チーズ
チーズとは
チーズとは
チーズは牛・山羊・羊などの乳にレンネットなどの凝乳酵素や乳酸菌スターターを加えてカゼイン(牛乳のたんぱく質の1つで全体の約80%を占める)を脂肪とともに凝固させ、上澄みの水分(乳清・ホエー)を取り除いた後に得られる白い塊(カード)を、そのままあるいは成型して熟成させたものです。この製法で作られたチーズは「ナチュラルチーズ」と呼ばれ、このナチュラルチーズを加工して作ったチーズはプロセスチーズと呼ばれています。
チーズの歴史
チーズは5000年以上前に中近東で生まれ、ギリシャを経てローマに伝わり、そこで製法がほぼ完成されたと言われています。誕生の記録や伝説・民話は世界各地に数多く残っており、もっとも有名なのが「砂漠を旅する商人が羊の胃袋で作った水筒に山羊の乳を入れて旅していた所、いつの間にか山羊の乳が澄んだ水と白い塊に分かれていた」というアラビアの民話です。
長い歴史を持つヨーロッパでは、チーズは日本の漬物のような存在と考えられ、その種類は約1000種類もあると言われています。特にチーズ大国として知られるフランスでは300〜400種類のチーズが製造され、伝統的な味を保護するために、1973年、「原産地統制名称法(AOC)」が制定されています。AOCに指定されたチーズは家畜の育成方法から製法まで細かく規定され、それゆえ高い品質評価を得ています。
日本のチーズの歴史
日本では6世紀半ばに仏教とともに乳を利用する文化が中国から伝来します。それまで役牛として飼っていた牛から乳を取り、その乳で「酥(そ)(今のチーズ)」「酪(らく)(今のヨーグルト)」「醍醐(だいご)(今のバターオイル)」などが作られていたと言われています。701年には全国に「乳戸(にゅうこ)(牛乳をしぼる家)」が定められ、732年には年貢として「酥(そ)」を納めさせていたと文献に残っています。「酥」を納める制度は長く続きますが、武士が権力の中心になるにつれ牛の牧草地は軍馬用となり、やがて消滅していきます。
その日本でチーズの消費量が増えるのは昭和30年代後半です。学校給食を機にパン食に代表される食の洋風化が進み、チーズは急速に日本の食生活に浸透していきます。昭和50年ごろに始まったピザブーム、それに続くチーズケーキブームと、チーズは急激に食生活に浸透していきました。
8代将軍吉宗と11代将軍家斉が作った「白牛酪」
武士の世になり、久しくチーズ作りは姿を隠していましたが、平安な時代が続いた江戸時代の享保13年(1728年)、8代将軍吉宗はインドから白牛3頭を入手して千葉県嶺岡牧(現在の南房総市)で飼育し、その牛乳から白牛酪というバターに近いチーズを作ったと伝えられています。これが日本の酪農の始まりとされ、嶺岡牧は「日本酪農発祥の地」と指定されています。
60年の時を経て11代将軍家斉の時代になると、わずか3頭だった牛は70頭にもなり、家斉はその一部を江戸に移して白牛酪の製造を始め、医師に『白牛酪考』という本を書かせ、その薬効を広く庶民に知らしめたと言われています。白牛酪は「腎虚、労咳、産後の衰弱、大便の閉塞、老衰からくる各種症状」に効くと書かれ、大名の間では肺結核に効く妙薬と重宝されていました。
北海道に作られたでチーズ専門工場
日本で初めて近代ヨーロッパ型のチーズが作られたのは明治8年。北海道の開拓庁の試験場で初めてチーズが試作されました。明治33年には函館のトラピスト修道院でもチーズ作りが始まりますが、生産量はごくわずかで、ほとんどが輸入品でした。昭和7年、北海道製酪販売組合連合会がチーズ専門工場を作り、これによりチーズが本格的に作られるようになります。
貴重品だったチーズの消費量が増えるのは昭和30年代後半です。学校給食を機にパン食に代表される食の洋風化が進み、チーズは急速に日本の食生活に浸透していきます。昭和50年ごろに始まったピザブーム、それに続くチーズケーキブームと、チーズは急激に食生活に浸透していきました。
7つのタイプに分けられるナチュラルチーズ
ナチュラルチーズは牛、山羊、羊、水牛などの乳を原料とし、乳酸菌または凝乳酵素で固めて発酵・熟成させたもので、微生物が生きているチーズです。熟成による深みがあり、7つのタイプに分類されます。
①フレッシュタイプ:原料乳を乳酸発酵だけで凝固させ、熟成させないチーズ。日持はしないが口当たりは滑らかで、脂肪分の量によって淡泊なものから濃厚なものまである。<種類>カッテージチーズ、マスカルポーネ、モッツァレッラ・ディ・ブファラなど。
②白かびタイプ:ブリ—・ド・モーやカマンベールに代表されるフランスのチーズの花形。表面に白かびを繁殖させ、外側から熟成させるため、熟成に伴って表皮から中心に向かってやわらかくなり、こくと香りが増していく。<種類>ブリ—・ド・モー、カマンベール・ド・ノルマンディ、ヌシャテルなど。
③ウォッシュタイプ:熟成の途中で、表面を塩水やビール、ワインなどで表面を何度も洗って作るチーズ。独特な香りを持ち、中身はやわらかい。<種類>エポワス・ド・ブルゴーニュ、タレッジョ、リヴァロなど。
④青かびタイプ:発酵の過程で自然に青かびが生じたり、あるいは人工的に青かび胞子を植え付けて発酵の過程を早めたタイプ。塩分が多く、乳源は牛と羊。<種類>ロックフォール、ゴルゴンゾーラ、スティルトンなど。
⑤シェーヴルタイプ:山羊の乳を原料とするチーズ。乾燥熟成の方法で作られ、個性的な香りがある。表面に木炭粉をまぶすものもある。<種類>シャビシュー・デュ・ポワトゥー、ペラルドン、プリニー・サン・ピエールなど。
⑥セミハードタイプ:ナチュラルチーズの中で種類が最も多いタイプで、風味も形も変化に富んでいる。熟成期間は3〜6か月。<種類>ゴーダ、サムソー、ルブロションなど。
⑦ハードタイプ:熟成期間が1年以上で、ものによっては3〜4年も熟成させるミルクのうま味が凝縮したチーズ。水分含有が低いため、組織がかたくもろいので、おろして粉末で使われることが多い。<種類>パルミジャーノ・レッジャーノ、グリュイエール、ミモレット、エメンタールなど。
品質の安定に優れているプロセスチーズ
プロセスチーズは数種類のナチュラルチーズを混ぜ合わせ、加熱溶解した後、乳化させて固めたものです。加熱処理がされているため乳酸菌は生きていませんが、風味が変化したりかびが発生することも少なく、品質や栄養が安定し保存性に優れているチーズです。ヨーロッパよりも日本やアメリカで多く生産され、ナッツや香草を混ぜたものも製造されています。スライスチーズ、スティックチーズなどがあります。
チーズに含まれる主な成分
牛や山羊の乳と乳酸菌、酵素で作られるチーズは、乳の栄養成分がギュっと凝縮された濃厚な栄養食品です。中医学では古くよりチーズの持つ滋養作用、皮膚や粘膜を潤す作用、内臓を調整する作用などが重要視され、慢性気管支炎や便秘、皮膚の乾燥などの予防に応用されてきました。チーズに含まれる優れた成分を紹介しましょう。
チーズに含まれる栄養成分
チーズには乳の持つ優れた栄養素が豊富に含まれています。エネルギー源となるたんぱく質と脂質、体の生理機能を高めるビタミン類やミネラル類がバランスよく含まれ、さらに、チーズのたんぱく質は乳酸菌によって分解されてペプチドやアミノ酸になっているため牛乳よりも消化吸収に優れるという利点を持っています。またカルシウムもたんぱく質や乳酸と結びついて吸収されやすい形になっているのが特徴です。栄養バランスに優れたチーズですが、特に豊富に含まれる主な栄養素はカルシウム、ビタミンA、ビタミンB群、脂質、たんぱく質です。
吸収されやすいカルシウム
チーズに豊富に含まれるカルシウムは、たんぱく質や乳酸と結びついて吸収されやすくなっています。カルシウムは骨や歯を形成する栄養素ですが、神経の伝達機能や神経の興奮を抑える、ホルモン分泌を円滑にする、筋肉の興奮を調整する、出血時に血をかためるなど、多機能に働く大切なミネラルです。成長期の子どもはもちろんのこと、閉経以降の女性に多い骨粗鬆症の防止にも有効に働き、また、カルシウムが十分に摂取できていると、血管の老化や予防動脈硬化の予防が期待できます。カルシウムは日本人には不足気味と言われている成分です。カルシウム吸収が優れているチーズを積極的に摂取することでカルシウム不足を解消しましょう。チーズに含まれるカルシウム量は種類によって異なり、水分の少ない硬質チーズには多く含まれています。
「皮膚や粘膜を健康に保つ」ビタミンA
ビタミンAは眼に栄養を与え、皮膚や粘膜を健康に保つ働きを持つ重要な栄養素です。欠乏すると暗い所での視力低下を起こしたり、ひどい場合は夜盲症になることもあります。粘膜を健康に保つ働きがあるため不足すると、粘膜が乾燥して固くなり、消化吸収能力低下や風邪をひきやすくなるなどの症状を引き起こします。また不足すると皮膚が乾燥してパサつくため、美肌作りの大敵になります。チーズのビタミンAは別名レチノールと呼ばれ、カロテンと違ってそのまま体内に吸収されるため、体の抵抗力や免疫力の強化に優れた効果を発揮します。
「美容のビタミン」ビタミンB2
チーズに豊富に含まれているビタミンB2はアミノ酸、脂肪、糖質などの燃焼に必要なビタミンです。別名「美容のビタミン」とも呼ばれ、皮膚・爪・髪の発育に深くかかわり、体全体の抵抗力を高める働きも持っています。体内での過酸化脂質をできにくくして動脈硬化などの予防にも働き、成長に必要なエネルギー代謝にかかわっているため、特に成長期の子どもや妊婦には欠かせないビタミンです。
必須アミノ酸のメチオニンが二日酔い予防に働く
チーズに含まれるたんぱく質はアミノ酸組成に優れ、筋肉や内臓、血液など体のもとを作る重要な栄養成分です。たんぱく質は乳酸菌や酵素の働きによりペプチドやアミノ酸に分解され、牛乳よりも消化吸収されやすくなっています。豊富に含まれる必須アミノ酸のメチオニンが肝臓の働きを高めてアルコールの分解を促すため、チーズを食べると二日酔いの予防に有効です。
乳糖が取り除かれているチーズで、お腹の状態は快適
チーズは牛乳の液体部分である清乳(ホエー)を取り除く段階で、牛乳に入っている乳糖が取り除かれます。そのため、牛乳を飲むと下痢をするという「乳糖不耐症」の人にとっては、牛乳の代わりにチーズを取ることをおススメします。牛乳の代わりに高い栄養価を取ることができます。
乳酸菌の働き
加熱殺菌されないで製造されるナチュラルチーズには、酵素や乳酸菌が生きたままで含まれています。乳酸菌は、腸内でビフィズス菌などの善玉菌を増やし、乳酸や酢酸を作って悪玉菌減少に働き、整腸作用を発揮します。
ビフィズス菌はビフィズス菌属に属する菌で、人間の腸内に棲み有用な働きをするため善玉菌と呼ばれています。ビフィズス菌には腸内で作られた有害な物質を乳酸菌の体の中に取り込んだり、分解したりする機能があるため、善玉菌を増やす乳酸菌を取ると、腸内へのウイルスや細菌の侵入が予防される、便秘が改善される、老化や生活習慣病が予防されるなどの働きが生まれてきます。
人間は本来、腸内に乳酸菌をたくさん持っています。生まれて数日の赤ちゃんの腸内細菌の100%近くが善玉菌であるビフィズス菌をはじめとする乳酸菌です。ところが大人になるにつれて乳酸菌は減少し、成人になるとおよそ10〜20%前後の善玉菌で腸内は安定します。しかし、年齢が高くなるにつれて安定していた善玉菌は減少をはじめ、やがて腸内の善玉菌は1%台まで減り、代わりにウェルシュ菌などの悪玉菌が増えていきます。この現象をロシアの学者メチニコフは「腸内腐敗」呼び、年齢とともに減少していく乳酸菌を増やして腸を若々しく保つことが不老長寿の夢に近づくという理論を発表しました。
チーズレシピ
チーズは牛乳の栄養素をギュッと濃縮した食品です。チーズの種類によっても異なりますが、牛乳200CCから20gのチーズが作られると言われています。発酵食品のため、乳酸菌の働きによってたんぱく質やカルシウムが吸収されやすい形になっており、乳幼児やお年寄り、病中病後でも無理なく消化吸収できる食品です。主要な栄養成分を濃縮して持っているチーズですが、ビタミンCと食物繊維が含まれていません。チーズを料理する時には、この足りない栄養成分を上手に組み合わせ、栄養満点のチーズ料理を作りましょう。チーズは製造方法によって、発酵・熟成させた微生物が生きているナチュラルチーズと、数種類のナチュラルチーズを加熱したプロセスチーズに分類されています。どのチーズでも栄養価はほぼ同じです。入手しやすいチーズで、さまざまなチーズレシピを作ってください。