熱中症

熱中症とは

「体の中と外の暑さによって引き起こされる体のさまざまな不調」のことで、体温の高温状態下で、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体内の調整機能がうまく働かなくなることで発症する障害です。体内に多量の熱が発生しているのに、体温調整機能が働かず、体内に「熱」がこもっている状態なので、戸外・室内問わず発症します。

熱中症は3つの症状に分類される

◎重症度Ⅰ度:体温が38℃以下の状態で発症します。汗をかいているのに水しか飲まず、塩分補給をしない場合に発症します。血液中の塩分濃度が低くなるため、塩分を多く必要とする筋肉(特にふくらはぎや腕)に痛みを伴うけいれん(「こむら返り」)が出ます。また、脳への血液が瞬間的に不足することで発症する「熱失神」(脳貧血ともいう。立ちくらみの状態)を引き起こします。
◎重症度Ⅱ度:体温が40℃以下の状態で発症します。汗をかいているのに水分を取らないでいると、脱水症状と血管拡張に伴う血圧低下が急激に進行し、脳への血液不足を起こします。頭痛・めまい・吐き気・脱力感などの症状が表れ、顔色が青ざめて脈拍も速くなります。
◎重症度Ⅲ度:体温が40℃以上の状態で発症します。体温を調整する中枢機能がマヒしてしまい、意識障害や異常な言動や行動などが表れます。熱射病とか重度の日射病と呼ばれ、死亡に至る危険性が高い症状です。

塩分摂取の目安は

汗で排出された塩分をしっかり補給しないと、「熱けいれん」(重症度Ⅰ度)を起こすことがあるので、こまめに塩分を補給しましょう。目安の塩分摂取量は水分の0.1~0.2%といわれています。

アルコールはNGです!

乾いた喉に冷たいビールは本当に美味。でもこれはNGです。ビールだけではなくどんな種類のお酒でも、アルコールは尿の量を増やして体内の水分排泄に働きます。さらに、アルコールで一旦吸収された水分も、その後にそれ以上の水分が尿として排泄されてしまうため、アルコールでの水分補給は逆効果。アルコールを飲む時は特に水分を多く取るよう心がけましょう。

糖分の多い飲料もNG

糖分の多い飲料は血糖値を短時間で上げるため、即エネルギー源となる反面、浸透圧利尿作用が発生して水分が失われる結果を招きます。リバウンドで血糖値が急激に低下するため、水分保持能力が低下して水分喪失が促進されます。

朝食はしっかり食べること

朝食を食べないでいると血糖値が下がり、水分保持能力が低下します。そのため、運動中の脱水が簡単に進行する結果を招くので要注意。エネルギー不足で脳も十分に機能しません。

急に熱くなる日に注意する

熱中症は入梅入り前の5月頃から発生し、梅雨明けの7~8月に多発する傾向を持っています。梅雨の合い間で突然気温が上がった日や、前日に比べて急に気温が上がった日には特に気をつけましょう。

暑熱順化

暑熱順化とは「暑さに慣れること」です。熱中症は5月ごろから発生しますが、そのころは気候もよく、あまり汗もかかず、体が暑さに慣れていない時期です。この時期から日常運動などで汗をかく習慣をつけ、暑さに慣れる体作りをしておくと、熱中症を予防することができます。暑熱順化は運動を開始した数日後から起こり、約2週間で獲得できるといわれています。日頃からウォーキングなどの日常運動をするよう心がけましょう。

肥満に注意

学校管理下における熱中症死亡事故の約7割は肥満の人というデータがあります。肥満の他、虚弱体質・高血圧・心疾患・糖尿病などの疾患を持っている場合も、熱中症にかかりやすい傾向にあります。規則正しく栄養バランスの取れた食事を常に取るように心がけましょう。食べ物の栄養成分を知り、賢い食べ合わせをすることは、自分の健康を管理する上で大切なことです。

熱中症を予防・緩和する栄養成分と食べ物

熱中症を予防するには、かかりやすい条件である肥満や虚弱体質などの体の状態や、高血圧・心疾患・糖尿病などの疾患を予防することが大切です。体質や症状に合わせた栄養成分を取ると同時に、カリウム・ビタミンB1・クエン酸をしっかり取るようにしましょう。

カリウム

汗をかくと塩分(ナトリウム)が排泄されますが、同時にカリウムも排泄されます。カリウムは細胞内液に多く含まれており、カリウムが失われると細胞内が脱水症状を引き起こします。細胞内脱水は、熱中症を引き起こした後の重要臓器の細胞機能障害の原因となり、熱中症回復に影響を与えます。筋肉の収縮を助ける(働きをよくする)働きもあり、日常的に取ることで熱中症にかかった時の回復力を高めることが可能です。

カリウムを多く含む食品:
小豆、そら豆、いんげん豆、海苔、パセリ、干しヒジキ、ほうれん草、さといも、じゃがいも、落花生、松の実、バナナなど

ビタミンB1

不足すると糖質を分解することができず、疲労物質(ピルビン酸や乳酸など)が溜まり、疲れやすくなります。食欲不振・倦怠感・手足のしびれやむくみなどの症状が発症します。

ビタミンB1を多く含む食品:
豚肉(ヒレ肉・モモ肉・ロース・肩ロース・ひき肉など)、ハム、焼き豚、ウナギ、グリーンピース、海苔、青海苔(乾)、大豆(乾)など

クエン酸

梅干やレモンなどに多く含まれている酸味主成分で、疲労の原因となる乳酸の発生を抑え、疲労回復に優れた効果を発揮します。またパロチン(若返りのビタミンと呼ばれている)の代謝を活発にするため、老化防止も期待できます。

クエン酸を多く含む食品:
梅干し、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、食酢、黒酢、もろみ酢など

熱中症予防レシピ

体の中と外の暑さによって引き起こされる熱中症は、基本的には食べ物で治すことはできません。しかし、肥満・虚弱体質・高血圧・心疾患・糖尿病といった体の状態や疾患が、熱中症になりやすいことが指摘されていることからも分かるように、体質や疾患に効果のある食べ物を取ることで、一定の予防をすることが可能です。 失われた水分や塩分を十分に補給すると同時に、熱中症になりにくい体質を作りましょう。基本は生活習慣病を予防する毎日の規則正しい食事。さらに汗で失われるカリウム、疲労回復に働くビタミンB1やクエン酸を積極的に取ることを心がけましょう。

ウナギ入り小豆粥

ウナギ入り小豆粥
小豆はビタミンB1・カリウム・食物繊維を、ウナギはビタミンA・B1・Eを豊富に含んでいる食材です。ともに含まれるビタミンB1が糖質を分解してエネルギーに変えるため、小豆とウナギを一緒に取ると優れた疲労回復力を発揮する食べ合わせになります。良質な糖質・たんぱく質・脂質も豊富なため、体力が強化され、熱中症の予防にも有効です。

豚ひき肉とパセリのオイスターソースチャーハン

豚ひき肉とパセリのオイスターソースチャーハン
豚ひき肉とパセリで作るチャーハンは、たんぱく質・脂質・糖質・ビタミン・ミネラルがバランスよく取れる栄養価満点の食べ合わせです。特にビタミンB1、ビタミンC、カリウムを豊富に取ることができるため、疲労を回復する力に優れています。鷹の爪の辛み成分が食欲増進に働き、体力強化につながります。ごはんはビタミンB群や食物繊維を豊富に含んでいる雑穀米を使ってください。

黒豆とナッツ・レーズンの炊き込みごはん

黒豆とナッツ・レーズンの炊き込みごはん
黒豆は大豆の一種で、黒い色素は抗酸化力の高いアントシアニンです。黒豆を胚芽米・ナッツ・レーズンと一緒に取ると、糖質・たんぱく質・ビタミンB群・カリウム・食物繊維などを豊富に取ることができ、疲労回復・体力強化・血圧安定などに有効な食べ合わせになります。黒ごまの良質な脂質をプラスして、コレステロールを調整します。

じゃがいも・ベーコン・トマトの重ね煮

じゃがいも・ベーコン・トマトの重ね煮
じゃがいもはカリウムの王様とも呼ばれる根菜で、カリウムは余分な塩分を体外に排出する働きを持っています。トマトに含まれるビタミンCとカリウムがプラスされることで、塩分の多いベーコンと食べ合わせても塩分過多の心配がありません。たまねぎの硫化アリルが新陳代謝に働き、高血圧・心疾患・糖尿病予防が期待できます。

にんじん・海苔・卵のふりかけ

にんじん・海苔・卵のふりかけ
にんじんと海苔にはカリウムが豊富に含まれています。さらににんじんはカロテンの宝庫と呼ばれるほどに豊富なカロテンを含んでいるため、常にがん抑制食品の筆頭に登場する緑黄色野菜です。豊富なカリウムが熱中症回復に働き、筋肉の働きをよくします。パセリを加えることでさらにカリウム含有が高まり、卵の良質なたんぱく質と脂質が体力強化に働きます。冷蔵庫で1週間保存できます。

ピーマンのタラコ入りクリームチーズ詰め

ピーマンのタラコ入りクリームチーズ詰め
牛乳を原料としたクリームチーズは脂質・たんぱく質・ビタミン・ミネラルを豊富に含み、酵素の働きによって消化吸収に優れた食品となっています。ビタミンB1を多く含むタラコをプラスし、疲労回復や食欲不振を予防します。レモン汁のクエン酸がエネルギー源となり、疲労感や倦怠感を取り除きます。

大豆と豚肉の落花生入り甘辛煮

大豆と豚肉の落花生入り甘辛煮
大豆・豚肉・落花生は、カリウムやビタミンB1がたっぷり取れる熱中症予防の食べ合わせです。疲れが取れて体力がつき、甘辛い味が食欲増進に働きます。大豆と落花生の豊富な食物繊維が食後の血糖値上昇を緩やかにする働きがあるため、糖尿病にも有効です。砂糖としょう油の量は好みにあわせて調整してください。

枝豆とパプリカのヨーグルトソース和え

枝豆とパプリカのヨーグルトソース和え
枝豆は大豆の未熟な実で、大豆の栄養成分を持ちながら、ビタミンAやCを豊富に含んでいます。良質なたんぱく質とビタミンB1が夏バテの疲労回復に働きます。ヨーグルトのビフィズス菌やパプリカの抗酸化力が発がん抑制に働き、枝豆・パプリカの食物繊維とヨーグルトの乳酸菌が整腸作用を高めます。レモン汁の酸味が食欲増進に働きます。

金時豆とドライフルーツの煮含め

金時豆とドライフルーツの煮含め
金時豆の主成分はでんぷんとたんぱく質で、カリウムや食物繊維を豊富に含んでいます。でんぷん質なので甘みとの相性がよく、種皮がやわらかくなるため煮豆に適しています。グリーンピースはえんどう豆の若い未熟な豆で、ビタミンBやカリウムを豊富に含んでいます。ミネラル豊富なドライフルーツと一緒に取ることで、体力が強化され、熱中症に負けない体を作ります。食物繊維も豊富なため、整腸作用にも優れています。

小豆とハムのマリネ

小豆とハムのマリネ
小豆とハムは、小豆のカリウムとハムのビタミンB1の働きにより、食欲が増進され疲れが取れる食べ合わせです。レモンと酢のクエン酸は単体よりも、ビタミンB群と一緒に取ると効果的で、より高い疲労回復効果が期待できます。むくみを取り、血流をよくする働きにも優れています。

暑い時に食べたいレシピ

暑い時は食欲がダウンしがちです。食欲不振は体力の低下を招き、疲れや倦怠感を引き起こし、熱中症にかかりやすい状態を招きます。暑い季節を元気に過ごすためにも食事は規則正しく取りましょう。食べる時に
①体熱の上昇を抑える
②食欲を増進させる
③疲れを取り去る
 といった効果のある食べ物を積極的に取ってください。糖質過多や糖分の取り過ぎは体をだるくするので気をつけましょう。暑い時こそ食べ合わせに気をつけ、バランスのよい食事を心がけてください。

赤じそごはん

赤じそごはん
梅漬けの赤じそで作る炊き込みごはんは、食欲が湧き、夏の疲れた体におススメのレシピです。しそは古くから胃腸の働きを増進する・解毒・発汗・解熱などの効能から、薬として用いられてきた野草です。赤じそに含まれるアントシアニン系色素のシソニンは、強い抗酸化力を持っており、活性酸素除去に有効に働きます。胚芽米のビタミンB群や食物繊維が疲労回復や整腸作用に働きます。

ねぎとベーコンの青じそ巻きフライ

ねぎとベーコンの青じそ巻きフライ
ねぎは体を温め、初期の風邪予防に有効に働く野菜です。また、胃液の分泌を促して消化を助け、ビタミンB1の吸収を高める働きを持っているため、ベーコンと一緒に取ると、疲れが取れて食欲が増進される食べ合わせになります。青じそのβーカロテンが抗酸化力を発揮します。

鶏ササミ肉・きゅうり・油揚げの梅じょう油添え

鶏ササミ肉・きゅうり・油揚げの梅じょう油添え
鶏ササミ肉・きゅうり・油揚げは、酢と一緒に取ることで良質な脂質やたんぱく質が体内によく吸収され、滋養に優れたヘルシーな食べ合わせになります。梅干しのクエン酸が疲労を回復してエネルギー代謝を高めるため、食欲のない時におススメです。梅干しの有機酸が食欲増進に働き、ダイエット食や糖尿病予防食としても優れています。

きゅうりと焼き豚のごま酢油漬け

きゅうりと焼き豚のごま酢油漬け
きゅうりはウリ科の夏野菜で、生食すると体内の余分な熱を冷ます作用に働きます。カリウムも豊富に含んでおり、にんじんのカリウムと一緒に血圧正常化に働きます。焼き豚のたんぱく質・脂質・ビタミンBが体力強化と疲労回復に、酢の有機酸が食欲増進に働きます。

なすと豚ひき肉のカレー炒め

なすと豚ひき肉のカレー炒め
なすは体を冷やす働きを持っており、体のほてりやのぼせに優れた効能を発揮する夏野菜です。植物油と一緒に取ると血中コレステロールを抑え、体を冷やす作用がやわらぎます。なす・豚ひき肉・たまねぎを一緒に取ると、疲労回復に優れた食べ合わせになります。カレー粉の刺激が食欲を増進させ、暑さ負けの時におススメの一品です。