血中コレステロールを下げ、脂質異常や動脈硬化予防に働きます。ミモザサラダとはゆで卵を裏ごしして粒状にしたものを野菜の上にかけて作るサラダです。粒状の卵黄が、初夏に咲く黄色い花のミモザに似ていることからこの名で呼ばれています。

たんぽぽの豆乳スープ

たんぽぽの豆乳スープ
豆乳は大豆から得られる乳状の飲料で、たんぱく質やビタミンB1などの含有率が牛乳に似ていることから、古くは牛乳や母乳の代用品として利用されてきた健康飲料です。たんぽぽの葉・たまねぎ・にんにくをコトコト煮たスープは薬効成分が溶け出た抗酸化力の高いスープで、豆乳のたんぱく質やビタミンが加わることで高い栄養価が期待できます。栄養バランスのよい消化に優れたヘルシーなダイエットスープとしておススメです。

たんぽぽとレーズン・ベーコンのサフランライス

たんぽぽとレーズン・ベーコンのサフランライス
旧約聖書で「芳香を放つハーブ」と記されるサフランは、更年期障害や月経困難などの女性特有の症状に効果が高いと評価されているハーブです。たんぽぽの葉・レーズン・ベーコンと一緒に取ると、栄養バランスの整った食べ合わせになります。たんぽぽの葉とレーズンの抗酸化力が、細胞の酸化予防に働き免疫力を強化。レーズンは干すことで鉄分やカルシウムが倍増し、たんぽぽに含まれる鉄分・カルシウム・葉緑素が合わさることで、貧血予防や骨や歯の強化にも有効です。

たんぽぽペーストのパスタ

たんぽぽペーストのパスタ
たんぽぽの葉にはミネラルやビタミン、葉緑素などが含まれ、胃病や消化不良、利尿や便秘などに働き、特有の苦みは胆汁の流れをよくする作用に優れています。高い抗酸化力と良質な脂質を持つ松の実とオリーブ油、強壮・強精食品のにんにくを一緒に取ると、免疫力が高まり抗がん作用が期待できる食べ合わせになります。ペンネの糖質がエネルギー源となり、体力強化に有効です。

たんぽぽのジャム

たんぽぽのジャム
たんぽぽジャム(ジュレ)は春先にたんぽぽを食する食生活が根付いているヨーロッパなどでよく作られるたんぽぽの花のジャムです。パンやハードタイプのチーズに付けたり、ヨーグルトにかけるなど、そのはちみつに似た濃厚な味は美味で特有です。花に含まれるルティンやアルニジオールは目の働きを高め、健胃や利胆作用に働き、粗製糖のミネラルが胃腸や肝臓の機能アップ、さらに鉄分補給源として優れています。レモンやオレンジは皮ごと使うので、ぜひオーガニックのものを使ってください。