べっこう寿司は、東京都八丈島を代表する郷土料理です。酢飯は甘めで、わさびの代わりに練り辛子を使うのが大きな特徴です。ネタの刺身をヅケにするため、そのしょう油の色から「べっこう寿司」と呼ばれるようになったといわれています。八丈島出身の移住者が伊豆諸島や小笠原諸島などにも広めたといわれ、辛味も辛子ではなく島唐辛子を付けて食べるなど、各島々で寿司の形態が独自に発達して郷土料理になっているため、別名「島寿司」とも呼ばれています。一般にシマアジ、トビウオ、キンメ、カツオなど周辺海域で取れる魚で作られます。
糂汰煮(じんだに)とも呼ばれる糠味噌炊きは、北九州小倉に伝わる郷土料理です。糂汰とは「糠床」のことで、糠味噌が大好物であった小倉藩主小笠原忠真公に、城下の民が献上した料理といわれています。玄界灘で豊富に水揚げされる旬のイワシやサバなどを、よく手入れした糠味噌を調味料にして作る煮物で、栄養価も高く、日常食として食べ続けられてきました。糠味噌炊きは発酵を生かした保存食であり、温めなおすほどに味が深まり、夏場でも冷蔵庫で1週間は持つといわれています。
岡山県勝北地域に昔から伝わる山菜おこわで、雑穀を入れるのが特徴です。「横仙」と呼ばれる勝北・奈義に広がる那岐山、広戸仙、山形仙に伝わる料理であることから、この名で呼ばれているといわれています。奈義の横仙地方は江戸時代、農村の娯楽として農村歌舞伎や地下芝居(じかしばい)が盛んに行われた地域です。