動脈硬化
動脈硬化とは
動脈硬化とは
動脈硬化は「血管の老化現象」です。動脈は血液を心臓から全身に送り届ける役目を担う血管で、非常にしなやかで血液が流れるたびに血管の太さを拡張・収縮しています。しかし、動脈は加齢とともに肥厚して硬くなり、さらに血管の内側の壁にコレステロールなどが沈着して血管内腔が狭くなっていきます。この状態が動脈硬化で、①細い血管がしなやかさを失って硬くなる「細動脈硬化症」、②コレステロールやトリグリセリドが沈着して血管内腔が狭くなる「アテローム硬化症」があります。
◎細動脈硬化症
血管壁の老化などに伴い動脈の弾力性がなくなって硬くなる症状。血管がしなやかさを失って硬くなっているので、高い血圧がかかると破裂しやすいので高血圧には注意が必要です。
◎アテローム硬化症
血液中の余分なコレステロールやトリグリセリドが血管壁に沈着してアテロームという黄色いドロドロした粥状の塊となり、血管内腔が狭くなって血流の流れが悪くなったり詰まったりする症状。近年の高脂肪の食生活により多く見られるようになった動脈硬化です。
動脈硬化は老人病?
誰しも加齢とともに進行する「血管の老化現象」なのである意味仕方のないことなのですが、生活習慣によって血管の老化現象は加速されることが分かっています。特にアテローム性動脈硬化症は食生活の改善や運動をすることによって予防することが可能です。動脈硬化は若い頃から始まり、40歳を過ぎる頃に症状が現れてきます。
動脈硬化を促進させる危険因子
「人間は血管とともに老いる」といわれているように、動脈硬化症は加齢に伴い進行していきますが、気をつけなければいけないのは進行を促進する危険因子です。その筆頭は「肥満」。まず肥満対策を行い、肥満が原因で引き起こされる以下の症状に注意しましょう。
脂質異常
多すぎる脂肪が血管壁にくっつき、ドロドロした塊となります。アテローム硬化症の成因となります。
高血圧
高血圧は常に血管壁に強い圧力がかかっている状態です。そのため血管は傷められており、血管が破裂することもあります。動脈硬化が進行して血管内腔が細くなると血圧はますます高くなります。
糖尿病
多すぎるブドウ糖が血管の細胞を傷つけます。血糖が高いとコレステロールや中性脂肪も高くなる傾向にあります。
動脈硬化症と疾病
動脈の硬化は、硬化する場所によって様々な疾病を引き起こします。
心臓の冠状動脈の硬化
「心筋梗塞」「狭心症」
脳動脈の硬化
「脳梗塞」「脳出血」「老人性痴呆症」
腎臓の硬化
「高血圧症」「腎硬化症」「腎不全」
女性よりも男性が多い
動脈硬化は女性よりも男性に多く見られます。これは女性ホルモンに動脈硬化の進行を抑える働きがあるからですが、閉経後には進行スピードが速まるので女性は注意が必要です。
動脈硬化になりやすいタイプ
- 肥満で、運動不足の人
- 塩分や糖分を取り過ぎる人
- ストレスを抱えている人
- タバコを吸う人
- 体質の遺伝を持っている人。家系に高血圧や脂質異常の多い人
タバコに注意
喫煙は血管を傷めます。血液中のコレステロールを酸化させ、HDLコレステロール濃度の低下につながり、動脈硬化を促進させていきます。血液も酸素不足になるため心筋梗塞や脳梗塞を誘発します。
食事で気をつけること
動脈硬化を予防する食生活は、肥満予防と同じく①食べ過ぎない(適正なエネルギーを取る) ②栄養素をバランスよく取る ことが大切です。その上で、以下の点に注意しましょう。
① 脂質やコレステロールを取り過ぎない
② 塩分を取り過ぎない
③ 糖質を取り過ぎない
④ 食物繊維・ビタミン・ミネラルを多く取る。野菜・海藻類・きのこ類を毎食取る
極端な肉食制限は注意
コレステロールの取り過ぎは様々な生活習慣病の要因になりますが、コレステロール不足は逆に血管を弱めます。血管が弱くなった所に高い圧力(高血圧)がかかると血管が破れ、脳出血などを引き起こします。丈夫な血管を作るためにもコレステロールを含んでいる肉類は適正に取ることが大切です。
動脈硬化症の目標値を出す「LH比」
コレステロールには悪玉コレステロール(LDL)と善玉コレステロール(HDL)と呼ばれるコレステロールがあります。LDLは血液の中で増えすぎると血管壁に沈着してアテロームとなり動脈硬化の原因となります。一方、HDLは余ったコレステロールを肝臓に戻す働きを持っており、LDLよりもHDLを増やせば動脈硬化の予防や改善を行うことが可能になります。動脈硬化症を調べる具体的な目標値として「LH比」があり、その数値が2.5を超えると動脈硬化が顕著に現れると判断されています。
◎LH比の出し方
悪玉値(LDL)を善玉値(HDL)で割ります。
動脈硬化を予防する栄養成分と食べ物
動脈硬化の成因は加齢と同時に、「高血圧や脂質異常などの生活習慣病」「肥満」「運動不足」などが深く係っています。肥満や糖尿病の予防と同様、食べ過ぎない(適正なエネルギーを取る)ことと体を動かすことが大切です。栄養バランスに注意し、ミネラルや食物繊維を十分取る食生活を心がけましょう。
たんぱく質
皮膚や筋肉、内臓、血液、毛髪など、体を構成する最も大切な成分で、体から水分を取り除いた残り重量の約1/2を占めており、血管内の脂肪をエネルギー源とする時に必要な成分です。健康維持や生活習慣病予防にも欠かせない成分で、良質なたんぱく質は魚類(特に背の青い赤身の魚)や豆類で取るようにしましょう。
たんぱく質を多く含む食品:
魚類(アジ、イワシ、サンマ、サバ、ブリ、マグロ、鮭など)、豆類、大豆食品など
オメガ3脂肪酸
体内のコレステロールを下げる働きのある不飽和脂肪酸はその構造から①オメガ3脂肪酸②オメガ6脂肪酸③オメガ9脂肪酸に分類され、その中で特にオメガ3脂肪酸は細胞が正しく機能するために不可欠な成分です。血液中の脂質濃度を下げる働きに優れています。
オメガ3脂肪酸を多く含む食品:
えごま油、亜麻仁油、しそ油、青魚、豆類、くるみ、緑黄色野菜など
ミネラル(無機質)
人間の体は元素で構成されています。構成されている元素のうち、炭素・酸素・窒素を除く元素の総称をミネラルと呼んでいます。たんぱく質・脂質・炭水化物のようにエネルギーにはなりませんが、体の生理機能を円滑にするために必要な栄養素です。カルシウム、鉄、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、リン、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、モリブデン、クロム、フッ素などがあります。健康維持・増進、疾病の予防に重要な働きをします。
カルシウムを多く含む食品:
ヘム鉄:レバー(豚、牛、鳥)、卵、ウナギ、シジミ、イワシ丸干しなど
マグネシウムを多く含む食品:
カシューナッツ、アーモンド、大豆、枝豆、干しヒジキ、木綿豆腐、昆布、納豆、小豆、ほうれん草など
ナトリウムを多く含む食品:
食塩、味噌、しょうゆ、佃煮など
カリウムを多く含む食品:
すいか、柿、じゃがいもなど
リンを多く含む食品:
粉乳、卵黄、魚介類、小魚、肉類、胚芽、ぬかなど
亜鉛を多く含む食品:
牡蠣、ウナギ、タラコ、ホタテ、レバー、ナチュナルチーズ、カシューナッツ、アーモンド、凍み豆腐、ごまなど
銅を多く含む食品:
レバー、ココア、チョコレート、スジコ、大豆、こしょう、ごま、カニ、エビなど
マンガンを多く含む食品:
玄米、大豆、納豆、アーモンド、干ししいたけ、干しヒジキ、キウイフルーツなど
ヨウ素を多く含む食品:
海藻類、海産類など
セレンを多く含む食品:
ウルメイワシ、干し桜エビ、ワカサギ、わらび、肉類(牛肉、ラム肉など)、煮干し、けずり節、ミルクチョコレートなど
モリブデンを多く含む食品:
豆類、干しワカメ、バナナなど
クロムを多く含む食品:
ヒジキ、マイワシ、和牛肉など
フッ素を多く含む食品:
飲料水、煮干し、抹茶など
食物繊維
体内で消化できないためエネルギー源にはなりませんが、「第6の栄養素」と呼ばれ、腸の活動を刺激して便通を整える、有害物質を排泄する、コレステロールや糖質の吸収を遅らせるなどの働きを持っています。血管壁のコレステロール沈着を防ぐ働きに優れているため、脂質異常予防に欠かせない成分です。野菜・海藻・きのこ類を毎食取るのがおススメです。野菜に含まれるβーカロテン・ビタミンCはLDLコレステロールの酸化変性を防ぐ働きを持っています。
食物繊維を多く含む食品:
水溶性の食物繊維:海藻(ワカメ、昆布、ヒジキ、モズクなど)、こんにゃく、マメ科の植物、きのこ、果物など
不溶性の食物繊維:穀類、野菜、豆類、きのこ類、エビやカニの表皮など
ビタミンC
抗酸化性を有する水溶性のビタミンで、アスコルビン酸とも呼ばれ、多岐にわたる生理作用を持っています。血管・皮膚・粘膜・骨を強くし、免疫活動の主力である白血球の働きを強化します。
ビタミンCを多く含む食品:
野菜(ブロッコリー、水菜、れんこん、さつまいも、菜の花、赤ピーマン、パセリなど)、くだもの(いちご、みかん、柿、キウイフルーツなど)、海苔、ゆず、せん茶、など
ルチン
水溶性のビタミン様物質で、強力な抗酸化作用を持つポリフェノールのフラボノイド系に属する成分です。ビタミンCの働きを増強し、毛細血管を強化し、毛血圧の降下作用を持ち動脈硬化の予防に有効に働きます。
ルチンを多く含む食品:
そば(特に外皮に多い)、アスパラガス、ほうれん草、レバー、小麦胚芽、無精製の穀類、いちじく、ケール、トマト、レモンなど
動脈硬化を予防するレシピ
良質なたんぱく質・ミネラル・ビタミンを豊富に取り入れ、栄養バランスに気をつけましょう。「海藻」「きのこ」「こんにゃく」「大豆製品」「野菜」「魚介」「くだもの」などがおススメです。