高血圧

高血圧とは

血圧とは

血圧とは「心臓から送り出された血液が動脈の壁を押す圧力」のことをいいます。血圧には上と下の血圧があり、心臓が収縮した時の血圧「収縮期血圧」は上の血圧・最高血圧と呼ばれ、心臓が拡張した時の血圧「拡張期血圧」は下の血圧・最低血圧と呼ばれています。

高血圧の数値

WHO(世界保健機関)の規定する正常血圧は「最高血圧140mmHg以下で、最低血圧90mmHg以下 」。つまり、最高血圧が140mmHg以上、あるいは最低血圧90mmHg以上は高血圧と診断されています。

「サイレントキラー」と呼ばれる理由

高血圧の恐ろしい点は、大きい圧力が常に血管にかかることで血管をジワリジワリ傷めていることと、自覚症状がないことです。そのため、気付いた時には脳・心臓・腎臓などの血管が損傷を受けていることが多く、その結果、死に至ったり重い後遺症を引き起こすことが多々あります。そのため、高血圧は「サイレントキラー」(静かなる殺し屋)とも呼ばれています。

40歳を過ぎたら気をつけよう

高血圧の大半は、原因のはっきりしない「本態性高血圧」で、これは中年から少しずつ血圧が上がっていくタイプです。塩分の取り過ぎ・肥満・ストレス・喫煙・飲酒などが複雑に絡みあい、血圧が上昇して高血圧になっていくと推測されています。また、急激な温度変化も要因のひとつであり、特に寒い冬は血圧が上がりやすいので注意が必要です。
本態性高血圧を予防するには、これら原因と考えられる諸々の要因を取り除くと同時に、40歳を過ぎたら高血圧に注意する習慣をつけることが大切です。

高血圧を予防する栄養素と食品

たんぱく質

体内では作ることのできない必須アミノ酸を、バランスよく含んでいるたんぱく質を積極的に取りましょう。必須アミノ酸のメチオニンはナトリウムを体外に出す働きを持っているため、血圧安定に働きます。また、良質なたんぱく質は血管を強化する働きも持っています。肥満は高血圧の要因ともなるものですが、歳を取ってくるとただ低カロリー食にするだけでは痩せにくくなります。そんな時には脂肪をエネルギーに換えるたんぱく質を取ることで、肥満を予防することができます。

たんぱく質を多く含む食品:
肉類、魚類、豆類、卵類、乳類、乳製品など

カリウム

カリウムは、食塩の主成分であるナトリウムの作用を抑制し、血圧上昇を予防する働きを持っています。塩分摂取を控えると同時に、カリウムの多い食品を積極的に取りましょう。

カリウムを多く含む食品:
野菜(さつまいも・じゃがいも・ほうれん草など)、果物(りんご・バナナ・アボカド・いちご・オレンジなど)、豆類、きのこなど

カルシウム

カルシウムが不足すると血圧は上昇気味になります。日本人には不足気味の栄養素です。

カルシウムを多く含む食品:
乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズなど)、小魚、緑黄色野菜など

マグネシウム

マグネシウムは骨に多く含まれており、血圧を下げる働きを持っています。

マグネシウムを取るを多く含む食品:
大豆、小豆、アーモンド、カシューナッツ、木綿豆腐、味噌、玄米、海藻(ワカメ・昆布)など

食物繊維

特に水溶性の食物繊維は、ナトリウムが腸から吸収されるのを予防します。同時にカリウムを放出する働きがあるので、血圧上昇予防に有効に働きます。

食物繊維を多く含む食品:
海藻類(海苔・ワカメ・昆布など)、果物(みかん・りんご・オレンジ)、こんにゃくなど

高血圧を予防する生活

塩分、アルコール、脂肪を控える食生活を心がける

高血圧の場合、1日の塩分摂取量は7g以下(米国合同委員会では6g)を目安にしましょう。無理なく減塩するためには、レモンやゆずなどの果汁や酢を上手に利用するとよいでしょう。特に酢に含まれるペプチドの一種であるアルギニンには血圧を下げる働きがあります。
脂肪は飽和脂肪酸を含有する肉よりも、不飽和脂肪酸を含有する魚を多く取るようにしましょう。不飽和脂肪酸はコレステロールを減らす働きを持っています。

適度な運動をする

体を適度に動かすことで、適正体重(標準体重)を維持するように心がけましょう。肥満はあらゆる生活習慣病の要因となります。食べたら体を動かすというように、摂取と消費のバランスを保つことが大切です。

急激な温度変化を避ける

体は急激な温度変化(暖かい所から寒い所に)にさらされると、交感神経が刺激されて末梢神経が急激に収縮し、一気に血圧が上昇します。そのため、寒い冬には高血圧になりやすいのです。室内の温度はどこも一定にしておくことで、温度変化を予防しましょう。特に冷たいトイレや脱衣所の温度には注意が必要です。皮膚表面に近い毛細血管は、寒さで夏よりも収縮しているため、寒い季節には脳卒中や心筋梗塞が発生しやすいので気をつけましょう。

熱いお湯には入らない

熱いお湯に入ると血圧は上昇します。適温は40℃前後。長湯をしない方が賢明です。脱衣所は寒すぎないように気をつけましょう。

冷えと便秘に気をつける

体が冷えると便秘になりがちです。便秘は血圧を上げる原因にもなるので、冷えと便秘に気をつけましょう。

過労・喫煙・ストレス・睡眠不足などに気をつける

高血圧の約90%は原因のはっきりしない「本態性高血圧」であるといわれています。中高年から徐々に血圧が上がっていき、その要因として過労・喫煙・ストレス・睡眠不足なども複雑に絡み合っていると指摘されています。

血圧安定・高血圧を予防する健康レシピ

暖かい所から急に寒い所に行くなど、体の急激な温度変化は血圧上昇の大きな要因のひとつです。そのため、外気の下がる寒い冬は高血圧になりやすく、注意が必要です。
高血圧の恐ろしい点は、常に大きな圧力が血管壁にかかり血管壁を傷めているにもかかわらず、自覚症状の薄いこと。そのため、気づいた時には深刻な状況になってしまうことが多々あります。高血圧のメカニズムを把握し、血管壁に負荷がかからないような生活をしましょう。
食生活では、まず塩分の取り過ぎに注意すると同時に、血管を丈夫にする良質なたんぱく質、血圧を下げる働きのあるカリウム・マグネシウム・カルシウム、食物繊維などを十分に取ることが大切です。
「血圧が高い」症状は「未病」の段階。食を初めとする生活習慣で、しっかり予防することができます。

アサリときゅうりの海苔酢

アサリときゅうりの海苔酢
海苔はビタミン・ミネラル・食物繊維などを豊富に含んでいます。特に水溶性の食物繊維はナトリウムが腸から吸収されるのを防ぐと同時にカリウム放出にも働き、カリウムやカルシウムの働きと一緒に、血圧降下に有効に働きます。アサリのタウリン、きゅうりのカリウム、酢のアルギニンが高血圧予防効果をさらに高めます。

さつまいも・昆布・小豆の煮物

さつまいも・昆布・小豆の煮物
さつまいもと昆布は生活習慣病の予防に優れた食べ合わせです。コレステロールやナトリウムを体外に排出する働きに優れ、豊富な食物繊維が腸内の環境を整え便秘予防にも有効です。小豆のカリウムと食物繊維をプラスすることで、体内の余分な塩分や老廃物が排出され、高血圧予防効果がさらに高まります。

じゃがいもとブロッコリーのクリームチーズ和え

じゃがいもとブロッコリーのクリームチーズ和え
じゃがいもはカリウムの王様と呼ばれるくらい、カリウムを豊富に含んでいる根菜です。ブロッコリーはカルシウムを豊富に含み、豆類の食物繊維と一緒に高血圧や動脈硬化の予防に働きます。クリームチーズと牛乳のカルシウムが血圧上昇を予防し、良質なたんぱく質が血管強化に働きます。

牛肉のごま焼きおろし添え

牛肉のごま焼きおろし添え
ごまは成分の約50%強が良質な不飽和脂肪酸のリノール酸やオレイン酸です。不飽和脂肪酸はコレステロールを調整して、高血圧や動脈硬化予防に働き、常食すると血管がしなやかになり、生活習慣病の予防に効果を発揮します。牛肉の良質なたんぱく質と一緒に取ると、丈夫な血管が作られます。大根の食物繊維・じゃがいもとにんじんのカリウムがプラスされ、高血圧予防効果がさらに高まります。

豚肉と野菜の蒸しワンタン

豚肉と野菜の蒸しワンタン
豚赤み肉は脂肪が少なく良質なたんぱく質やビタミンA・B・Eを豊富に含み、にらのカルシウム・にんじんのカリウム・レタスのビタミンEと一緒に取ると、血管が強化され、血流がよくなり、高血圧の予防に働きます。蒸すことで余分な脂質が落とされ、脂質の取り過ぎの心配はありません。ビタミンB1の豊富な豚肉は、にらの働きで吸収が高まり、疲労回復や体力強化にも有効です。

野菜と鶏ササミ肉の湯引き

野菜と鶏ササミ肉の湯引き
良質なたんぱく質と脂質を持った鶏肉と、カリウムが豊富な野菜類を一緒に取ると、血管が強化されて余分なナトリウムが排出されるため、高血圧予防に優れた食べ合わせになります。カロテンやビタミンCも豊富に含まれ、風邪予防や美肌にも有効です。酢に含まれるアルギニンが血圧低下に働きます。

タラと根菜のカレー揚げ

タラと根菜のカレー揚げ
高たんぱくで低脂肪のタラと、ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富な根菜類は、コレステロールを低下させ、高血圧や生活習慣病の予防に有効な食べ合わせです。タラに含まれるタウリンがその効能をさらに高めます。さといもとれんこんのヌメリ成分が胃腸の働きを増強するため、体力強化にも有効です。カレー粉で風味がついているため他の調味料の必要はなく、また薬効にも優れています。

ホタテ貝柱とかぶの炊き合わせ

ホタテ貝柱とかぶの炊き合わせ
ホタテ貝柱は高たんぱくで低脂肪のため、ダイエットに向く貝です。遊離アミノ酸のタウリンを豊富に含んでいるため、コレステロールを低下させ血圧を正常にする働きに優れています。かぶとしめじのカルシウム・カリウム・食物繊維が、血圧安定効果をさらに高めます。かぶとしめじに含まれる高い抗がん成分が、がん予防にも働きます。

イワシと豆腐の煮物

イワシと豆腐の煮物
イワシは血流をよくする多価不飽和脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)を豊富に含んでいる青魚です。EPAは血中コレステロールを低下させる働きにも優れ、豆腐(マグネシウム)・にんじん(カリウム)・えのきだけ(食物繊維)と食べ合わせると、高血圧の予防に優れた働きを発揮します。しょうがを加えて、イワシの臭みを消すと同時に、脂肪の酸化を防ぎます。

キンメダイの豆鼓醤(トウチジャン)野菜蒸し

キンメダイの豆鼓醤(トウチジャン)野菜蒸し
豆鼓は大豆の半乾燥発酵品で、にんにくやオイスターソースを加えて味噌状にした豆鼓醤は、味噌や醤油のルーツといわれる中華調味料の一つです。キンメダイは低脂肪で良質なたんぱく質を含み、タウリンは血中コレステロールを低下させて血圧低下に働きます。にんじんのカリウムやしいたけの食物繊維をプラスして、高血圧予防効果を高めます。酢に含まれるアルギニンには血圧を下げる働きがあります。

納豆とマグロのエスニック春巻き

納豆とマグロのエスニック春巻き
納豆は牛肉に匹敵する良質なたんぱく質を持ち、カリウム・マグネシウム・カルシウムなどをバランスよく含んだ血圧安定に有効な食べ物です。ワカメに含まれるカリウムやアルギン酸が体内の余分な塩分を体外に排出して高血圧や動脈硬化の予防に働きます。マグロやねぎを加えることで、高血圧の予防効果はさらに高まります。