おおばこ

おおばこ(大葉子)とは

おおばこ

糊のような粘液で種子が運ばれる

おおばこはオオバコ科オオバコ属の多年草で、アジア全域に分布し、山野の道端や空き地、畑など日本各地にみられる代表的な野草です。オオバコ科の植物は世界中で200種ほどあり、現在日本で生息するオオバコ類は18種といわれています。高さ10~15cmほどに生長し、葉は卵形あるいは楕円形。5~10月の長期にわたり花を咲かせ、果実は紡錘形で種子は2mmほどの扁平倒卵形で、1つの果実に4~6個の種子が入っています。丈夫な維管束(いかんそく)を持ち、水を吸収すると種子は糊のような粘着力を持ちます。この粘液が人の靴・車のタイヤ・動物の足などを介して種子を運び、人の多く歩く場所に広がり繁殖していきます。

おおばこの名の由来

「おおばこ=大葉子」の名は葉が広く大きいことに由来し、別名「かえるっぱ」「かえるば」の由来は、その高い繁殖力や生命力から死んだカエルの上におおばこを被せる(あるいは葉で包む)と生き返るとの言い伝えからきています(おおばこの葉を火で炙ると膨らみ、その姿がカエルのお腹に似ているという説もあります)。また、花の茎をからませて引っ張り合う子どもの遊び道具だったことから「すもとりばな=相撲取り花」、その他「おんばこ」「うさぎっぱ」「みちぼうき」など様々な名で呼ばれています。学名のplantago asiaticaは、ラテン語の「足の裏(planta)」、「運ぶ(ago)」、「アジア(asiatica)」が組み合わさった言葉で、おおばこの種子が人の靴裏(あるいは車の車輪)にくっついて繁殖していく様から生まれた造語です。

生薬名は全草が「車前草」、葉が「車前葉」、種が「車前子」

おおばこは薬草として有名です。中医学では「勁草(けいそう)=強い草という意味」と呼び、繁殖力の強い貴重な薬草とされ、漢の時代にすでにその名が登場しています。乾燥させた全草の生薬名は「車前草(しゃぜんそう)」、葉だけを乾燥させたものは「車前葉(しゃぜんよう)」、種を乾燥させたものは「車前子(しゃぜんし)」と呼ばれ、「車前」は車の轍の前に育つという意味です。おおばこは丈夫な維管束が発達しているため踏みつけに強く、車が通るような路傍にもしっかり根をはって増えることからこのように呼ばれています。「車前草」「車前葉」「車前種」はともに日本薬局方に収録されている生薬で、民間薬として健胃、胃腸病、心臓病、腎臓病、婦人病、頭痛、ストレス、ぜんそく、利尿などに利用されてきた長い歴史を持っています。
※生薬:天然に存在する薬効を持つ産物から、有効成分を生成することなく体質改善を目的として利用する薬の総称。
※日本薬局方:薬事法第41条により、日本国内の医療に供する医薬品の性状及び品質を定めた基準。厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める。

煮含めのできる数少ない野草

おおばこは数多くある野草の中で、煮含めのできる数少ない野草です。暖かい地域ならば一年中新しい葉を摘み取ることができ、日常の料理食材として活躍してくれます。新芽や葉茎の生長期は3~8月で、生長したものは芯に近い葉を摘むようにします。俳句では「車前草の花」は夏の季語となっています。

ダイエット食品としても利用されている

おおばこに含まれる水溶性の食物繊維は水に溶けるとドロドロのゼリー状になり、約30~50倍に膨れ上がるといわれています。満腹感が得られることから「サイリウム」という名のダイエット食品として市場に出回っています。水溶性の食物繊維は糖質の吸収を緩やかにし、脂質の吸収を予防する働きがあるため、血糖値の急上昇やコレステロール低下、整腸作用などが期待できます。

おおばこに含まれる主な成分

おおばこ

おおばこは全草に有効成分を含んでいる薬草です。マンガン、コリン、プランタギニン、アウクビン、ビタミンA、C、Kなどのビタミン類やポリフェノールのタンニン、葉には葉緑素が含まれています。

マンガンが骨の発育に働く

おおばこの葉や茎に含まれるマンガンは15種類あるミネラルの一つで、骨の生成や石灰化に必要な成分で、骨の発育に働きます。さらに補酵素として体内の酵素を助けて活性化し、悪性貧血の予防に働くビタミンB12の原料にもなるミネラルです。イライラを減少し精神安定にも有効です。マンガンは1774年、スウェーデンのカール・ヴィルヘルム・シェーレによって発見され、ヨハン・ゴットリーブ・ガーンによって単体の単離に成功したミネラルです。ヒトの体に約20g含有され、その1/4は骨の中に含まれ、そのため不足すると骨の発育不十分や傷の治りが遅いなどの症状が引き起こされます。

肝臓の脂肪沈着予防や血圧低下に働くコリン

おおばこに含まれるコリンは、水溶性のビタミン様物質の一つで、体内ではほとんど合成することができないリン脂質の一種です。特に種子に多く含まれ、肝臓への脂肪の沈着を予防し、血管を拡張させて血圧を下げるアセチルコリンとして神経伝達を促し、血圧低下に働きます。

喘息や咳止めに働くプランタギニン

プランタギニンは代表的なポリフェノールであるフラボノイドの一種です。フラボノイドは植物に含まれる淡黄色の色素成分で、高い抗酸化作用を持っています。おおばこに含まれるプランタギニンは呼吸中枢神経に作用して、喘息や咳止めなどに働きます。また気管支の粘膜液や消化液の分泌を促す働きもあるため、消化器系の潰瘍予防にも有効です。抗ウイルス作用、抗菌作用、利尿作用、発汗作用などがあり、鎮咳効果にも優れています。

アウクビンが神経保護・抗壊疽・抗炎症・抗菌に働く

アウクビンはおおばこやアオキに多く含まれている成分です。アルカロイドとも呼ばれ、「アルカリのようなもの」の意が語源となっています。薬用植物の主成分であることも多く、神経保護・抗壊疽・抗炎症・抗菌などの作用を持ち、高い鎮咳効果が報告されています。同時にカフェインやコカイン、モルヒネなどもあり、有益であると同時に有害(植物毒)にも働くので、多量に偏った摂取には注意が必要です。

タンニンはたんぱく質と結合して抗酸化力を発揮する

タンニンはフラボノイドの一種で、強い渋みを持つ水溶性の化合物です。舌や口腔粘膜のたんぱく質と結合する(収れん作用という)と、解毒作用や殺菌・抗酸化、虫歯予防や消臭、下痢を止めるなどに働きます。語源は「皮をなめす」という意味の「tan」に由来しています。

光合成に欠かせないクロロフィル(葉緑素)が健康維持に働く

クロロフィルは葉緑素とも呼ばれる緑色をした色素で、どくだみの葉が緑色なのはクロロフィルを含有しているからです。クロロフィルの分子構造は血液に類似しているため「植物の血液」とも呼ばれています。「増血や血液をキレイにする」「肝臓の強化」「損傷を受けた組織の修復」などの働きを持ち、私たちの健康維持に働き、光合成に欠かせない成分です。
※光合成:動けない植物が必要な栄養分(炭水化物)を自分の体の中で作る仕組み。太陽光・空気中の二酸化炭素・根から吸い上げた水を使って、葉緑体の中で栄養成分を作り出し、水を分解する過程でできる酸素は外に排出する。

おおばこのゆで方

おおばこは煮含めできる野草ですが、天ぷら以外に利用する時は、下処理すると使いやすく、美味しくなります。

おおばこのゆで方

  1. 採取したおおばこ(芯に近い葉を摘む)はよく洗い、水気をきる。
    おおばこのゆで方
  2. 鍋にたっぷりの湯を沸騰させ、塩少々を加え、水気をきったおおばこを数十秒ゆでる。
    おおばこのゆで方
  3. ゆであがったらすぐに水に放す。水気をきる。
    おおばこのゆで方

おおばこレシピ

おおばこは煮含めできる数少ない野草です。湯がいて水にさらすという下処理をしておけば、手軽に様ざまな料理に利用することができます。天ぷらならもちろん下処理は必要ありませんが、加熱すると膨らむので、天ぷらにする時は葉に必ず包丁で切れ目を入れてください。野草の特徴は体の生理機能を整える成分が豊富に含まれていることです。が一方、薬は取り過ぎると毒にもなるものですから、単独での多量摂取は避けましょう。たんぱく質・脂質・炭水化物などと食べ合わせ、バランスのよい健康食を作ってみましょう。

おおばこと豚ひき肉のきゅうり蒸し

おおばこと豚ひき肉のきゅうり蒸し
豚肉は肉類の中でもっともアミノ酸バランスに優れたたんぱく質を持ち、ビタミンB1含有の高い食材です。ビタミンB1は別名「疲労回復のビタミン」と呼ばれるように、糖質をエネルギーに換え、体や脳をスムーズにする働きを持っています。きゅうりは約94%が水分ですが、この水分には特有の成分が含まれており、体内の熱を冷まして代謝機能を整え、炎症を取り除き、利尿作用などに働きます。おおばこ・きゅうり・豚肉を一緒に取ると、利尿作用が高まり、体力強化や高血圧予防に有効な食べ合わせになります。

おおばことじゃがいものカレー煮

おおばことじゃがいものカレー煮
おおばこは含め煮にできる数少ない野草です。じゃがいもやにんじん、なすと一緒に食べ合わせると、カロテンやナスニンなどの高い抗酸化力・カリウム・食物繊維が豊富に取れ、免疫力が強化され、高血圧や脂質異常などの生活習慣病の予防に働きます。カレー粉の代表的なターメリックやチリパウダーなどの香辛料には発汗・健胃・抗酸化作用・殺菌作用などがあり、おおばこや野菜と一緒に取ると、高い抗酸化力が細胞の酸化予防に働き、免疫力が高まる一品になります。

おおばこと鶏ササミのかき揚げ

おおばこと鶏ササミのかき揚げ
鶏肉は淡泊でやわらかく消化に優れた食材です。豊富に含まれるたんぱく質には特にメチオニンが多く含まれ、肝臓に脂肪が溜まる脂肪肝の予防に優れています。また、脂質はコレステロール低下に働く不飽和脂肪酸を多く含み、水分代謝作用にも優れています。おおばこと一緒に取ると、おおばこの肝臓への脂肪沈着を予防するコリンの働きと一緒に脂肪肝の予防に有効な食べ合わせになります。ホールコーンやたまねぎの食物繊維と一緒にコレステロール低下や整腸作用にも働きます。

おおばこと小豆の梅干し粥

おおばこと小豆の梅干し粥
小豆はビタミンB1と食物繊維を豊富に含んでいる豆です。主成分は糖質とたんぱく質でカリウムとサポニン含有にも優れ、疲労回復や利尿作用を発揮します。小豆はおおばこのコリンや食物繊維の働きと一緒に高血圧や糖尿病予防に有効な食べ合わせになります。梅干しとおおばこの有機酸は胃の中で胃酸の役割を果たして食欲を増進させ、胃腸の働きを整えます。豆と米を一緒に取るとアミノ酸バランスが満点の食べ合わせになります。

おおばこと黒豆のサフランライス

おおばこと黒豆のサフランライス
黒豆は「畑の肉」と呼ばれる大豆です。黒い色はアントシアニンというポリフェノールの一種の水溶性の色素で、強い抗酸化作用を持っています。サフランはアヤメ科サフラン属の植物で旧約聖書では「芳香を放つハーブ」と記され、日本では更年期障害や月経困難などの婦人病や、ヒステリーやうつ病などの漢方薬として利用されています。おおばこの葉にはイライラ予防に働くマンガンや血圧低下や肝臓中の脂肪排泄に働くコリンが含まれており、黒豆やサフランと一緒に取ると、精神安定・高血圧や脂肪肝の予防などに優れた食べ合わせになります。