よめな

よめな(嫁菜)とは

よめな

野菊の代表格

よめなはキク科ヨメナ属の多年草で、学名はKalimeris pseudoyomena。野菊の代表格です。キク科の植物は数多くあり、姿も似ているものが多いため、まとめて「よめな」と呼ばれています。本州中部以西、四国や九州などのやや湿った山地に自生し、葉の色は深緑で、特有の香気を持っています。茎の高さは30~100cmほどで、芽立ちのころの茎は赤みが強く、上の方で枝分かれしています。葉は互生で、卵状楕円形の粗く低い鋸歯、周辺には浅くて大きな鋸歯を持ち、地下茎は地中を四方に這って広がり、先端に新芽を出して増えていきます。夏から秋(7~10月)にかけて茎の先端から花茎を伸ばし、その先端に薄紫色の頭状花を咲かせます。

万葉の時代から親しまれていた春の摘み草

よめなは万葉の時代から親しまれ食されていた野草で、万葉集の中では「うはぎ」の名で謳われている代表的な春の摘み草です。名の由来はさまざまあり、①「嫁菜」は、美しく優しげな花を咲かせることから「嫁」の字があてられた ②「鼠菜=夜目菜(よめな)」は、夜に活動する鼠によめなを食べさせ、畑のなすを食べさせないためにこの字があてられた ③「乳菜(ちちな)」は若菜を摘み取ると、茎から白い乳を出すからなどと言われ、その他、「おはぎ」「はなぎ」「よめがはぎ」「よめのさい」「なつぎく」「のしゅんぎく」「やましろぎく」など、多くの別名で呼ばれています。

民間療法では解熱剤や利尿剤として利用されている

よめなは開花期に全草を採取して天日で乾燥させたものを、民間療法では解熱や利尿剤として利用されています。食用としては3~4月に5~6cmほどに伸びた若葉を、根元からナイフなどでそぎ取り、塩少々を入れた熱湯でゆでてから水にさらし、和え物・お浸し・汁の実などに利用します。独得の香りがあるので、水に20~30分さらすと食べやすくなります。

よめなに含まれる主な成分

よめな

カロテン、ビタミンK、ビタミンCなどのビタミン類を含み、特にカロテンが多く含まれています(ビタミンA効力が100g中3100IUと高い)。ミネラルではカリウム含有が高く、食物繊維も豊富に含まれています。低カロリーでたんぱく質、炭水化物、脂質のバランスがよいため、ダイエット食にも適しています。

カロテンが眼に栄養を与え、皮膚や粘膜の健康に維持する

カロテンは体内でビタミンAの働きをする栄養成分です。眼に栄養を与え、皮膚や粘膜の健康維持に働くため、不足すると視力低下、粘膜乾燥による消化吸収能力の低下や呼吸器系の抵抗力低下、皮膚の乾燥やぱさつきなどの障害が発生します。そのまま体内に吸収されるビタミンAと違ってカロテンの吸収率は低いのですが、脂溶性なので油を使った調理法にすると、吸収率がグンと高まります。バランスよく食べれば不足する成分ではなく、逆にサプリメントなどでの過剰摂取(極端な取り過ぎ)は過剰症を引き起こすため注意が必要です。

血圧正常化に働くカリウム

よめなにはカリウムが含まれています。カリウムは多くの食品に含まれており、主に小腸から吸収され腎臓から排出されるミネラルです。ナトリウム同様に体液浸透圧などに働き、ナトリウムが腎臓で再吸収されるのを抑制して尿の排泄を促す働きがあるため、血圧安定や利尿作用に有効に働きます。水溶性のため損失量は調理法によって異なるため、煮汁を利用できる調理法にすると損失量を抑えることができます。

血管強化や抗ストレスに働くビタミンC

ビタミンCは血管強化や抗ストレスに働くビタミンです。欠乏すると皮下出血や歯茎が紫色になる、骨折しやすくなるなどの原因になります。熱に弱く、水溶性のビタミンなので、有効に取るには生食がベスト。加熱する場合には手早くする、あるいは揚げるなどの調理法にすると、損失を少なくすることができます。

血液凝固と骨の形成に働くビタミンK

よめなにはビタミンKが豊富に含まれています。ビタミンKは「出血を防ぐビタミン」とも呼ばれ、ビタミンK1とビタミンK2の二つに大別されています。血液の凝固を促進し、骨に存在するたんぱく質のオステオカルシンを活性化して骨の形成を促す働きを持っています。緑黄色野菜にはK1、肉・卵・乳製品・果物&一般野菜にはK2が多く含まれています。

生活習慣病の予防にも働く食物繊維

食物繊維は体内では消化できない炭水化物で、エネルギー源にはなりませんが「体の掃除係」として働くことから、「第6の栄養素」と呼ばれています。水溶性と不溶性があり、ともに整腸作用が強く、便秘解消や有害物質排出などに働きます。コレステロール値低下にも働くため、生活習慣病予防にも有効。よめなには水溶性と不溶性の食物繊維がバランスよく含まれています。

光合成に欠かせないクロロフィル(葉緑素)が健康維持に働く

よめなの葉の緑色は、クロロフィル(葉緑素)と呼ばれる緑色をした色素です。クロロフィルの分子構造は血液に類似しているため、「植物の血液」とも呼ばれています。「増血や血液をキレイにする」「肝臓の強化」「損傷を受けた組織の修復」などの働きを持ち、私たちの健康維持に働き、光合成に欠かせない成分です。
※光合成:動けない植物が必要な栄養分(炭水化物)を自分の体の中で作る仕組み。太陽光・空気中の二酸化炭素・根から吸い上げた水を使って、葉緑体の中で栄養成分を作り出し、水を分解する過程でできる酸素は外に排出する。

よめなのゆで方

よめな

よめなのアクは弱程度です。アクは少ないため、ゆでる時間は短時間で十分ですが、特有の香りがあるので、20~30分くらい水にさらすと食べやすくなります。

よめなのゆで方

  1. よめなはよく洗い、水気をきる。
    よめなのゆで方
  2. 鍋にたっぷりの湯を沸騰させ、塩少々を加え、水気をきったよめなを入れ1~2分ゆでる。
    よめなのゆで方
  3. ゆであがったらすぐに水に放し、20~30分水にさらし、水気をきる。
    よめなのゆで方

よめなレシピ

よめなは万葉の時代から春の摘み菜として食されてきた野草です。3~4月頃に5~6㎝くらいに伸びた若菜を根元からナイフなどでそぎ取り、利用します。アクは「弱」ですが、塩ひとつまみ入れた熱湯でさっとゆで、その後冷水で20~30分さらしてから利用すると美味しくいただけます。秋に咲く花は天ぷらにしても美味。
低カロリーで栄養バランスにも優れているため、良質なたんぱく質・脂質・炭水化物と食べ合わせると、バランスのよいダイエット食として最適です。

よめなの雑穀寿司

よめなの雑穀寿司
菊花はビタミンEが豊富な花菜類の野菜で、古来より茶や酒として飲用され、生薬としても利用されてきた歴史を持っています。よめなと菊花で作る寿司は、豊富なビタミンとミネラル、食物繊維の働きで血圧正常化やコレステロール値低下などが期待できる食べ合わせになります。雑穀米の糖質がエネルギー源として働くため体力が強化され、雑穀米の食物繊維がコレステロール値低下をさらに高めます。好みで黒豆や鶏肉を加えると、良質なたんぱく質や脂質を一緒に取ることができます。菊花は旬の時期に酢を入れた熱湯でさっと茹でて水気をきり、十分に冷めてからできるだけ平らにして冷凍すると一年中利用することができます。

よめな飯

よめな飯
よめな飯は、よめなの代表的なレシピです。米と一緒に炊き込んで作る方法もありますが、ここでは炊き上がったごはんに混ぜ込んで作ります。よめなのカリウム、ごまのリノール酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸、よめなとごまに含まれる食物繊維の働きが一緒になることで、血圧安定に働く食べ合わせになります。よめなのビタミンKとごまのカルシウムの働きで、骨の強化や精神安定も期待できます。

よめなの鶏ひき肉バーグ

よめなの鶏ひき肉バーグ
鶏肉は淡泊で消化に優れ、良質なたんぱく質には必須アミノ酸のメチオニンが多く含まれ、アレルギー症状の緩和や肝機能強化などに働きます。また、鶏肉にはビタミンAが豊富に含まれており、カロテン含有の高いよめなと一緒に取ると、粘膜が強化され、肌荒れや夜盲症などの症状回復に有効な食べ合わせになります。よめなの食物繊維としょうがの抗凝血作用が血中コレステロールを下げ、血液浄化に働きます。

よめなとじゃがいものあけぼの和え

よめなとじゃがいものあけぼの和え
あけぼの和えとは、赤い色の和え衣を使った和え物で、ここでは梅肉の赤を使ったあけぼの和えです。梅は天然の有機酸を豊富に含み、食欲増進、疲労回復、老化防止、肝機能を高めるなどの働きに優れています。よめなとにんじんのカロテンとカリウム、じゃがいものビタミンCとカリウム、そして食物繊維が、皮膚や粘膜を健康にして美肌を作り、血圧安定に優れた食べ合わせになります。梅干しは3年以上たった古いものほど、味も薬効も高まるといわれています。

よめなのクリームチーズ和え

よめなのクリームチーズ和え
クリームチーズは生クリーム、あるいはクリームと牛乳から作られる非熟成の軟質チーズで、酸味を帯びた風味とバターのような滑らかさを持っています。明太子はスケトウダラの卵巣を塩蔵した後に、唐辛子で漬け込んで作られる加工食品で、ビタミンCやB群を豊富に含んでいます。よめな、クリームチーズ、明太子を一緒に取ると、良質なたんぱく質や脂質、ビタミンA・C・B群などがバランスよく取れることで、血管強化や細胞の酸化予防に優れた食べ合わせになります。レーズンの抗酸化力が細胞の酸化予防をさらに高めます。