夏バテ[1]
夏バテに効果のある食材、栄養素
夏バテの大きな要因は疲れです。疲れの原因となる疲労物質「乳酸」は、糖質の過剰摂取や激しい運動などにより発生するので、まずは糖質の代謝をスムーズにすることが大切です。
糖質代謝に欠かせない栄養素はビタミンB1。そしてその働きを助けるビタミンB2や、ビタミンB1の吸収を高める作用を持つマグネシウムや硫化アリル、さらにビタミンCやクエン酸。そしてたんぱく質や脂質の代謝に欠かせないビタミンB6。これらの栄養素を組み合わせて取ることで、疲れを残さない元気な体を維持することができます。
暑さで食欲が減退する夏ですが、必要な栄養素を知り、上手に食べ合わせて体内に取り入れ、夏を元気に乗り切りましょう。
ビタミンB1
糖質を分解してエネルギーに変える働きがあり、疲労感や倦怠感を取り除くので、「疲労回復のビタミン」とも呼ばれている。神経や筋肉の働きをよくする。不足すると疲労感や倦怠感、食欲不振、むくみなどの症状が現れる。水溶性のビタミンなので、サプリメントなどで多量に取っても排出されてしまうので注意。
ビタミンB1を多く含む食品:
豚肉、落花生、ごま、ウナギ、レバー、ロースハム、豆腐、玄米、胚芽米、豆類、牛乳、魚類など
ビタミンB2
脂肪を燃やして体内の過酸化脂質をできにくくする働きがあり、「発育のビタミン」とも呼ばれている。不足すると成長に必要なたんぱく質やエネルギーを十分に利用できなくなる。
ビタミンB2を多く含む食品:
納豆、卵、牛乳、ウナギ、ドジョウ、サバ、アーモンド、干ししいたけ、緑黄色野菜など
ビタミンB6
たんぱく質や脂質の代謝に欠かせない。とくにたんぱく質を多く取る食生活には必要。
ビタミンB6を多く含む食品:
小麦胚芽、魚介類(サンマ、サバ、鮭など)、マグロ(とくに赤身)、レバー、卵、豆、牛乳など
ビタミンC
ストレスを和らげる働きがあり、たんぱく質合成に働く。
ビタミンCを多く含む食品:
果物(いちご、グレープフルーツなど)、果物、緑黄色野菜、豆、緑茶など
クエン酸
かんきつ類に多く含まれる有機酸の一種で、新陳代謝を活発にし、疲労物質の乳酸を減少させる働きがある。体内のエネルギーを効率よく燃焼させ、疲労回復を早める。肉の取り過ぎにより疲労の元になるピルビン酸が増えた時に、ピルビン酸をクエン酸に変えてエネルギー源とする働きがある。
クエン酸を多く含む食品:
レモン、キウイフルーツ、パイナップル、グレープフルーツ、梅干、黒酢など
マグネシウム
体内でビタミンB群と一緒にエネルギー代謝にかかわる働きがある。筋肉と神経の正常な働きを保つ。微量だが、疲労回復に欠かせない栄養素。
マグネシウムを多く含む食品:
大豆、豆腐、納豆、小麦胚芽、ひじき、魚類(ホタテ、カツオ、アジなど)、ほうれん草、バナナなど
硫化アリル
玉ねぎやにんにくなどに含まれる特有の香り成分で、アリル化合物とかアリシンとも呼ばれている。ビタミンB1の吸収を高める働きがあり、糖質の代謝を促進するので、疲労回復や神経の高ぶりを抑える。殺菌・抗菌作用があり、水溶性で加熱に弱いが、加熱するとメルカプタンという甘み成分に変わる性質がある。
硫化アリルを多く含む食品:
玉ねぎ、ねぎ類(あさつき、葉ねぎなど)、にんにく、にら、らっきょうなど
夏バテを予防する食養生
夏バテを予防するには、疲労回復に有効な栄養素を取ることは欠かせませんが、同時に体の基礎を作る栄養素が十分に取られていないと、効果は半減、夏バテを予防することができません。さらに、栄養素の摂取と同時に、汗を多量にかくために水分補給も大切なポイントになってきます。夏バテを予防し、夏を元気に乗り切るための「食養生」をご紹介しましょう。
三大栄養素(たんぱく質、糖質、脂質)をきちんと取る
三大栄養素は生命を維持する上でエネルギー源となる大切な栄養素。これらがバランスよく取れていないと、体は働かず、いくら疲労回復に有効な栄養素を取っても有効に働きません。肉・魚・豆類で良質なたんぱく質を、米・麺類などで糖質を、種実・豆類・魚類などで良質な脂質を取りましょう。
糖質はとくに夏バテ予防効果の高い胚芽米や全粒粉で作ったパンがおススメです。雑穀の胚芽部分には「疲労回復のビタミン」と呼ばれるビタミンB1などのB群が豊富に含まれているので、胚芽部分を残した胚芽米や全粒粉入りのパンは、疲れた体を回復するのに有効です。夏の疲労回復やエネルギー源として、精製されていない穀類を努めて摂取するように心がけましょう。
一日3回(朝・昼・晩)、規則正しく食事を取る
食欲がなくても、規則正しい食事を取ることが大切です。食べなければエネルギー不足を引き起こし、結果夏バテになるという悪循環に陥ります。少量でも良質な栄養素を取り、疲れを溜めない食生活を習慣付けることが大切です。
消化酵素の高い食品を取る
暑さから消化酵素の働きが弱ってくると、食べたものが十分に消化されず、栄養素を体内に取り入れることができません。食欲不振の時には、消化酵素を多く含んだ食品を食べ合わせるようにしましょう。やまのいも、大根おろしなどがおススメです。
意識して水分を補給する・飲む時は冷やしすぎないこと
暑い夏は汗を出すことで体温の調整を行なっています。汗として水分が体外に出てしまうと、血液は粘り脳梗塞や心筋梗塞の要因ともなりやすいので要注意。汗にはミネラル類が多く含まれおり、ミネラル不足は神経や筋肉の機能を低下させ疲れをため込みます。水分補給時には、ミネラル類が含有されているものを取ることが大切です。
おススメは麦茶。大麦には体を冷やす働きがあるので、麦茶は夏に適した飲料です。また、水分を多く含んでいる野菜や果物もおススメです。スポーツドリンクはミネラルを含有しており吸収はよいのですが、糖分が多いため、逆に喉が渇いてしまうという欠点があり、多飲はおススメできません。また、ビールは利尿作用が高いので、水分補給には適しません。
いずれも、冷やしすぎないで飲むようにしましょう。冷やしすぎた飲料は、胃腸の消化機能を低下させ、食欲不振を引き起こします。
食以外の夏の養生
夏バテを予防するためには、食養生と同時に、体に疲れを溜めない生活を営むことが大切です。次に挙げる暮らしの養生は、免疫力を低下させないためにも大切です。
温度差は5℃を目安に
私たちが対応できる温度差は約5℃といわれています。室外が32℃であれば、室内の温度は27℃がベスト。ちょっと暑いと感じる温度ですが、27~28℃の温度が体にもっとも負荷をかけない温度と考えられています。冷房の効いた室内と、暑い室外の出入りを頻繁に繰り返すと、体の調整機能が狂い、血管にも負荷を与えるので注意しましょう。
睡眠を十分取る
睡眠不足は自律神経の乱れを引き起こします。暑さで寝苦しい夜ですが、熟睡できる環境を整えましょう。タイマーを設定してクーラーを利用したり、扇風機を上手に利用して、約7~8時間は休むようにしましょう。
適度な運動で汗をかく
運動して汗をかくことで、筋肉中の乳酸などが体外に排出されるため、逆に疲れが癒されます。汗の役割は「皮膚の表面で蒸発し、体の熱を奪うことで体温を一定に保つ」こと。汗をかくことで自律神経が正常に保たれ、血流がよくなって胃腸の働きも高まります。毎日続けられる適度な運動(体操やストレッチなど)をすることで、汗腺を鍛えましょう。
夏バテ予防レシピ(1)
日本の夏は高温多湿で、さらに近年のヒートアイランド現象や地球温暖化により、外気は高温です。その外気に対応し熱を体内に溜め込まないようにするために、大量の汗をかき体調を整えています。しかし、大量の汗と一緒に体内に蓄積されていたビタミン類やミネラル類が一緒に流出されてしまうため、それらを補っていく食生活が大切です。ビタミン類やミネラル類が失われると、神経や筋肉の機能が低下し、疲れやすくなるのです。
食欲不振や睡眠不足などで必要な栄養素が取れないと、体はますます疲労し悪循環を引き起こします。こんな時こそ、疲労回復に有効なビタミンB1・B2などの栄養素を中心としたバランスのよい食事を取ることで、体内に疲れをためない食生活を心がけましょう。食の落ちた時に食べやすい麺料理と、暑い夏に力の出るスタミナ料理を紹介します。麺は好みでうどん、そば、ソーメン、冷麦などに変えてもOK。まずはしっかり食べることが大切です。