肥満
肥満とは
肥満とは
医学的に「脂肪が一定以上多くなった状態」(厚生労働省定義)をいいます。人間の体は水分、たんぱく質・糖質・脂肪などの三大栄養素、ミネラルなどで構成されており、この中で脂肪の割合(体脂肪率)が多すぎた状態が肥満と定義されています。特に内臓に脂肪が溜まる「内臓脂肪」が最も問題とされています。
内臓脂肪とは
内臓に溜まる脂肪で、腹囲と比例するため、腹囲を測って判定します。内臓脂肪が多くなると、内臓脂肪から出ているアディポサイトカインという物質のうち、生活習慣病になりやすくなる成分が多く分泌されるようになります。栄養の一時的な貯蔵庫でもあるため、常に合成・分解を繰り返しており、溜まりやすく減りやすいという側面を持っています。
内臓脂肪の測り方
腹囲を測って判定します。腹囲とはおへその高さで測るウエスト周りを指し、腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上を「内臓脂肪型肥満」と判定しています。
BMI(ボディ・マス・インデックス)とは
BMIとは世界的に採用されている「肥満を測る共通の算出方法」です。「体重÷身長の2乗」で数値を出し、その数値が「22」の時が統計的に最も病気にかかりにくいとされています。この「22」を基準として考え、男性は20~25、女性は19~24が許容範囲とされています。この数値はあくまでも目安です。
「かくれ肥満」って
外見は太っておらず、BMIも許容範囲内にもかかわらず、体脂肪が多い状態を「かくれ肥満」といいます。体脂肪率は男女差があり、成人男性15~19%、成人女性25%前後と定義されています。食事を減らす極端なダイエットをした場合に多く見られます。食事を減らすと体脂肪は落ちますが、一緒に筋肉も減少し、結果、基礎代謝量が減少して肥満の要因となります。また、落ちた体重が逆戻りする時、脂肪だけが増えるため、結果、以前よりも体脂肪増加につながってしまいます。
基礎代謝とは
基礎代謝とは「命を保つために最低限必要なエネルギー」をいいます。体を動かさなくとも、私たちの体は「呼吸する・内臓が動いている・血液が体を循環している・体温を一定に保つ」など、生命を維持するために休みなくエネルギーが使われています。動かなくても消費されるエネルギーのことで、年齢や性別、個人差があります。
基礎代謝と筋肉
筋肉が一番多くエネルギーを使うといわれています。寝ている間にも筋肉があると基礎代謝量は増えます。そのため基礎代謝量を高めるには筋肉を増やすことが大切です。筋肉がつくことで体脂肪が燃えやすい体になります。筋肉は年齢とともに減少していくので、軽いおもりを反復して持ち上げるようなトレーニングをして筋肉をつけると、基礎代謝量が上がり、肥満予防に働きます。
肥満が引き起こす疾病
◎生活習慣病:心臓に脂肪が溜まれば心臓病の引き金になり、血管に沈着すれば動脈硬化を促進させ、高血圧や心筋梗塞の要因になります。肝臓に脂肪が溜まれば脂肪肝の要因となり、糖尿病にもかかりやすくなります。
◎睡眠無呼吸症候群:脂肪増加により喉も脂肪で狭くなります。睡眠時には筋肉がゆるみ、空気の通りが悪くなり、その結果、眠っている間に呼吸をしない時間が出てきます。この状態が「睡眠無呼吸症候群」です。
◎腰痛や関節痛:骨の太さはほとんど変わらないのに、増加した体重が骨や関節に負担をかけるため、腰痛や関節痛の原因となります。
肥満と「脂味」
人間には第6の味「脂味」を感じることができるという研究成果が発表がされました(2006年5月 第60回日本栄養・食糧学会大会)。オーストラリア・ディーキン大学、オーストラリア連邦科学産業研究機構、ニュージーランドのマッセー大学などによる共同研究で、「脂味」に敏感な人は脂っこい食物の摂取量が低い傾向にあり、体重過多になりにくく、BMI数値も低いと発表されました。脂味を感じる「閾値(いきち)」には個人差があり、今後、肥満対策のカギとなると期待されています。
飲み物を見直す
固形物によるカロリー摂取よりも、液体によるカロリー摂取の方が体重に与える影響は大きいといわれています(ジョンズ・ホプキンス大学 ベンジャミン教授)。食べ物を減らすよりも飲み物過多を見直すことが肥満予防につながります。
食事で気をつけること
肥満を予防する食生活で食べてはいけない食品はありません。問題は適正なエネルギー量を取り、栄養バランスに気をつけることが大切です。
① 脂肪過多が要因となるので揚げ物や油を多く使う料理は回数を減らす
② 野菜、きのこ、海藻などを多く取る
③ エネルギーの低い食品を多く取る
④ お酒は週2回・適量を心がけ、高エネルギーの肴を食べ過ぎない
食習慣で気をつけること
① 規則正しい食事をする(食事を抜かない)
② まとめて一度に大量に食べない
③ よく噛み、時間をかけて食べる
④ 間食を減らす
⑤ 寝る前に飲食しない
肥満を予防する栄養成分と食べ物
肥満を予防する食生活として「食べてはいけない」食品はありません。肥満の要因は「食べ過ぎ(エネルギーの取り過ぎ)と運動不足」なので、適正エネルギー量の範囲内で栄養バランスのよい食事を取り、適度に体を動かすことが一番です。健康的に肥満を予防するのに欠かせないのが良質なたんぱく質。たんぱく質と一緒に、食物繊維やビタミンB群(B1、B2、ナイアシンなど)をしっかり取りましょう。
たんぱく質
皮膚や筋肉、内臓、血液、毛髪など、体を構成する最も大切な成分で、体から水分を取り除いた残り重量の約1/2を占めています。たんぱく質不足は筋肉量の減少となり、基礎代謝の低下につながります。基礎代謝の低下により消費されなかったカロリーは、脂肪に変わり肥満の原因となっていきます。基礎代謝は年齢とともに低下していくため、中高年になると太ってくるのは自然の摂理です。予防するには良質なたんぱく質を取り、運動することで筋肉を作っていくことが大切です。
たんぱく質を多く含む食品:
肉類(アヒル、ウサギ、牛、馬、鴨、七面鳥、鶏、豚、羊、など)、魚類(アコウダイ、アジ、アナゴ、アユ、ウナギ、カジキ、カツオ、カレイ、キス、キンメダイ、鮭、サワラ、サンマ、タラ、ドジョウ、ニシン、ハモ、ヒラメ、フグ、ブリ、マグロ、ムツ、など)、卵類(アヒル、うずら、鶏)、貝類、軟体・甲殻類、豆類など
食物繊維
体内で消化できないためエネルギー源にはなりませんが、「第6の栄養素」と呼ばれ、腸の活動を刺激して便通を整える、有害物質を排泄する、コレステロールや糖質の吸収を遅らせるなどの働きを持っています。不足は咀嚼回数の低下につながり、満腹感が得にくくなり肥満の原因となります。日本人は平均的に不足気味ですが、サプリメントなどで過剰に摂取すると下痢やミネラル欠乏を引き起こします。水溶性と不溶性の食物繊維があり、特に不溶性の食物繊維は食べ過ぎ防止に有効です。
食物繊維を多く含む食品:
水溶性の食物繊維:海藻(ワカメ、昆布、ヒジキ、モズクなど)、こんにゃく、マメ科の植物、きのこ、果物など
不溶性の食物繊維:穀類、野菜、豆類、きのこ類、エビやカニの表皮など
ビタミンB1
糖質を効率よくエネルギーに変える働きを持つ水溶性のビタミンです。不足するとエネルギーの代謝が不十分になり、代謝されなかった糖質が脂肪に変わって肥満の原因となります。熱に弱く吸収率が低いので、吸収率を高めるアリシンを含んだ食品(たまねぎ・にんにく・にら・ねぎなど)と一緒に取ると効果的です。
ビタミンB1を多く含む食品:
豚肉、胚芽米、玄米、ウナギ、とうもろこし、ごま、海苔、ピーナッツなど
ビタミンB2
脂質の代謝を促進し、アミノ酸や糖質の燃焼に必要な水溶性のビタミンです。「脂肪のビタミン」「発育のビタミン」などと呼ばれ、脂質の燃焼に深くかかわり、成長にも欠かせません。不足すると脂質がエネルギー源として利用されにくくなり、中性脂肪が溜まり、発育不全を起こします。体内の過酸化脂質をできにくくする働きもあり、動脈硬化などの予防に働きます。
ビタミンB2を多く含む食品:
胚芽、酵母、レバー、牛乳、卵、納豆、干ししいたけ、緑黄色野菜、海苔など
ナイアシン
別名「ニコチン酸」とも呼ばれ、生体内に最も多く存在するビタミンです。糖質や脂質の代謝にかかわり、ブドウ糖が細胞のミトコンドリアに入ってエネルギーとなる時に、ビタミンB1と一緒に必要不可欠な成分です。脳神経の働きをよくする、血行を良くするなどの働きも持っています。
ナイアシンを多く含む食品:
レバー(牛・豚)、ブリ、カツオ、サバ、豆類、緑黄色野菜など