肉や山海の幸で作るヒカドは長崎県の郷土料理です。ポルトガル語の「Picado(ピカド)=細かく刻む・調理する」が語源の由来といわれ、江戸中期の料理本に南蛮料理として紹介されています。特有のトロミには初めパンが使われていましたが、キリスト教禁止令で入手できなくなり、その後さつまいものすりおろしでトロミがつけられるようになったと伝えられています。
なすとそうめんで作る煮物は真夏の石川県金沢を代表的する家庭料理です。夏が旬のなすを使ったこの煮物は、食欲の落ちやすい夏に、温かくしても冷やしても美味しく食べられる料理です。味つけも味噌にしたり、そうめんも下茹でせずにそのまま使ったりと、家庭により様々な調理法で作られています。そうめんが汁を吸うので煮汁を多めに使うのが秘訣です。同様な料理は全国各地にあり、三重県ではお盆の行事食として食されています。
ひんやりした食感のイギス豆腐は今治地方の夏の郷土料理です。イギスは海岸の入り江の岩や小石についている暗い紫色をした海藻で、このイギスと生大豆粉を煮溶かして冷やし固めたイギス豆腐は、祭りや法事など様々な行事の際に作られます。豊富なミネラルや食物繊維を含むことから長寿の食べ物と呼ばれ、愛媛県以外にも小豆島や淡路島などの瀬戸内海の島々や海辺に住む人々の大切な栄養源として、古く江戸時代から作られていたと文献に残っています。