クローバー
クローバー(白つめ草・赤つめ草)とれんげ草
草遊びに利用される身近な野草
クローバーはヨーロッパ原産、れんげ草は中国原産の野草です。ともにマメ科1・2年草あるいは多年草の植物で、地面をはう茎の節部から根を出して四方に広がります。強い生命力を持ち、花には清々しい香りがあるため、古来から指輪や首飾りなどの草遊びにも広く親しまれている身近な植物です。
雑草駆除や土壌改良に有効な野草
クローバーもれんげ草も利用目的は一緒です。れんげ草より少し遅れて咲くクローバーは世界に約300種存在するといわれ、日本には牧草として渡来し、その後日本各地で野生化したといわれています。クローバーもれんげ草も空気中の窒素を固定する作用を持ち、根にも窒素をたくさん蓄えているため、緑肥と一緒に土に混ぜ込むと窒素の多い土になるといわれています。クローバーとれんげ草は日本全土の道端や空き地、畑の縁などに自生する生命力の強い植物で、雑草駆除や土壌改良に有効な野草です。
ガラス容器のクッションに利用されたクローバー
クローバーは花の白いホワイトクローバー(白つめ草)と、花の赤いレッドクローバー(赤つめ草)があります。日本では白つめ草、赤つめ草と呼ばれる呼称が一般的ですが、クローバーが「つめ草」と呼ばれるようになった由来は、オランダからのガラス容器の輸入に際し、ガラス容器のクッション代わりにクローバーの枯草を詰めたからといわれています。クローバーの葉はハート形の小葉が3枚つくのが一般的ですが、突然変異で4枚葉になることがあり、4枚葉は「四つ葉のクローバー」と呼ばれ、幸福をもたらすと伝えられています。「オランダゲンゲ」「シロレンゲ」「ツメクサ」「ホワイトクローバー」などの別名を持っています。
れんげ草の名の由来
中国由来のれんげ草は30cm程度になる長い花茎を葉と葉の間から伸ばし、小さな蝶の形に似た小さな花を輪状に咲かせます。その様が蓮の花に似ていることから「れんげ草(蓮華草)」と呼ばれるようになったといわれています。れんげ草の花期は春から初夏で、花の色は紅紫色。花には蜜があり、万葉の時代から飼料や緑肥に利用されてきました。別名「ゲンゲ」とも呼ばれ、白つめ草と違って踏みつけに弱い側面がありますが、除去しやすい性質を持っています。
れんげ草の生薬名は「紫雲英(しうんゆい)」
れんげ草の生薬名は「紫雲英(しうんゆい)」といい、利尿・解毒・咳止め・痔・冷え性・美肌・しもやけ・やけどなどに利用されています。れんげ草は全草が薬用部分となり、初夏から秋にかけて採取し利用します。乾燥した全草を適当に刻んだものを布袋に入れて鍋で煮詰め、袋ごと煎じた煮汁を湯船に入れるれんげ湯は、冷え性予防として伝わる民間療法です。
レッドクローバーは西洋のメディカルハーブ
ローバーはヨーロッパ原産のため生薬名はありませんが、れんげ草の生薬名「紫雲英」と同様の薬効を持っています。採取時期や薬用部分も同じですが、痛風などの体質改善に効果があるとされています。花の赤いレッドクローバー(赤つめ草)にはイソフラボンやアントシアニンが豊富に含まれ、女性ホルモンのバランス調整、利尿、美肌、更年期障害の症状改善などに働くため、西洋のメディカルハーブとして利用されています。
クローバー(白つめ草・赤つめ草)に含まれる主な成分
クローバーは生命力に溢れる野草です。ミネラル、ビタミンA・B・C、タンニンやフラボノイドを含み、葉や茎にはたんぱく質も含有されています。花が赤い赤つめ草(レッドクローバー)の赤い花部分にはイソフラボンやアントシアニンなどが含まれ、ヨーロッパではハーブとして人気があります。
れんげ草と同様の薬効を持つ
クローバーは同じ種で目的も同じであるれんげ草と同様の薬効を持っています。「紫雲英(しうんえい)」という生薬名を持つれんげ草の薬効は「利尿、解毒、咳止め、冷え性、美肌、しもやけ」など多岐に亘り、クローバーも同様の薬効が期待できます。
体の調子を整えるビタミンA、B、C
クローバーに含まれるビタミンA、B、Cは、免疫力を高める働きに優れています。ビタミンAは肌の乾燥を予防して美肌を作り、ビタミンBは糖質のエネルギー代謝や体内で過酸化脂質をできにくくするなどの働きを持ち、ビタミンCは血管を強化してストレスへの抵抗力を高めます。ビタミン類は体の調子を整える潤滑油として有効に働きます。
「渋」と呼ばれ、血中コレステロール低下に働くタンニン
タンニンはカテキン類の総称で、広く植物の樹皮・実・葉・木部などに存在し、一般的に「渋」と呼ばれる成分です。水溶液が強い収れん作用を持ち、皮をなめす(動物の皮を通水性や通気性に乏しい革にする)性質を持っています。その存在は古くから知られていましたが、タンニンと呼ばれるようになったのは18世紀末で、英語の「tan(タン)=革をなめす」が語源となっています。抗酸化作用、抗がん作用、殺菌作用、抗ウイルス作用などを持ち、血中コレステロールを下げて動脈硬化、高血圧、心疾患や脳血管などを防ぎます。脂肪を分解してエネルギーに変える働きもあり、肥満予防にも有効です。
イソフラボンが女性ホルモン様に働く
フラボノイドはポリフェノールの一種で、植物の持つ色素・苦み・辛みなどの成分です。ポリフェノールは6000種類以上も存在するといわれ、フラボノイド系とフェノール酸系に分類され、その90%はフラボノイド系といわれています。赤つめ草に豊富に含まれるイソフラボンは大豆に含まれる代表的なフラボノイドで、女性ホルモンに働きます。フラボノイドの働きは物質によって異なりますが、総じて毛細血管強化、抗酸化作用、抗がん・抗アレルギー作用・コレステロール低下・降圧・血糖下降などの生理作用を持っています。しかしポリフェノールは体内に溜めておくことができず、効き目は2~3時間といわれています。
高い抗酸化作用を持ち視力改善に働くアントシアニン
赤つめ草の赤い色はポリフェノールのアントシアニンです。アントシアニンはイソフラボンと同じく代表的なポリフェノールで、赤ワインや紫さつまいもなどに含まれている成分です。アントシアニンは目の網膜にある紫色の色素ロドプシンの再合成を助ける効能があるため、視力改善に有効で、さらに高い抗酸化作用が認められています。高い即効性が報告されていますが摂取後4時間後に効果が見られ、24時間ほどで作用が消失されると報告されています。
光合成に欠かせないクロロフィル(葉緑素)が健康維持に働く
クロロフィルは葉緑素とも呼ばれる緑色をした色素で、植物の葉が緑色なのはクロロフィルを含有しているからです。クロロフィルの分子構造は血液に類似しているため「植物の血液」とも呼ばれています。「増血や血液をキレイにする」「肝臓の強化」「損傷を受けた組織の修復」などの働きを持ち、私たちの健康維持に働き、光合成に欠かせない成分です。
※光合成:動けない植物が必要な栄養分(炭水化物)を自分の体の中で作る仕組み。太陽光・空気中の二酸化炭素・根から吸い上げた水を使って、葉緑体の中で栄養成分を作り出し、水を分解する過程でできる酸素は外に排出する。
クローバーレシピ
クローバーは「食べる土手菜」とも呼ばれる野草です。たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維、ファイトケミカル(ポリフェノールなどの成分)を含み、体の生理機能を整えて免疫力強化に働きます。強い生命力を持ち、地域によっては真冬以外にその姿を見ることができます。野草特有の抗酸化力を豊富に持ち、良質なたんぱく質や脂質と食べ合わせると栄養バランスに優れた健康レシピを作ることができます。ここでは白つめ草や赤つめ草の区別なく使用した時は、材料名を「クローバー」と表記しています。