ヘルシーひき肉料理

鶏・豚・牛の栄養

鶏・豚・牛の栄養

一般に肉は、たんぱく質、脂質、ビタミン類やミネラル類を豊富に含んでいる栄養価の高い食品です。同じような栄養素を含んでいますが、それぞれ秀でて多く含有する栄養素を持っており、それがそれぞれの肉の特徴となっています。
栄養成分を比較しながらそれぞれの肉の特徴を把握し、料理に利用しましょう。

 鶏ひき肉豚ひき肉牛ひき肉
たんぱく質20.918.619.1
脂質8.315.115.1
1.21.12.3
ビタミンA40124
ビタミンE0.20.40.5
ビタミンB10.10.620.08
ビタミンB20.210.220.2
ビタミンB120.20.41.5
ナイアシン6.45.64.7
コレステロール757667
栄養素含有(可食部100gあたり)
 鶏ひき肉豚ひき肉牛ひき肉
イソロイシン300260230
ロイシン490460470
リジン530480500
メチオニン170150150
フェニルアラニン240220240
スレオニン260240250
トリプトファン716767
バリン310300300
ヒスチジン220200210
アミノ酸組成(可食部100gあたり)

鶏ひき肉

鶏ひき肉

味が淡白でやわらかく消化のよい鶏ひき肉は、お腹を温め消化吸収に優れ、病後の体力回復の滋養食として最適な肉です。
たんぱく質は良質で、必須アミノ酸含有は豚肉や牛肉よりも豊富です。脂質は豚や牛の約半分で、コレステロールを低下させる不飽和脂肪酸を多く含有しているので、生活習慣病を心配することなく取ることができます。
ビタミンAは豚肉の約3倍強、牛肉の約10倍と多く含まれ(五訂食品成分表による)、皮膚や粘膜を強化し、夜盲症などにも有効に働きます。ナイアシンも豊富で、ビタミンAの働きと一緒になり、皮膚を丈夫にします。

部位ごとの栄養素
ささみ両手羽に一つずつある深胸筋の部分の肉で、低脂肪で高たんぱくなため、ダイエットに有効。胃腸の弱っている時にも向く。
モモ肉ももの部分の肉で、赤みがあり脂質も適度に含まれている。ビタミンB2や鉄分を豊富に含み、動脈硬化などの生活習慣病や貧血予防に有効。
ムネ肉胸部部分の肉で、モモ肉よりも白っぽく脂肪が少ない。ビタミンAやナイアシンを豊富に含み、風邪の予防や皮膚炎・口内炎予防に有効。
手羽肉手羽元、手羽中、手羽先に分けられる。ビタミンAやビタミンB12を豊富に含み、皮膚や粘膜を丈夫にし、増血作用も高い。手羽先はコラーゲンが豊富な部位で、シミや肌のタルミを予防する。
部位に向く調理法
ささみ新鮮なら刺身でもよい
モモ肉ロースト、フライなど焼く、煮る、揚げるなどの調理に向く
ムネ肉ロースト、フライなど焼く、煮る、炒めるなどの調理に向く
手羽肉揚げる、煮る、スープなどの調理に向く

豚ひき肉

豚ひき肉

肉類の中で最もビタミンB1を豊富に含有しており、その量は鶏肉の約6倍、牛肉の約8倍(五訂食品成分表による)。
糖質をエネルギーに変える働きを持つビタミンB1は「疲労回復のビタミン」とも呼ばれ、疲れの元になる乳酸が体内に溜まるのを防ぎます。
また神経や筋肉の働きをよくする作用もあり、イライラや肩こり解消にも有効です。
ビタミンAやE、B2もバランスよく含まれているため、細胞の若さが保たれ、健康な体を作ります。

部位ごとの栄養素
肩肉肩ロースとうでをあわせた部分の肉で、よく動かす部分のため肉質は硬め。肩ロースは風味があり、脂質やビタミンB12を豊富に含み、体力強化や増血作用に有効。
ロース肉肩とももの間にある背側の部分の肉で、表面が脂肪で覆われている。きめが細かく軟らかい。ナイアシンを豊富に含み、皮膚炎や口内炎予防に有効。
バラ肉肩とももの間にある腹側の部分の肉で、赤身と脂身が交互に層をなしているため「三枚肉」とも呼ばれている。脂質やビタミンA、ビタミンEを豊富に含み、体力を強化しシットリした美肌作りに有効。細胞の若さを保つ働きも高い。
モモ肉脚上部の腰につながる部分の肉で、硬めだがコクがある。鉄分やビタミンB1を豊富に含み、貧血や疲労、肩こり予防に有効。
ヒレ肉ロースの内側にある部分の肉で、脂質は少なくたんぱく質が多い。部位の中でたんぱく質、鉄分、ビタミンB1、ビタミンB2を一番多く含んでいる。体力強化、貧血予防、疲労回復、生活習慣病予防等に有効。
部位に向く調理法
肩肉角切りにしてシチューやカレーなどの煮込みに向く
ロース肉ロースト、ソテー、トンカツなどに向く
バラ肉煮込みや炒め物に向く
モモ肉ロースト、ソテー、煮込みなど幅広い料理に向く
ヒレ肉ロースト、ソテー、トンカツなどの向く

牛ひき肉

牛ひき肉

たんぱく質や脂質が豊富で、肉類の中では特に鉄分やビタミンB12が多く、鉄分は鶏や豚の2倍強、ビタミンB12は鶏の7.5倍、豚の4倍弱を含んでいます(五訂食品成分表による)。
ビタミンE含有は鶏肉の2.5倍と多く、不飽和脂肪酸の酸化を防ぐため、動脈硬化や老化を予防する働きも期待できますが、取り過ぎは禁物です。
豊富な鉄分と増血作用のあるビタミンB12の働きで、貧血が予防され、冷え症改善にも有効に働きます。
常食することで気力が増し、胃腸が丈夫になります。

部位ごとの栄養素
肩肉うでの部分の肉。脂質が少なくビタミンB12を豊富に含み、悪性貧血予防に有効。
肩ロース肉背中に近い肩の肉の部分で、脂肪が入りやすい部位。脂質が多く、ビタミンAやEを含んでおり、エネルギー源として有効。
サーロイン胸椎の後方部分の肉で、脂肪が多く、きめ細かく軟らかい。良質なたんぱく質が豊富で、血液や体の元を作り健康維持に働く。
バラ肉腹側の部分の肉で、脂肪が多く肉質は硬い。部位の中で脂肪含有が一番高い。ビタミンEが豊富で老化防止に有効。
モモ肉ももの上部の一番太い部分の肉で、赤身で脂肪が少ない。ビタミンB1、B2を豊富に含み、疲労回復や動脈硬化予防などに有効。ナイアシンも豊富で皮膚炎予防にも働く。
外モモ肉ももの外側の部分の肉で、よく動かす部分なので肉質は硬い。脂質が少なく、ビタミンB1やナイアシンを豊富に含み、皮膚炎や口内炎予防に有効。
ランプ肉腰からももにかけての部分の肉で、脂肪が少ない。鉄分やビタミンE、ビタミンB2が多く、貧血や老化を予防する。
ヒレ肉サーロインの内側の部分の肉で、脂質が少なく、一番軟らかい部位。たんぱく質が多く、鉄分、ビタミンB1、B2、B12を一番多く含んでいる。栄養価が高く体力が増強される。
スネ肉すねの部分の肉で、スジが多くて硬い部位。コラーゲンが多く、皮膚に潤いを保つ働きがある。
部位に向く調理法
肩肉 
肩ロース肉すき焼き、バター焼き、ステーキなどに向く
サーロインステーキ、しゃぶしゃぶ、すき焼きなどに向く
バラ肉シチューやカレーなど長時間煮込む料理に向く
モモ肉炒め物や煮込みに向く
外モモ肉煮込み料理に向く
ランプ肉ステーキに向く
ヒレ肉ステーキ、フライ、しゃぶしゃぶ、すき焼きなどに向く
スネ肉煮込み料理に向く

ひき肉を上手に扱うコツ

硬い部分も、端切れ部分の肉も無駄なくおいしく調理することができ、さらに廉価で、調理方法ものばす・丸める・ほぐすなどとバラエティに富んでいるひき肉ですが、表面積が広いため傷みやすいという欠点があります。扱い方のコツを覚えておくと、栄養価を失うことなくおいしく調理することができます。

購入したらできるだけ早く使うこと

表面積が広いため、傷みやすいのがひき肉の欠点。水分が多い鶏肉、豚肉、牛肉の順に品質が劣化していきます。基本は買ってきたその日に使い切るのがベストですが、数日後に使う場合は冷凍保存にしましょう。

冷凍する時は薄くのばして、空気をよく抜く

ひき肉を冷凍する時

冷凍する時は、フリーザパックに入れ、薄くのばしながら、中の空気を抜くように押さえつけ、口を閉じて密閉させます。空気は肉のたんぱく質や脂肪を酸化させる働きがあるからです。また、空気が入っていると冷凍する時の温度の伝達が悪くなり、冷凍に時間がかかります。トレイに入って売られているものは、中に空気が入っているので、そのままの状態で冷凍しないように注意しましょう。フリーザパックに薄くのばし、上から箸などで小分けにしておくと、使いたい分だけ使えて便利。保存の目安は1ヵ月以内で。

冷凍する前に温度を下げる

冷凍する前に、冷蔵庫で温度を下げておくと、冷凍するまでの時間を短縮することができます。冷凍に要する時間が短いほど、品質を保つことができます。

冷水につけて冷蔵庫で解凍する

肉汁を逃がさないように、細菌の増殖を防ぐためにも、低温で解凍するのがベストです。冷凍した肉を冷水につけ、そのまま冷蔵庫に入れて解凍すると、細菌の増殖による肉の変質を抑えることができます。薄くのばして冷凍すると、解凍する時間が短くなります。

再冷凍はしないこと!

一度解凍した肉は、再冷凍しないこと。鮮度が失われるばかりでなく、品質も劣化するので注意しましょう

調味して冷凍すると便利

玉ねぎと炒め、塩・こしょうで下味をつけて冷凍しておくと、オムレツやミートソース、コロッケなど、色々な料理にすぐに応用できて便利です。冷凍する時は薄くのばして冷凍します。

酢少々を加えて、菌の増殖を防ぐ

ひき肉を使った料理を作る時に、酢を少々加えると菌の増殖を押さえる効果があります。目安はひき肉100gに対して酢小さじ1弱。とくに火の通りが心配なハンバーグなどにはおススメです。

ヘルシーひき肉レシピ

ひき肉は、貴重なたんぱく源だった肉を、無駄なく利用するために生活の知恵から生み出された料理法です。細かくすることで、硬い部位やうまみが多いが利用しにくいスジの部位、端切れとなった部分の肉などを十二分に利用することができます。調理法も丸めたり、延ばしたり、ほぐしたりと自由自在。さらに和・洋・中・エスニックとどんな料理にも利用でき、相性のよいのが特徴です。
肉は総じてたんぱく質や脂質が豊富な栄養食品ですが、肉の種類によって、含有する栄養素に特徴があります。その栄養素を無駄なくより有効に取り入れるよう、組み合わせる食材を選び栄養価の高いひき肉料理を作りましょう。

パセリたっぷりのドライカレー

パセリたっぷりのドライカレー
鉄分を多く含む牛肉とパセリで作るドライカレーは、増血作用に優れた貧血予防レシピです。パセリはβ‐カロテンやビタミンCを豊富に含み、にんじんのβ‐カロテンと一緒に美肌を作り風邪の予防に働きます。抗酸化力の高いにんにく・レーズン・カレー粉を加えることで、細胞の酸化が予防され老化防止や免疫力強化にも有効です。

牛ひき肉と金時豆のチリソース

牛ひき肉と金時豆のチリソース
栄養価の高い牛肉と食物繊維の多い金時豆は、牛肉の脂質取り過ぎを心配しない食べ合わせです。金時豆の良質な植物性たんぱく質は、牛肉と一緒に取ると骨・筋肉・血液が形成されて健康維持に有効です。チリソースが食欲を増進させ、にんにくやトマトの抗酸化力が免疫力強化に働きます。

牛ひき肉とじゃがいも・ヒジキのピカタ

牛ひき肉とじゃがいも・ヒジキのピカタ
たんぱく質や脂質などを豊富に含む栄養価の高い牛肉に、炭水化物が豊富なじゃがいもを一緒に取ると、胃腸が強化され体力強化に有効な食べ合わせになります。鉄分を豊富に含むヒジキをプラスして貧血予防効果を高めます。牛肉の水分代謝を調整する働きは、じゃがいものカリウムと一緒になり、むくみ緩和にも有効です。

豆腐と落花生入りの豚ひき肉ギョウザスープ

豆腐と落花生入りの豚ひき肉ギョウザスープ
ビタミンB群やビタミンEを豊富に含んでいる豚肉・豆腐・落花生は、脳の活性化を促して老化を予防する食べ合わせです。豆腐と落花生の不飽和脂肪酸が、血中の悪玉コレステロール除去に働きます。落花生の渋皮にはポリフェノールが含まれているので、新鮮なものを皮ごと利用するのがおススメです。

カレー味の豚ひき肉エッグ

カレー味の豚ひき肉エッグ
豚肉とキャベツを一緒に取ると、豚肉のビタミンB群とキャベツの遊離アミノ酸が脳の活性化に働き、病後の体力回復や老化に伴うめまいなどの予防に有効な食べ合わせになります。カレー粉が食欲増進に働き、美肌効果も期待できます。付け合せには生野菜を添えてビタミンCを補いましょう。

豚ひき肉と黒豆のシャキシャキレタス

豚ひき肉と黒豆のシャキシャキレタス
豚肉・にんにく・しょうが・ねぎは、硫化アリルを含むにんにくやねぎが豚肉のビタミンB1の吸収率を高めるため、疲労回復を期待できる食べ合わせです。にんにく・しょうが・ねぎの持つ抗凝血作用がコレステロール低下に働くため、豚肉の脂質過多を心配することなく取ることができます。レシチンが豊富な黒豆が脳の働きや集中力を高めるため、老化防止にも有効な一品です。

鶏ひき肉とオクラの信田巻き

鶏ひき肉とオクラの信田巻き
鶏ひき肉とオクラはともにアミノ酸組成に優れた良質なたんぱく質と、ビタミンAを豊富に含有しており、胃腸や体力強化に有効な食材です。白滝とオクラの食物繊維の働きで腸内の老廃物や有害物質が体外に排出され、便秘解消が期待できます。オクラの有効成分は煮汁に溶け出るので、薄味にして煮汁を残さないようにしましょう。

鶏ひき肉・にんじん・青菜のはんぺんはさみ煮

鶏ひき肉・にんじん・青菜のはんぺんはさみ煮
はんぺんの主原料は魚と山芋で、やわらかく消化のよいのが特徴です。同様に消化に優れ栄養価の高い鶏肉と、β‐カロテンの豊富なにんじんや青菜を一緒に取ると、体力や粘膜強化に有効な食べ合わせになります。胃腸の弱っている時の栄養源としておススメです。

たけのこ・ブロッコリー入りの鶏肉バーグ

たけのこ・ブロッコリー入りの鶏肉バーグ
消化に優れ良質な不飽和脂肪酸を含有する鶏肉と、食物繊維の多いたけのことブロッコリーを一緒に取ると、腸内の老廃物が排出されて腸内環境が整えられ、血中コレステロール値低下に有効な食べ合わせになります。ハチミツに含まれるイソマルトオリゴ糖は腸内でビフィズス菌などの善玉菌を増やす働きがあるので、プラスすることで整腸作用はさらに高まります。