イワシの粟和え(イワシの粟漬け)

イワシの粟和え(イワシの粟漬け)

庭に植えたゆずが黄色に冴える頃に作られるイワシの粟和えは、ゆずの香りと酸味を生かした山口県の郷土料理です。粟漬けは五穀豊穣や出世を願う縁起物として各地で作られ、魚は酢漬けにしたイワシやコノシロなどの表面が青白く光ったものが使われます。蒸して冷ました粟と酢漬けの魚を交互に重ねて押しをかけた粟和えは、年末からお正月にかけて作られ、約1ヶ月保存が可能です。

煮いも(いも煮)

煮いも(いも煮)

「いも煮」とも呼ばれる煮いもは、島根県津和野の郷土料理です。津和野は昔から里芋の生産地で、特に山麓笹山地区で生産される里芋は、土壌が火山灰土質で培われているため、きめが細かくて腰があり淡白な味で有名です。煮いもは秋の収穫後や、紅葉狩り、秋祭りなどに作られ、「煮いもをやろうか」というのは、親しい人の集まりの代名詞に使われています。初秋になると店頭に煮いも用の「あぶり鯛」が並び、秋の訪れを実感させる風物詩ともなっています。

船場汁

船場汁

船場汁は、商人の町、大阪船場で生まれたサバのアラで作る汁物です。船場の商家では丸ごとの新鮮なサバを買い求め、身の部分は主人とその家族が食べ、使用人は残ったアラでだしを取り、大根を加えて汁物を作り食していたと伝えられています。残り物ですが船場汁は体の温まる栄養価の高い汁物です。使用人の日常食はアラを使った船場汁など、残り物を利用した料理が多かったのですが、月の1日と15日の夕食にはサバやイワシなどの青魚を食べたといわれています。船場汁はうまい・安い・栄養があるという大阪生まれの合理的な料理です。

さといも赤飯

さといも赤飯

さといもを一緒に炊き込む「さといも赤飯」は、福井県奥越地方の郷土料理です。奥越の農家では、春祭り、お月見、秋祭り、彼岸などにさといも赤飯を作り、嫁いだ娘や親戚一同に届け、絆をより強くしていったと伝えられています。奥越のさといもは、独特の甘みと歯ごたえを持ち、江戸時代から特産物として栽培され、また子いもや孫いもがたくさんつくことから、子孫繁栄の縁起物として今なお重宝されています。

イリコのだんご汁

イリコのだんご汁

うまみがよく出るイリコで作るだんご汁は、広島県の郷土料理です。瀬戸内海で秋に収穫されるイリコは小型ですがうまみがよく出るため、だし汁に最適で、だんご汁は朝食によく作られていました。地域によって使われる野菜も異なり、調味料も白味噌やしょう油仕立てと多様です。イリコは、かつては貴重な食材であり、だしの出た後のイリコは取り出さずにそのまま食べ、貴重なカルシウム源としての役割を担っていました。米、小麦、そばなどで作られるだんご汁は日本全国にある郷土料理で、穀類を団子にすることで無駄なく食べ切る知恵が生み出した料理です。

ののこ飯

ののこ飯

ののこ飯は鳥取県米子市の郷土料理です。油揚げに米と具を混ぜて詰めたものを調味しただし汁で炊く料理で、その昔、農家や漁師のお弁当として食べられていました。炊き上がった油揚げが、綿入れの「布子(ぬのこ)」に似ていることから、「ぬのこ」がなまって「ののこ」になったのが、名の由来といわれています。三角に切った油揚げで炊き上げたものは、出来上がりの姿が大山(だいせん)の姿に似ていることから、「いただき」とも呼ばれています。

目張りずし

目張りずし

大きなおにぎりを高菜漬けで包んで作る目張りずしは、和歌山県熊野地方の郷土料理です。「食べるときに目を見張るほど大きな口を開けて食べる」「目を見張るほどおいしい」といわれることが、その名の由来といわれています。元々は山仕事や畑仕事の合間に食べるお弁当として作られ、戦前までは「高菜の握り」と呼ばれていました。高菜漬けは各地にありますが、熊野地方のものは味が自慢です。

おきりこみ(御切り込み)

おきりこみ(御切り込み)

手打ちのぶつ切りうどんを直接煮汁で煮る料理がおきりこみで、麺を茹でる時間も惜しい農家で作り始めたと伝えられている群馬県を代表する郷土料理です。特に身体を心から温めてくれるこの郷土料理は、寒い冬に欠かすことができないお袋の味と言われ、うどんが手打ちであった群馬県では、うどんが上手に打てれば一人前の嫁といわれたと伝えられています。 おきりこみの麺には塩を入れないで作り、煮込まれる麺から出るトロミがおきりこみ独特の味です。切り込み、おっきりこみなどとも呼ばれています

山形だし

山形だし

夏野菜や香味野菜を細かく切り、よく冷やしてからしょう油に馴染ませて作る「だし」は、山形県の夏の郷土料理です。忙しい農繁期の火を使わないスピード料理であり、食欲の落ちる夏場の食欲増進料理。山形県では毎日食べても飽きないといわれ、ごはんにかけたり、豆腐、そばやそうめんの薬味などに使われ、夏の食卓に欠かせない一品です。地域や家庭によって様々なバリエーションがありますが、よく冷やして清涼感を楽しむ夏ならではの一品です。

高菜寿司

高菜寿司

高菜漬けは、カラシナの一品種で辛みがあり繊維のしっかりした高菜を漬けたものです。高菜は鰹菜(かつおな)、青菜(せいさい)など種類が多く、多肉性高菜は特に九州に普及し、特有の辛みを生かして漬け物にされます。特有の辛みが食欲不振の季節にピッタリで、油炒めやおにぎりなどに用いられます。にぎり飯を高菜漬けで包んだ目張り鮨は紀伊半島一帯の郷土料理で、木こりが山仕事に行くときに持参したといわれています。