夏バテ[2]

夏バテ症状別の栄養素

夏バテと一口にいっても、生活スタイルによって、引き起こされる症状はさまざまです。
代表的な症状として、「ただ体がだるい」「食欲がない」「よく眠れない」などがあり、これらの症状が続くことで、体は緩慢に疲弊していきます。
それぞれの症状に効果的な栄養素を、体に有効に取り入れ、夏バテを防ぐ知識を持つことが大切です。基本の栄養素を覚えておきましょう。

「体がだるい・体が疲れやすい」症状の時

ビタミンB1

糖質を分解してエネルギーに変える働きがある。脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖代謝にかかせない。水溶性のビタミンなのでサプリメントで大量に取っても体外に排出されてしまうので注意。
※硫化アリルと一緒に取ると吸収が高まる。

ビタミンB1を多く含む食品:
豚肉、胚芽米、ピーナッツ、そば、ごま、ロースハム、枝豆、ウナギ、カツオ、大豆など

ビタミンB2

脂肪や糖質の代謝を助ける働きがある。脂質の代謝がスムーズに行われないとエネルギーとして利用されずに、中性脂肪として溜まってしまう。

ビタミンB2を多く含む食品:
卵、納豆、牛レバー、サバ、プロセスチーズ、干ししいたけ、ウナギの肝など

ビタミンB6

たんぱく質の代謝を助ける働きがある。神経伝達物質の合成に不可欠で、欠乏すると脳の機能に影響を与える。

ビタミンB6を多く含む食品:
マグロ、鮭、サバ、サンマ、牛レバー、牛乳、胚芽米など

ナイアシン(別名ビタミンB3・ニコチン酸)

糖質をエネルギーに変える働きがあり、ビタミンB1と一緒に不可欠な栄養素。二日酔いのもとになる「アセトアルデヒド」を分解し、除去する働きがある。

ナイアシン(別名ビタミンB3・ニコチン酸)を多く含む食品:
カツオ、ブリ、サバ、タラコ、豚レバー、牛レバーなど

クエン酸

糖質をエネルギーに変える働きがある。

クエン酸を多く含む食品:
レモン、梅干、グレープフルーツなど

「食欲不振」症状の時

ビタミンA

胃の粘膜を強化し、消化吸収力を高める働きがある。

ビタミンAを多く含む食品:
ウナギ、鶏レバー、春菊、にんじん、にら、卵黄、パセリなど

たんぱく質

胃腸を強化する働きがある。

たんぱく質を多く含む食品:
鶏肉、豚肉、牛肉、魚類、卵、大豆、牛乳など

ビタミンU(別名キャベジン)

細胞分裂を促して胃腸の粘膜の新陳代謝を活発にする。胃酸の分泌を抑える働きがある。

ビタミンU(別名キャベジン)を多く含む食品:
キャベツ(特に春もの)、セロリ、レタスなど

「寝つきが悪い・安眠できない」症状の時

カルシウム

大部分が骨や歯に含まれ、骨の成長とともに、神経の興奮を抑えて精神を安定させる。リンを多く取ると吸収が悪くなるので注意。

カルシウムを多く含む食品:
牛乳、ヨーグルト、チーズ、煮干、ワカサギ、納豆、小松菜、海苔、凍み豆腐など

ビタミンD

カルシウムの吸収を高める働きがある。

ビタミンDを多く含む食品:
鮭、サンマ、サバ、ウナギ、イワシ、アジ、干ししいたけ、まいたけなど

マグネシウム

約60%が骨に含まれ、カルシウムの働きを調整する。

マグネシウムを多く含む食品:
ほうれん草、大豆、小豆、アーモンド、干しヒジキ、納豆、木綿豆腐、カツオ、バナナなど

食欲増進・発汗作用の高い食材

食欲増進・発汗作用の高い食材

暑さで食欲が減退気味の夏は、きちんと食事をしなければと思いつつ、食欲が湧かず、栄養不足から体力消耗、夏バテへとつながりがちです。体の疲れを取り去る栄養素と一緒に、食欲を増進させ、発汗作用のある食べ物を取り、体の新陳代謝を活発にすることが大切です。苦みや辛みのある食材を積極的に取り入れましょう。

カレー粉

発汗、健胃、抗酸化作用がある。食欲を増進し、胃腸の働きを活発にする。発汗作用で新陳代謝を高める。

唐辛子

辛み成分はカプサイシンで、健胃、食欲増進、殺菌作用がある。体全体の血行を促進し、発汗が活発になる。

にんにく

硫化アリルがビタミンB1の吸収を高めて疲労回復に働く。スコルジニンが新陳代謝を活発にして血行をよくする。胃腸を温める働きがある。

わさび

辛み成分が胃酸の過剰分泌を調整し、適度な刺激が食欲を増進させる。

レモン

酸味成分のクエン酸が疲労物質を分解する。

ねぎ

ビタミンB1の吸収を高め、新陳代謝を活発にして疲労回復に働く。胃液の分泌を高めて胃腸を強化し、発汗作用がある。

しょうが

辛み成分のジンゲロンやショウガオールは胃液の分泌を促進し、胃を丈夫にして食欲を増進させる。発汗作用がある。

梅干

胃液の分泌を高め、食欲を増進させる。クエン酸が糖質をエネルギーに変えて疲れを取る。

キムチ

唐辛子、しょうが、にんにく、長ねぎなどを食材を組み合わせて作る発酵食品。発汗作用があり、食欲を増進させ、疲労を回復する。

夏バテ予防レシピ(2)

高温多湿の日本の夏は、体力が消耗しやすい季節です。体がだるく、食欲が出ず、暑さから寝つきが悪いなどの症状が重なり、「慢性疲労」が引き起こす夏バテ現象になりがちです。

暑さで汗をかき、ビタミン類やミネラル類の流失が激しい季節なので、毎日の食事で流失した栄養素をきちんと補っていくことが大切です。
疲労回復に効果の高いビタミンB群を始め、大量の汗で流失するミネラル類をコンスタントに補給し、夏に負けない体力を維持しましょう。

きゅうりの糠漬けと落花生白和えのカナッペ

きゅうりの糠漬けと落花生白和えのカナッペ
落花生と豆腐にはビタミンB1が豊富に含まれ、きゅうりは糠漬けにするとビタミンB群の含有量がグンとアップします。落花生・豆腐・きゅうりの糠漬け・小麦胚芽のクラッカーを一緒に取ると、豊富なビタミンB群がたんぱく質や脂質の代謝に働き、疲れが取れて元気が出てくる食べ合わせになります。豊富な食物繊維がコレステロール低下や便秘予防に働きます。

ウナギそば

ウナギそば
ウナギは内臓・皮膚・目などの粘膜を強化するビタミンAや、疲労回復に働くビタミンB1、老化を防止するビタミンEなどを豊富に含む食材です。ウナギとそばを一緒に取ると、そばのビタミンB1と一緒に疲労回復力が高まり、にんにくがその働きをさらに強化します。良質なたんぱく質・脂質・炭水化物の取れる栄養バランスのよい一品で、体力や免疫力、抗酸化力に優れています。

小豆と豆腐の「ざっつえ」

小豆と豆腐の「ざっつえ」
茨城県の郷土食で、特に不祝儀に振舞われた料理です。小豆は玄米に近いビタミン1を含有し、疲労回復に有効に働く食材です。小豆と木綿豆腐はともにマグネシウムを豊富に含んでおり、カルシウムの働きを調整して精神を安定させ、安眠にいざなってくれます。好みで煮詰めると、おかずや酒の肴にピッタリな一品になります。

木綿豆腐・チーズ・ツナのはさみ焼き

木綿豆腐・チーズ・ツナのはさみ焼き
カルシウムが豊富なチーズと、カルシウムの働きを調整するマグネシウムを含む木綿豆腐を一緒に取ると、精神が安定して安眠に有効な食べ合わせになります。ツナ缶のマグロにに含まれるビタミンB6はたんぱく質代謝に働き、エネルギー源となって疲労回復に働きます。良質なたんぱく質や脂質・ビタミンやミネラルがバランスよく取れ、免疫力強化や美肌にも有効です。青じそやパセリを添えてビタミンCを補います。

胚芽米と鮭のリゾット

胚芽米と鮭のリゾット
糖質の代謝を助ける胚芽米のビタミンB1、脂質と糖質の代謝を助けるチーズのビタミンB2、たんぱく質の代謝を助ける鮭のビタミンB6を組み合わせたリゾットは、疲れやすく体がだるい時に有効に働いてくれる食べ合わせです。米はわずかに芯を残すとおいしいので、洗わないで調理します。

カツオとチーズの生春巻き

カツオとチーズの生春巻き
ビタミンB1を含むカツオとビタミンB2を含むプロセスチーズは、疲れやすい体を元気にしてくれる食材です。青じそや白髪ねぎの硫化アリルがビタミンB群の吸収を高め、疲労回復力が高まります。米粉が主原料のライスペーパーは、ビタミンB群やクエン酸の働きで有効なエネルギーに変換され、体力を強化して疲労回復力をさらに高めます。梅干のクエン酸が食欲増進に働きます。

ゆで豚肉巻きのごまだれ風味

ゆで豚肉巻きのごまだれ風味
豚肉のビタミンB1は糖質を分解してエネルギーに換える働きに優れ、その働きはにらの硫化アリルによって高められるため、豚肉とにらは疲労感や倦怠感の回復に優れた食べ合わせです。にんじんのβ‐カロテンが胃の粘膜強化に働き食欲不振を防ぎます。ごまに含まれる豊富なビタミンB1が疲労回復力をさらに高めます。

キムチと揚げ夏野菜のだし汁和え

キムチと揚げ夏野菜のだし汁和え
抗酸化力の高いしし唐辛子のβ‐カロテン・なすのナスニン・トマトのリコピン、ビタミンCが豊富なパプリカに抗菌・抗酸化力の高いキムチを一緒に取ると、免疫力が強化され食欲が増進する食べ合わせになります。枝豆のビタミンB1はキムチの硫化アリルによって吸収率が高められ、夏の食欲不振を解消し疲労回復に働きます。

キムチの炊き込みご飯

キムチの炊き込みご飯
ロースハムや胚芽米は、疲労回復に効果の高いビタミンB1を豊富に含んでいる食材です。キムチに含まれるにんにく・にら・ねぎ類がビタミンB1の吸収を高め、疲労回復に効果を発揮します。干ししいたけのビタミンDがカルシウム吸収を高めるので、精神が安定し寝つきが悪い夏の夜に有効な一品となります。

キムチとゴーヤのピカタ

キムチとゴーヤのピカタ
唐辛子・にんにく・しょうが・にらなどを組み合わせて作るキムチは、抗菌性や血栓予防、疲労回復効果などに優れた発酵食品です。豚肉と一緒に食べ合わせると、豚肉のビタミンB1の吸収が高まり、疲労回復に効果を発揮します。ゴーヤの持つククルビタシンには抗がん作用があり、キムチやにんにくの働きと一緒に生活習慣病の予防に有効に働きます。