ヒカド(ススヘイト)

肉や山海の幸で作るヒカドは長崎県の郷土料理です。ポルトガル語の「Picado(ピカド)=細かく刻む・調理する」が語源の由来といわれ、江戸中期の料理本に南蛮料理として紹介されています。特有のトロミには初めパンが使われていましたが、キリスト教禁止令で入手できなくなり、その後さつまいものすりおろしでトロミがつけられるようになったと伝えられています。

サバのいり焼き

「サバのいり焼き」は島根県の中でも漁業が盛んな浜田市の郷土料理です。いり焼きと呼ばれていますが、調味料でサバを煮込む煮物です。「サバの生き腐れ」と呼ばれるほど傷みが早いサバですが、水を使わないで作るため保存性にも優れています。しっかりした味つけの食が進む料理です。

ののこ飯

ののこ飯は鳥取県米子市の郷土料理です。油揚げに米と具を混ぜて詰めたものを調味しただし汁で炊く料理で、その昔、農家や漁師のお弁当として食べられていました。炊き上がった油揚げが、綿入れの「布子(ぬのこ)」に似ていることから、「ぬのこ」がなまって「ののこ」になったのが、名の由来といわれています。三角に切った油揚げで炊き上げたものは、出来上がりの姿が大山(だいせん)の姿に似ていることから、「いただき」とも呼ばれています。

トロロ飯

麦飯に山の芋のすりおろしをかけたトロロ飯は、広重の「東海道五十三次」や、芭蕉の句などにも登場する東海道丸子宿の郷土料理です。粘りの強い山の芋をのばすだし汁は、熱すぎると山の芋の消化酵素の働きが弱まり、低すぎる酵素が働かず粘りが出にくいので、温度に気をつけることが大切です。40~50℃がベスト。消化酵素は細胞をできるだけ細かくすると働きがよくなるので、トロロはしっかりすりおろします。

五平餅

五平餅は長野県南部の木曾や下伊那地方に伝わる名物の郷土料理で、今では妻篭宿などで一年中売られていますが、新米やくるみの採れる頃がもっとも美味しいといわれています。五平というきこりが弁当に持参した味噌をつけた平らな握り飯を、焼いて食べていたことから五平餅と呼ばれるようになったと伝えられています。太くて長い竹の串に刺すものと、薄い板や割り箸に貼り付ける五平餅があり、たれも味噌、しょう油、両方を混ぜるなどの秘伝があります。

なすとそうめんの煮物(なすそうめん)

なすとそうめんで作る煮物は真夏の石川県金沢を代表的する家庭料理です。夏が旬のなすを使ったこの煮物は、食欲の落ちやすい夏に、温かくしても冷やしても美味しく食べられる料理です。味つけも味噌にしたり、そうめんも下茹でせずにそのまま使ったりと、家庭により様々な調理法で作られています。そうめんが汁を吸うので煮汁を多めに使うのが秘訣です。同様な料理は全国各地にあり、三重県ではお盆の行事食として食されています。

おすわい

大根やにんじんの細切りを甘酢で馴染ませて作る「おすわい」は富山県の郷土料理です。「お酢和え」が語源といわれ、慶事や精進料理には必ずといってよいほど登場します。大根とにんじんをベースに、魚介・旬の野菜・旬の果物などのさまざまな食材が、家庭によってバリエーション豊かに使われるため、お袋の味と呼ばれています。日持ちの良いことからお正月には欠かせない保存食です。

クジラの揚げ煮

かつてクジラ漁が盛んだった九州では今でもよくクジラを食べます。唐津地方は古くは玄海捕鯨の基地として栄えた所で、クジラ料理が名物です。じゃがいもと一緒に煮る揚げ煮は唐津地方の代表的なお惣菜で、クジラの赤身肉は刺身や竜田揚げなどで食べられます。

イギス豆腐(海髪豆腐)

ひんやりした食感のイギス豆腐は今治地方の夏の郷土料理です。イギスは海岸の入り江の岩や小石についている暗い紫色をした海藻で、このイギスと生大豆粉を煮溶かして冷やし固めたイギス豆腐は、祭りや法事など様々な行事の際に作られます。豊富なミネラルや食物繊維を含むことから長寿の食べ物と呼ばれ、愛媛県以外にも小豆島や淡路島などの瀬戸内海の島々や海辺に住む人々の大切な栄養源として、古く江戸時代から作られていたと文献に残っています。

そば米雑炊

そば米はそばの種実を軽く茹でて自然乾燥させ、その後に殻を取り除いたそばの粒のことです。米の代用として使われていたため、「そばごめ」「むきそば」とも呼ばれています。このそば米を使って作られる雑炊はそばの名産地・徳島県租谷(いや)の郷土料理で、この地方に隠れ住んだ平家の落ち武者一族から伝わったといわれています。すまし汁仕立てのため「そば米清まし」との呼び名もあり、今でも行事の時には必ず作られる料理です。