花粉症とは
花粉症とは
花粉症はⅠ型アレルギーに分類される疾患です。植物の花粉が目や鼻などの粘膜に接触することで、くしゃみ・鼻水・鼻詰まり・目のかゆみといった特徴的な症状が引き起こされます。原則的に自然治癒は期待できないとされており、患者数は増える一方で、新たな国民病ともいわれています。
花粉症の三大症状
鼻の場合は「くしゃみ」「鼻水」「鼻詰まり」。目の場合は「目のかゆみ」「充血」「涙が出る」。鼻と目の三大症状の他にも、花粉症は「味覚障害」「頭痛・頭が重い」「耳がかゆい」「喉がかゆい・咳や痰が出る」「食欲不振」「全身の倦怠感」などの、様々な全身症状が見られます。
免疫がマイナスに働く
ヒトは細菌やウイルスなどの外部の異物や、異常な細胞が発生した時に、それらを排除する「免疫」という機能を持っています。本来免疫は生体にとってプラスに働くものですが、マイナスに働くことがあります。このマイナスの働きがアレルギーです。
アレルギー体質とは、IgE抗体を多く作り出す体質
花粉が粘膜につくと、IgE抗体(アイジーイーこうたい)が作られます。IgE抗体は侵入してきた花粉に反応して、ヒスタミンなどの化学伝達物質を吐き出します。ヒスタミンは神経を刺激してかゆみを引き起こし、このIgE抗体を多く作り出す体質の人がアレルギー体質(あるいはアトピー体質)と呼ばれます。
ある日突然に花粉症に!!
花粉症は、花粉に対するIgE抗体が体の中である一定量になった時に発症します。そのため、今まで何ともなかった人が、ある日突然に花粉症になることがあります。IgE抗体の一定量は人それぞれに違い、また、一定量に達するまでの期間も人それぞれです。早くから花粉症を発症する人もいれば、抗体を持っているのに発症しない人もいます。
日本では「花粉症=スギ花粉症」
日本ではスギ花粉が多いため、花粉症といえばスギ花粉症を指すことが多いのですが、スギ以外にも花粉症の原因になる植物は約60種類あるといわれています。樹木ではヒノキ・ハンノキ・ブナ・マツ・イチョウなど、草花ではカモガヤ・オオアワガエリ・ブタクサ・カナムグラ・ヨモギなどが有名です。イギリスでは古くより農民が牧草をサイロに収納する際に、目のかゆみや鼻や喉の痛みが発症することがあり、これは「枯草熱(こそうねつ)」と呼ばれていました。
花粉症の予防・軽減に効果のある食べ物
抗酸化作用が高く、ヒスタミンやロイコトリエン(細胞膜が酸化することでできる物質)を抑える働きのある食べ物を日常的に取り入れましょう。
花粉症予防に効果の高い食品
- しそ、緑茶、乳酸菌(ヨーグルト)
- 魚介類(特に青魚)
- 薬味類(長ねぎ・しょうが・にんにく)
- いも類(さつまいも・やまのいも・じゃがいも)
- 緑黄色野菜(にんじん・ほうれん草)
- 根菜類(大根・かぶ)
- ハーブ(特にペパーミント)
- 甜茶など
花粉症を予防する・軽減する食生活
ポリフェノールを多く含む野菜などをしっかり取る
粉症予防に効く食べ物として、しそ・緑茶・ハーブなどが挙げられますが、それらに共通する成分がポリフェノールです。ポリフェノールはほとんどの植物に含まれている光合成によってできた色素や苦み成分で、約5000種以上の種類があるといわれています。種類ごとにそれぞれの効能を持っていますが、共通して持っているのは、強い抗酸化作用です。
有名なポリフェノール
カテキン(お茶)、アントシアニン(赤色色素)、イソフラボン(大豆)、プロアントシアジニン(赤ワイン)、クロロゲン(コーヒー)、クルクミン(ウコン)など
ビタミン、ミネラル、食物繊維をしっかり取る
ポリフェノールと同時に、免疫力を高めるビタミンやミネラル、腸内の環境を整える食物繊維も、しっかり取りましょう。花粉症を予防・軽減するためには、一年を通して、それらの栄養成分を日常的に取ることで、緩やかに体質を改善していくことが大切です。
基本の和食が理想的
加工食品など食品添加物の入った食品・甘いもの・動物性たんぱく質・脂肪などの取り過ぎは、アレルギーになる危険性が高まります。また、アルコールの取り過ぎは血管を広げて鼻水を増やす原因にもなるので気をつけましょう。魚や野菜を中心とした和食がおススメです。
体を温める食べ物を取る
花粉症は「冷え」が大敵です。体が冷えると体内の細菌に対する抵抗力が低下し、腸内で有害菌が増殖します。体を温める食べ物には秋冬が旬の根菜類や、薬味類などがありますので、年間を通して体温を上げる食生活をするよう努力しましょう。人間は体温が1℃上がると、免疫力は約6倍活性化するといわれています。
しそ・緑茶で花粉症を予防する
花粉症は原則的に自然治癒ができないといわれています。しかし、体質を改善することで、症状を軽減することは可能です。
食べ物で体質を改善するには、ある一定の期間、焦らず有効成分を日常的に取り続けることが大切です。そして、効果のある食べ物を有効に食べる知恵も必要です。
まずは、年間を通して入手しやすい「しそ」と「緑茶」を日常の食卓に登場させ、花粉症やアレルギー緩和を目指しましょう。
一年、二年と食べ続けることによって、ゆっくりと穏やかに体質が改善され、症状が緩和されていきます。
●しそ(紫蘇)
殺菌作用に優れ、薬味や刺身のツマとして使われることの多いしそは、アレルギー症状を抑える働きのあるαリノレン酸、花粉症の症状を増長する原因物質を抑える作用を持つルテオリン、炎症を和らげる働きのあるロズマリン酸などを含んでいます。特に体内でEPAの働きを持つαリノレン酸が多く含有されているため、花粉症の予防に効果が期待できます。
●緑茶
緑茶に含まれるポリフェノールの一種のカテキンやカフェインは、過剰になったヒスタミンを抑え、アレルギーや花粉症予防に働きます。カテキンは緑茶独特の渋み成分のもとで、活性酸素を除去する働きに優れています。茶葉にはたんぱく質・食物繊維・不溶性ビタミン・ミネラルなどが豊富に含まれているので、お茶として飲んだ後の茶殻も有効に活用しましょう。もちろん、カテキンも残っています。
緑茶とアジで作る炊き込みごはんは、緑茶のカテキンとアジの良質な脂質EPA(イコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が溶け出たごはんで、高い抗酸化力を持つ一品です。免疫力を高めてアレルギー症状の緩和に働くと同時に、血中コレステロール値低下や高血圧予防にも有効です。しょうがをプラスして、抗酸化力を高めます。
粉茶のカテキン、マグロのDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(イコサペンタエン酸)、長いもの酵素は免疫力を高めてアレルギー症状を緩和する食べ合わせです。加熱しないで食べることで、マグロの良質な脂質や長いもの酵素を十二分に取り入れることができます。高血圧や糖尿病の予防、老化防止にも有効です。
茶殻に残っているカテキンや食物性繊維、おから・しいたけ・白滝の食物繊維、にんじんの抗酸化力を一緒に取ると、腸の免疫バランスが整えられてアレルギー体質の改善に有効な食べ合わせになります。ポリフェノールや食物繊維は日常的に取ることで免疫力の強化につながり、生活習慣病の予防に働きます。
粉茶は煎茶を作る時に出た粉で、茶の効能をタップリ持っています。粉茶のカテキン・豆腐のイソフラボン・ごまのリグナン・ほうれん草のβ‐カロテンが免疫力強化に働き、アレルギー症状を抑える食べ合わせになります。豊富な食物繊維がコレステロール値を下げ、腸内環境を整えます。良質な脂質が取れ、動脈硬化や高血圧の予防にも有効な一品です。
熱いお湯でカテキンを十分に出した緑茶・EPAやDHAを含む鮭・体を温める効能のある根菜類を一緒に煮たポトフは、免疫力を強化してアレルギー症状を抑える食べ合わせです。カテキンには血中コレステロールを低下させ、血圧上昇を抑える働きがあるので、高血圧の予防にも有効です。
茶殻には高い抗酸化力を持つポリフェノールのカテキンや食物繊維が豊富に含まれています。カテキンはヒスタミンの過剰放出を抑えて免疫力を高め、腸内を整える食物繊維と一緒に花粉症になりにくい体質作りに働きます。カルシウムも豊富に取れ、ストレス解消にも有効です。
茶殻で作る佃煮は、茶殻に残るたんぱく質や食物繊維などを無駄なく取り入れることができる一品です。アレルギー症状を緩和させて花粉症の予防に働き、ごまをプラスすることで動脈硬化の予防も期待できます。
緑茶も味噌も抗酸化作用が高く、アレルギーや花粉症の予防に有効に働く食品です。茶殻に残るたんぱく質には免疫力を活発にするアスパラギン酸や、脳を活性化するグルタミン酸などが含有されているので、無駄なく取り入れましょう。花粉症緩和と同時に老化防止効果も高く、抗菌作用も期待できます。
しそとにんじんを一緒に取ると、塩じそのα‐リノレン酸とにんじんの持つ高い抗酸化力の働きで、アレルギー症状が抑えられ、花粉症予防に働く食べ合わせになります。にんじんはすりおろして炊き込むため、β‐カロテンの吸収率が高まり、より高い抗酸化力が期待できます。塩じそは細切りにして、ごはんに混ぜ込んでも美味しいです。
しそのα‐リノレン酸とにんにく・松の実の抗酸化力を無駄なく取り入れたしそペーストを使った料理です。カジキマグロの脂質は良質なEPA(イコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)で、しその持つα‐リノレン酸と一緒に花粉症予防に有効に働きます。しめじのソテーを添えて、食物繊維を補います。
しその香りが青魚の臭みを取り、細菌類の繁殖を抑えるため、食中毒の予防に効果的です。イワシは酢に漬けることで、不飽和脂肪酸のEPA(イコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)を有効に取り入れることができ、花粉症緩和に働きます。生活習慣病の予防にも優れています。
しそ、味噌、くるみは抗酸化力の高い食べ合わせです。油で揚げることで、しそのβ‐カロテンの吸収力が高まり粘膜が強化されます。味噌とくるみのビタミンEが不飽和脂肪酸の酸化を防いで動脈硬化の予防に働き、抗がん作用も期待できる一品です。
しそに発酵食品のたくあんを包み、甘酢で漬けた保存食は、酵素が生きた抗アレルギーに優れた食べ合わせです。酢に漬けることで、しそのビタミンやミネラルの栄養成分が体内に吸収されやすくなり、腸の働きが整えられ疲労回復にも有効です。冷蔵庫で1か月は保存可能です。
一年中入手できるしそですが、旬は5~6月。その時期にしそ酒を作り、一年中しその持つ薬効を取り入れ、花粉症の予防や軽減に努めましょう。コレステロール低下にも有効です。オンザロックにするか、小さいリキュールグラスに入れてどうぞ。
抗菌作用の高いしょう油とにんにくは、解熱作用をさらに高める食べ合わせです。唐辛子が血行をよくして体を温めるので、しそ・しょう油・にんにく・唐辛子は花粉症予防や食欲増進に有効です。作って2~3日経つとさらに美味しく、冷蔵庫に入れると1か月は保存可能です。
毎日飲んで、花粉症を予防・軽減する
花粉症を食べ物で予防するには、毎日欠かさずに有効な成分を含む食べ物を取り続けることが大切です。手軽に無理なく取れる飲み物は、緩やかな体質改善に効果的です。朝・ティータイム・寝る前などに、一杯飲む習慣をつけましょう。免疫力が高まり、生活習慣病の予防にも有効です。
緑茶のカテキンとヨーグルトの乳酸菌を日常的に取ると、アレルギー体質改善に有効な食べ合わせになります。アレルギー体質改善には腸内の善玉菌を増やして免疫バランスを高めることが大切なので、カテキンと乳酸菌の取り合わせはベストコンビ。便秘予防や解消にも有効です。
ペパーミントは古くから愛用されてきたハーブです。含有されるポリフェノールに抗アレルギー作用があり、飲み続けることでアレルギー症状が緩和されます。生葉よりもドライの方が薬効が高いので、ドライハーブを利用するとよいでしょう。リラックス効果にも優れています。
しそのα-リノレン酸、緑茶のカテキン、梅干の抗酸化力を同時に取ることで、アレルギー症状を緩和し、花粉症を予防・軽減します。飲み続けることで免疫力が高まり、生活習慣病の予防にも有効です。