薬効豆腐料理

豆腐の栄養

豆腐の栄養

「畑の肉」と呼ばれる大豆から作られる豆腐は、大豆の栄養素をそっくり引き継ぎながら、水分含有が高いためやわらかく消化吸収に優れた食品です。水分含有は木綿豆腐86.8%、絹ごし豆腐89.4%(五訂食品成分表による)と多く、豊富な水分は体液の生成に有効に働き、発熱時などの水分補給にも適しています。
豆腐に含まれるさまざまな栄養素は、脂質異常(高血脂)、動脈硬化、糖尿病、高血圧などの生活習慣病予防に働くことが証明され、さらに肥満予防や美肌効果も高く、今や健康長寿の美容食として世界中で食されています。
わが国での一世帯あたりの年間豆腐消費数量は74.5丁、金額にして6719円(2004年/総務省過程調査表による)。一世帯で食べる豆腐は月に6.2丁、一週間に約2丁の計算となりますが、一世帯で週に2丁の消費は少なくはないでしょうか。
豆腐に含まれる栄養素とその薬効を知り、もっと食卓に登場させたいものです。

豆腐に含まれる栄養成分

たんぱく質良質で必須アミノ酸を豊富に含んでいる。体細胞を健康に保つ上で欠かせない栄養素。
カルシウム体内にもっとも多く存在するミネラルで、大部分は骨や歯に含まれている。豆腐のカルシウムはたんぱく質と結合しているため、消化のよいのが特徴。骨や歯を強化し、精神安定にも働く。イソフラボンの働きと一緒になり骨粗しょう症予防に有効。
リノール酸体内で合成することができず、不足すると欠乏症を起こすため「必須脂肪酸」と呼ばれている。血中コレステロールや中性脂肪値を低下させる働きがある。
レシチンリン脂質と呼ばれる脂質の一種。記憶の形成に重要な働きをする神経伝達物質の原料であり、肝臓で分解されてコリンとなり、血液によって脳に運ばれると、情報伝達物質のアセチルコリンになる。記憶力を高め、物忘れを防ぎ、脳を老化から予防する。強い乳化作用もあり、血管内の余分なコレステロールや脂肪を溶かす働きもある。
サポニン「脂肪やコレステロールの掃除人」と呼ばれ、肝臓と血液中のコレステロールを低下させ、脂肪の蓄積を防ぐ。活性酸素を除去し、生活習慣病予防に働く。
イソフラボン大豆胚芽に多く含まれるフラボノイドの一種で、エストロゲンという女性ホルモンに近い働きをする。カルシウムの吸収を助け、造骨を促進する働きもあるので、骨粗しょう症の予防に有効で、更年期障害予防にも働く。
オリゴ糖大豆の炭水化物に含まれており、善玉菌とされるビフィズス菌の栄養源となり、腸内を活性化させ、悪玉菌の増殖を抑える働きがある。
鉄分欠乏すると赤血球の生成が妨げられ、貧血になる。豆腐に含まれる良質なたんぱく質が鉄分吸収を高める。
トリプシンインヒビター最近の研究により、豆腐に含まれるトリプシンインヒビターがインシュリンの分泌を盛んにすることが報告されている。たんぱく質を消化する酵素の働きを抑えるので、血糖値上昇が抑えられ、糖尿病の予防や治療が期待されている。
ビタミンE「若返りのビタミン」と呼ばれ、脂肪の酸化を防ぎ、血管を丈夫にして血液の流れをよくする働きがある。
ビタミンB群糖質を分解してエネルギーに変えるビタミンB1、脂肪の蓄積を防ぐビタミンB2、胃腸を健全化するナイアシンなどが含まれている。

木綿豆腐と絹ごし豆腐

木綿豆腐と絹ごし豆腐

豆腐として広く一般に食されるのは「木綿豆腐」と「絹ごし豆腐」でしょう。木綿、絹ごしともに基本の栄養素は一緒ですが、製造の違いから栄養素の含有量や食感が異なります。双方の特徴を知った上で、体調や料理に合わせて賢く利用しましょう。

豆腐の作り方

大豆を一昼夜水に浸してやわらかくし、すりつぶします。このすりつぶしたものを「呉(ご)」といい、漉して豆乳とおからに分離します。漉した時に出る絞り汁が豆乳で、搾りかすがおからです。その豆乳をかためて豆腐が作られますが、原理は木綿豆腐も絹ごし豆腐も同じです。

木綿豆腐

木綿豆腐

豆乳にニガリなどの凝固剤を加えてある程度固めたものを、木綿の布を敷いた箱型に流し込み、上から重しをします。箱型には三方に穴が開いており、上から重石をすることで出てくる水分を切りながら固めて作ります。箱に敷かれている木綿の布目がそのままついているのが、木綿豆腐の特徴です。
絹ごし豆腐に比べて水分が少ない分たんぱく質や脂質が多く、カルシウム、鉄分、ビタミンE、食物センイなどが多く含まれています。カルシウムは絹ごし豆腐の約3倍弱、ビタミンEは約2倍含まれています。

絹ごし豆腐

絹ごし豆腐.

豆乳を箱型に直接流し込み、そこにニガリなどの凝固剤を入れて固めて作ります。箱型は木綿豆腐の箱型と違い、水切りの穴はなく、布も敷かれていません。豆乳そのものが固められるため、木綿豆腐の豆乳よりも濃厚なものを使います。きめが細かく美しいことから、木綿に対して絹ごしと名付けられています。
豆乳をそのまま固めて作られるため、水溶性のカリウムや、水溶性のビタミンB1やB2、炭水化物が多く含まれています。

木綿豆腐と絹ごし豆腐の栄養成分比較

栄養素木綿豆腐絹ごし豆腐
水分(g)86.889.4
タンパク質(g)6.64.9
脂質(g)4.23.0
炭水化物(g)1.62.0
ナトリウム(㎎)13
カリウム(㎎)140150
カルシウム(㎎)12043
マグネシウム(㎎)3144
リン(㎎)11081
鉄(㎎)0.90.8
亜鉛(㎎)0.60.5
銅(㎎)0.150.15
マンガン(㎎)0.380.31
ビタミンE(㎎)0.60.3
ビタミンK(ug)1312
ビタミンB1(㎎)0.070.10
ビタミンB2(㎎)0.030.04
ナイアシン(㎎)0.10.2
ビタミンB6(㎎)0.050.06
葉酸(ug)1211
食物センイ(g)0.40.3
木綿豆腐と絹ごし豆腐の栄養成分比較(100g中・五訂食品成分表による)

豆腐をおいしく健康に食べるコツ

豆腐は大豆をすりつぶし、漉してできた豆乳に、ニガリを加えて固めて作ります。栄養価が高く消化吸収に優れているため、胃腸が弱っている時や食欲のない時の栄養源として最適な食品です。また、水分が多くやわらかいため、お年寄りや離乳食としても向いています。
保存する時の注意や、栄養価を高めるための食べ合わせの食材を知ることで、豆腐をよりおいしく、健康に食べることができます。

パック内の水が濁っていないものを買おう

パック内の水は、衝撃に弱い豆腐のクッションの役割と、雑菌の繁殖を防ぐための空気遮断の役目を持っています。時間の経過とともに、豆腐の中から大豆の苦み成分やニガリ成分が出てくるので、購入する時はパック内の水が濁っていないものを選びましょう。

フタをして冷蔵庫に入れる

購入した豆腐はまずパックから取り出し、たっぷりの水を入れた容器に移し変え、他の食品のにおいがつかないようフタをして冷蔵庫に入れます。保存期間中は毎日新鮮な水に変えましょう。保存期間は表示を参照してください。

食べる直前まで水に浸ける

脱水すると口あたりが悪くなるので、食べる直前まで新鮮な水に浸けておきましょう。

長時間の加熱と冷凍に注意

長時間加熱すると、たんぱく質が変性してスが立つので、気をつけましょう。また凍ると同様に「ス」が立つので、冷蔵庫の温度にも注意しましょう。

カツオ節でカルシウムやメチオニンを、ごまでレシチンを取る

カルシウム吸収を高めるなら、カツオ節と一緒に食べましょう。カツオ節に含まれるビタミンDの働きで、カルシウム吸収がグンとアップします。また、カツオ節に含まれる必須アミノ酸のメチオニンがプラスされる効果もあります。ごまをかけるとごまレシチンの働きで脳の働きが高まります

薬味のビタミンCで鉄分吸収を高める

豆腐に含まれる鉄分は、ビタミンCと一緒に取ると吸収率が高まるので、青ねぎやシソなどを薬味として一緒に食べると効果的。ビタミンCは熱に弱いので青ねぎやシソは加熱しないようにしましょう。

体を温める作用のある薬味をたっぷりかけて

そのまま食べる冷奴や、湯で温める湯豆腐。どちらも美味しい食べ方ですが、豆腐は体を冷やす働きのある食品です。食べ過ぎると体が冷えるので、体を温める作用のあるねぎやカツオ節などをたっぷりかけて食べましょう。しょうゆも体を温める作用があります。

揚げ出し豆腐は、絹ごし豆腐で

カロリーの低い豆腐ですが、揚げ出し豆腐を作るときは、カロリーの低い絹ごし豆腐を使うとよいでしょう。口あたりも滑らかです。

木綿豆腐で焼き豆腐を作る

木綿豆腐を水切りして串をさし、遠火でゆっくり焼くと香ばしい焼き豆腐ができます。串をさす時は湯の中ですると豆腐がくずれません。

豆腐の歴史

豆腐は大豆加工食品の代表格

「畑の肉」と呼ばれる大豆は、古代から日本人の食生活を支え、健康に大きく貢献してきた食材です。その大豆からしょうゆ、味噌、納豆、豆腐、湯葉、油揚げなど数々の加工食品が生み出され、豆腐はその代表格ともいえましょう。
豆腐は遣唐使によってその製法が日本に伝わったといわれていますが、朝鮮伝来という説もあり、残念ながらきちんとした文献は残っていません。
しかし、平安時代末期、奈良春日大社の神主の日記に、「唐符(とうふ)」の記述があり、「唐」という字が使われており、中国伝来説が優位ですが、一方、四国の土佐に、文禄慶長の役(1592~1598年)に長宗我部元親が朝鮮から連れ帰った捕虜に豆腐を作らせたとの記録が残っています。

庶民の食べ物として普及したのは江戸時代の中期

貴重なたんぱく源として禅僧の精進料理の中で発展した豆腐ですが、庶民の食べ物として広く普及したのは江戸時代の中期です。江戸時代初期には高級品として扱われ、農民にとっては「ハレの日」にしか口にすることができない食べ物でした。家康、秀忠の時代には農村では豆腐は作ることも食べることも許されない禁令が出され、三大将軍家光は「慶安御触書」に農民が豆腐を製造することを禁じる法令を文書化しています。
徳川幕府の地位が固まるにつれ、世の中は争いのない平和な世の中へと変わり、徐々に豊かな食文化が開けてきます。また、江戸時代には肉食禁止令が強化され、肉に近いアミノ酸組成を持つ豆腐は、良質なたんぱく源として徐々に庶民の間に浸透していきます。

豆腐料理のベストセラー

天明2年(1782年)に刊行された人気書『豆腐百珍』を契機に、豆腐は江戸・大阪を中心に徐々に全国に普及していきました。翌天明3年には『豆腐百珍続編』も出版され、『豆腐百珍余禄』という付録までつくという人気ぶり。この3冊には約240種の豆腐料理が紹介されており、豆腐がいかに庶民の食生活に溶け込んでいたかが分かります。
同じ江戸時代に出版された『精進料理献立集』に紹介されているレシピの約9割も、豆腐料理となっています。

「腐」は「くら」の意味

豆腐の漢字には「腐」という字が当てられていますが、これは「腐る」という意味ではありません。中国では液体に近い固体を「腐」を使い表現します。例えばヨーグルトは「乳腐」と書かれ、液体に近い軟らかいミルクと解されています。
「腐」の字の冠「府」には「くら」という意味もあり、獣の肉を貯蔵しておく「くら」を表しています。肉は、始めは死後硬直で硬いですが、時間の経過とともに軟らかくなります。そのことから「腐」という字は、「ぶよぶよと液体のように軟らかいもの」を広く指すようになったといわれています。

豆腐を使った珍しい外用薬「豆腐の湿布」

庶民の食生活に溶け込み、健康に大きく貢献した豆腐ですが、豆腐を外用薬として使った民間療法も伝わっています。
豆腐は体を冷やす作用のある食材。その熱を吸収する作用を利用して作られる湿布薬で、ねんざや頭痛時の熱取りに使われる外用薬です。
作り方は、まず豆腐1/2丁と小麦粉60gをよく混ぜ合わせ、ガーゼに5~6mmの厚さにのばして出来上がり。これを患部に貼り、熱で乾いてきたら取り替えます。
頭が重い時にも効果があるといわれています。賞味期限が切れてしまった豆腐で十分。機会があったら試してみてはいかがでしょう。

薬効豆腐レシピ

栄養価の高い豆腐は、味にクセがないため、いろいろな食材と組み合わせて料理されることが多い食品です。魚、肉、野菜、海藻、きのこ、豆類、くだもの、木の実…、どんな食品とでも相性がよく、また煮る・揚げる・炒める・和えるなど、さまざまな調理法でもその栄養素やうまみを損なうことなく、料理することができる食品です。
豆腐に含まれる栄養素を知り、体調に合わせて組み合わせる食材を選び、薬効高いレシピを作ってみましょう。
豆腐の分量ですが、都会では一丁300~350gのものが多く、地方になると350~400gと若干大きくなり、沖縄豆腐は一丁1kgが一般的です。ここでは豆腐1丁は350gのものを使用しています。

冷奴どんぶり

冷奴どんぶり
たっぷりの豆腐と薬味をかけたどんぶりは、良質なたんぱく質・脂質・糖質を取れる健康食です。カツオ節のビタミンDが豆腐のカルシウム吸収を高めて骨の強化や精神安定に働き、刻みねぎのビタミンCが鉄分の吸収を高めて貧血を予防、ごまのレシチンが健脳効果を高めます。薬味のカツオ節・ねぎ・ごまが、豆腐の体を冷やす作用を適度に緩和して栄養源として効率よく働く手助けをします。

豆腐・エビ・にらの炒めもの

豆腐・エビ・にらの炒めもの
豆腐とエビを一緒に取ると、豆腐とエビの良質なたんぱく質・カルシウム・鉄分が体力強化・骨の強化や精神安定・貧血予防などに有効に働く食べ合わせになります。にらのビタミンCが貧血予防効果をさらに高め、硫化アリルが豆腐とエビのビタミンB1の吸収率を高めて疲労回復に働きます。

豆腐とトマトのチリソース

豆腐とトマトのチリソース
三大栄養素、ビタミン、ミネラルの栄養素がバランスよく取れる一品です。にんじん・にんく・トマトには高い抗がん作用があり、豆腐の植物性たんぱく質と豚肉の動物性たんぱく質と一緒に取ると、免疫力を強化する働きがさらに高まる食べ合わせになります。チリソースの辛みが発汗を促し、食欲が増進されます。

豆腐とキャベツのトマト入りハンバーグ

豆腐とキャベツのトマト入りハンバーグ
良質なたんぱく質と脂質を持つ豆腐と、発がん物質の解毒を促進するキャベツやトマトを一緒に取ると、免疫力に優れた食べ合わせになります。木綿豆腐に多く含まれるカルシウムは、キャベツに含まれる吸収のよいカルシウムと一緒になり、骨や歯を丈夫にして精神安定に働きます。やわらかくて吸収がよいので胃腸の弱っている時の栄養源としておススメです。

揚げ豆腐と雑穀米のカレードレッシング

揚げ豆腐と雑穀米のカレードレッシング
油で揚げた豆腐で脂質を、雑穀米で糖質を、ロースハムでたんぱく質を補う体力のつく一品です。ドレッシングの酢が三大栄養素の体内への吸収を高め、カレー粉の薬効が食欲増進や免疫力強化に働きます。きゅうりの体を冷やす作用は、酢と一緒に取ることでやわらげられます。

くるみと松の実入りの豆腐かまぼこ

くるみと松の実入りの豆腐かまぼこ
豆腐にくるみと松の実をプラスした豆腐かまぼこは、良質なリノール酸を豊富に取ることができるため、脂肪やコレステロールを低下させ、血栓や動脈硬化の予防に有効に働きます。くるみに豊富に含まれるビタミンEは、豆腐のレシチンの働きと一緒になり、体や脳を若々しく保ち、老化防止に一役買います。

豆腐と焼きナスのだし浸し

豆腐と焼きナスのだし浸し
ナスの実に含まれるフラボノイドは毛細血管を強化する働きに優れ、豆腐に含まれる豊富なリノール酸と一緒に取ると、血栓や動脈硬化予防に有効な食べ合わせとなります。たまねぎの持つ血中の善玉コレステロールを増やす硫化アリルの働きがプラスされ、血流サラサラ効果が高まります。

豆腐寒天とホタテ貝柱のパセリドレッシング

豆腐寒天とホタテ貝柱のパセリドレッシング
ホタテ貝柱に含まれる遊離アミノ酸のタウリンは、肝機能を高め、血中コレステロールを低下させる働きを持っています。豆腐のリノール酸がコレステロールを下げるので、豆腐とホタテ貝柱を一緒に取ると、動脈硬化や高血圧の予防に有効な食べ合わせになります。トマトに含まれるビタミンCやカリウム、食物繊維が高血圧の低下効果をさらに高めます。

みそ味の豆腐揚げ

みそ味の豆腐揚げ
豆腐とイワシはともに不飽和脂肪酸を豊富に含む食べ物です。イワシに含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)は脳の働きを活性化させて記憶力向上に働き、豆腐に含まれるレシチンと一緒になって、脳の老化防止に働きます。大豆を原料とする味噌をプラスすることで脳の活性化がさらに高まり、健脳効果の高い食べ合わせになります。

豆腐ソースの豚冷しゃぶ

豆腐ソースの豚冷しゃぶ
消化のよい豆腐に有機酸を多く含んだ酢を加えて作るソースは、脂肪蓄積を予防する働きのあるソースです。キウイフルーツのペクチンは酢のクエン酸の働きと一緒になり血中コレステロールを低下させ、脂肪の分解を高める働きをします。豚肉のたんぱく質はアミノ酸バランスに優れ、豊富なビタミンB1が疲労を予防。豆腐、豚肉、キウイフルーツは動脈硬化や疲労回復、脳の活性化に有効な食べ合わせです。