はるじおん
はるじおん(春紫苑)とは
観賞用として渡来した帰化植物
はるじおんはキク科ムカシヨモギ属の多年草で、学名はErigeron philadelphicus。北アメリカ原産の帰化植物で、大正時代に観賞用として渡来したものが野生化し、日本各地の牧草地や畑地、道端などに広がったと考えられています。草丈30~60cmほどになり、茎は中空(真ん中に穴が開いている)で、茎葉に柄はなく、根生葉は長い楕円形あるいはへら形の葉が放射状に何枚かつき、基部は茎を抱くようにつきます。4~7月頃に白色から淡紅色の舌状花を咲かせ、蕾がうな垂れる特徴があります。温帯から熱帯の気候を好み、秋に芽生えて、ロゼット葉(放射状に地際に伸ばした葉)で冬を越します。
「貧乏草」とも呼ばれるはるじおん
はるじおんは花が夏の終わりから秋に咲く野菊の仲間であるしおん(紫苑)に似ていることと、春に咲くことから「はるじおん(春紫苑)」と命名されたと伝えられています。花言葉は「追想の愛」ですが、 手を加えない庭にも簡単に育つことから、別名「貧乏草(びんぼうぐさ)」、また、鉄道沿線に沿って繁殖するため「鉄道草(てつどうぐさ)」、花の形から「ごいしぐさ」などの名称でも呼ばれています。
ともに帰化植物でよく似た花が咲く
はるじおんとひめじょおん(姫女苑)は同属で、ともに北アメリカからの帰化植物で、よく似た花を咲かせます。そのため、はるじおんを「はるじょおん」と呼ぶこともありますが、正しくは「はるじおん」です。
はるじおんとひめじょおんの違い
双方の違いは、はるじおんが早春から花をつけるのに対して、ひめじょおんは春の終わりごろから咲き始め秋口まで花を咲かせます。また、①はるじおんの茎は中空であるのに対して、ひめじょおんの茎は中実(スポンジ状の髄が詰まっている) ②はるじおんの蕾はうつむき加減に対して、ひめじょおんは上向きにつく ③はるじおんの花茎はあまり枝分かれしないが、ひめじょおんの花茎は丈夫で大きく枝分かれする、などの相違点があり、区別は容易につきます。
要注意外来生物
はるじおんとひめじょおんはともに観賞用として渡来した植物です。窒素分の多い土壌を好んで旺盛な繁殖力で生育したため、現在では農作物や牧草の生育を妨害する厄介な雑草とされています。要注意外来生物に指定され、日本生態学会の「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定されています。園芸種としてもてはやされ、希少価値がなくなると捨てられ野生化した帰化植物は多く、それらは「園芸逸出」と呼ばれています。
はるじおん(春紫苑)に含まれる主な成分
はるじおんは大正時代に観賞用として渡来した植物で、その後、旺盛な生命力で日本各地に繁殖していった野草です。現在では農作物や牧草の生育を妨害する厄介な雑草とされていますが、優れた薬効を含有している野草です。
利尿剤や結石の除去、糖尿病やむくみを取る効能を持つ
はるじおんの原産地である北アメリカでは、全草を乾燥させたものを煎じて、利尿剤や結石の除去に用いられています。一方、日本では糖尿病の予防やむくみを取る漢方薬として利用されています。葉は随時採取可能ですが、花が咲き始めると苦みや香りが強くなります。
抗酸化作用に優れるトリテルペノイド
はるじおんに含まれるトリテルペノイドは高麗人参やきのこ類などに含まれる成分です。テルペンの一種で、総じて、抗がん作用、抗炎症作用、抗酸化作用、抗アレルギー効果があり、脂肪やコレステロールなどの分解を促進する抗高脂血症の効果も報告されています。
悪玉コレステロール低下に働く植物性ステロール
はるじおんに含まれる植物性ステロールは、広く植物に含まれている成分で、ファイトケミカル(※)の一種です。脂質の一種「植物の細胞膜構成成分」で、同じ脂質のコレステロールが体内に吸収されるのに対して、植物性ステロールは体内にほとんど吸収されません。臨床研究による総合効果では、「悪玉コレステロールを低下させ、反作用や副作用は確認されていない」「コレステロール値が高い人ほど効果がある」と言われています(推奨:アメリカ国立衛生研究所付属の国立心肺血液研究所)。
(※)ファイトケミカル:ファイトとはギリシャ語の「植物(ファイト=Phyto)」、ケミカル=化学で、「植物の持つ化学的な物質」の意味に訳される。果物や野菜に含まれる、栄養素以外の成分(非栄養素=機能性成分)で、動けない植物が、太陽の有害物質や外敵から自分の身を守るために自ら産出する物質で、私たちの体に入ると抗酸化力を発揮する。その抗酸化力は、体を酸化させる活性酸素(フリーラジカル)を無毒化して細胞を守り、酸化によって引き起こされるがんや老化を防ぐ効力を持っている。
光合成に欠かせないクロロフィル(葉緑素)が健康維持に働く
クロロフィルは葉緑素とも呼ばれる緑色をした色素で、植物の葉が緑色なのはクロロフィルを含有しているからです。クロロフィルの分子構造は血液に類似しているため「植物の血液」とも呼ばれています。「増血や血液をキレイにする」「肝臓の強化」「損傷を受けた組織の修復」などの働きを持ち、私たちの健康維持に働き、光合成に欠かせない成分です。
※光合成:動けない植物が必要な栄養分(炭水化物)を自分の体の中で作る仕組み。太陽光・空気中の二酸化炭素・根から吸い上げた水を使って、葉緑体の中で栄養成分を作り出し、水を分解する過程でできる酸素は外に排出する。
三大栄養素の代謝に働くビタミンB群
たんぱく質、炭水化物、脂肪の代謝に働くビタミンB群はお互いに助け合いながら機能するため、一緒に取ることが望ましく、特定のビタミンBのみの大量摂取は、他のビタミンB群の欠乏を引き起こすことが指摘されています。ビタミンB群には「B1」「B2」「ナイアシン」「パントテン酸」「B6」「B12」、ビタミン様に働く「ビオチン」「コリン」などがあり、広く動植物性食品に含まれています。疲労回復、生長促進、皮膚の健康、血糖値低下などに働き、エネルギーを作るのに欠かせない成分です。
はるじおん(春紫苑)のゆで方
食用としては、若芽はやわらかいので、適時採取して、塩を入れた熱湯で軽くゆでてから、水にさらしてアク抜きをしてから調理します。
はるじおんのゆで方
- はるじおんは根元からナイフなどで切り取り、よく洗い、水気をきる。
- 鍋にたっぷりの湯を沸騰させ、塩少々を加え、水気をきったはるじおんを入れ、さっとゆでる。
- ゆであがったらすぐに水に放し、水気をきる。
はるじおんレシピ
帰化植物としてまだまだ日の浅いはるじおんですが、やわらかい若芽は食用として好まれています。適時に採取したはるじおんは、天ぷらならそのまま、おひたしや佃煮などに利用する場合は、塩少々を入れた熱湯でさっとゆでてから水にさらします。ファイトケミカルに溢れたはるじおんは、良質なたんぱく質や脂質、炭水化物などと一緒に食べ合わせると、免疫力を高めて健康維持に働く健康食となります。