がん

がんとは

がんとは

がんは体にできる悪性の腫瘍の総称です。体を構成する細胞が何らかの原因で新しい異常を生み出し、その異常の勢いが強く他の細胞に飛び火(転移という)するため、悪性新生物といわれています。大きく分けると①がん腫(胃がん・肺がん・大腸がん・子宮がん・乳がん・皮膚がんなど)②肉腫(骨肉腫・筋肉腫・リンパ腫など)③白血病の3つに大別され、1981年から日本人の死因のトップになり、現在に至っています。2020年の新規がん患者数は、83万8千人(男性=50万1千人 女性=33万7千人)と推計(ガン研究振興財団)されています。

日本のがん死亡率

2009年にがんで死亡した人は約34万4千人で、男性は女性の約1.5倍です。部位別の死亡率は男性では①肺②胃③肝臓、女性では①肺②胃③結腸となっています。ただし結腸と直腸を合わせた大腸がんは、男性では3位、女性では1位。女性では乳がんよりも大腸がんが急増しています。

WCRFとAICRが発表した「食物関連要因とがんとの関連」の評価報告

2007年、WCRF(世界がん研究基金)とAICR(米国がん研究協会)が報告書「食物・栄養・身体活動とがん予防」を10年ぶりに改訂し発表しました。
「確実にリスクを下げる」「リスクを下げる可能性が高い」「確実にリスクを上げる」「リスクを上げる可能性が高い」に分類され、考えられる関連要因と関連するがんの種類は以下のようになっています。

●確実にリスクを下げる

食物関連要因関連するがんの種類
運動結腸がん
授乳乳がん

●リスクを下げる可能性が高い

食物関連要因関連するがんの種類
肥満乳がん(閉経前)
運動乳がん(閉経後)、子宮体部がん
果物口腔・咽頭、喉頭がん、食道がん、胃がん、肺がん
非でんぷん野菜口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、胃がん
アリウム野菜胃がん
にんにく大腸がん
食物繊維大腸がん
牛乳大腸がん
カルシウムのサプリメント大腸がん
食物に含まれる葉酸膵臓がん
食物に含まれるカロテノイド口腔・咽頭・喉頭がん、肺がん
食物に含まれるβーカロテン食道がん
食物に含まれるビタミンC食道がん
食物に含まれるリコピン前立腺がん
食物に含まれるセレン前立腺がん
セレニウムのサプリメント前立腺がん

●確実にリスクを上げる

食物関連要因関連するがんの種類
肥満食道がん(腺癌)、大腸がん、乳がん(閉経後)、子宮体部がん、腎臓がん、すい臓がん
内臓脂肪大腸がん
高身長大腸がん、乳がん(閉経後)
赤肉・加工肉大腸がん
アルコール口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、大腸がん(男性)、乳がん
アフラトキシン肝臓がん
飲料水中の砒素肺がん
βーカロテンのサプリメント肺がん

●リスクを上げる可能性が高い

食物関連要因関連するがんの種類
肥満胆嚢がん
内臓脂肪膵臓がん、乳がん<閉経後>、子宮体部がん
成人期の体重増加乳がん<閉経後>
出生時過体重乳がん<閉経前>
高身長膵臓がん、乳がん<閉経前>、卵巣がん
アルコール肝臓がん、大腸がん(女性)
塩蔵食品・塩分胃がん
中国式塩蔵魚鼻咽頭がん
飲料水中の砒素皮膚がん
マテ茶食道がん
食事からのカルシウム前立腺がん

WHOが提案している「がん予防のための食事指針」

WHOは、精度が高い科学的証拠によって「確実」あるいは「可能性の高い」と評価された要因に基づき、以下の「がん予防のための食事指針」を提案しています。
① 成人期での体重維持
② 定期的な運動の継続
③ 飲酒はしない
④ 中国式塩蔵魚の摂取や塩蔵食品・食塩の摂取は控えめにする
⑤ アフラトキシンの摂取を最小限にする
⑥ 野菜・果物を少なくとも1日400gとる
⑦ ソーセージやサラミなどの加工肉の摂取は控えめにする
⑧ 飲食物を熱い状態でとらない

WCRF/AICRが提案している「がん予防のための食事指針」

WCRF(世界がん研究基金)とAICR(米国がん研究協会)は、2007年に行った評価に基づいて、以下のようながん予防のための食事指針を提案しています。
① 肥満度について:正常な体重の範囲でできるだけやせる
② 身体活動について:日常生活の中で活動的になる
③ 体重を増やす飲食物について:高カロリー食品や甘い飲み物を制限する
④ 植物性の食事について:植物からできた食品を中心にとる
⑤ 動物性の食事について:赤肉(牛、豚、羊などの肉)を制限し、加工肉(ソーセージ、サラミ、ベーコン、ハムなど)を避ける
⑥ アルコール飲料について:飲酒を制限する
⑦ 保存・加工・調理について:塩を制限し、カビのはえた穀物や豆類を避ける
⑧ サプリメントについて:食事だけで必要な栄養がとれるようにする
●特定の人に向けて、次の2項目の指針を示しています
① 授乳期の女性に:母は授乳し、子には母乳を飲ませる
② がんになった人に:がん予防のための食生活のアドバイスに従う。

日本人のためのがん予防法

「現状において日本人に推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法」として、以下6項目が発表されています。これは欧米の研究に基づく情報の場合、日本人では罹りやすいがんの種類が違ったり、また肥満も欧米に比べて割合が低いなどの特徴があり、リスクやその意味合いが変わる可能性があるためです。この6項目は日本人を対象とした研究に基づいた科学的根拠の明らかなものであり、総合的な判断のもとに設定されたものです。

喫煙:タバコは吸わない。受動喫煙をできるだけ避ける。喫煙はがんや循環器疾患をはじめとする疾患のリスクを上げることがよく知られている
飲酒:適量を守り、飲まない人や飲めない人に無理強いしない。適量は1日当たりアルコール量に換算して約23g程度まで(日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、焼酎や泡盛なら1合の2/3、ウイスキーやブランデーならダブル1杯、ワインならボトル1/3程度)。「健康日本21」では約20g程度としている。
食事:偏らず、バランスのよい食事をとり、特に以下3点を留意する
○塩蔵食品、食塩の摂取は最小限にする。食塩摂取量は1日当たり男性9g、女性7.5g未満。高塩分食品(塩辛、練りウニなど)は週1回以内に控える
○野菜や果物不足にならない。1日400gを取る(400gの目安は野菜小鉢5皿、果物1皿)
○飲食物を熱い状態でとらない。食道の炎症やがんを引き起こす可能性がある
身体活動:日常生活を活動的に過ごす。身体活動が高いとがんのみならず心疾患の死亡リスクも低くなる
体形:成人期での適正な体重を維持する(肥り過ぎない・痩せすぎない)。体重管理の目標として、中高年期男性のBMIは21~27、中高年期女性のBMIは19~25の範囲内にするようにする
感染:肝炎ウイルス感染の有無を知り、感染している場合はその治療措置を取る

確実にがんを予防できる単一の食品や栄養素はない

この食品、この栄養素だけを摂取すれば確実にがんを予防できるというものは現在の所分かっていません。逆に単一の食品や栄養素だけを取ることで全体の栄養バランスが崩れることが考えられるので気をつけましょう。

肥満と日本人のがんとの関係

肥満とがんとの関係は、欧米に比べて日本人においてはそれほど強い関係がないことが示されています。逆に「痩せすぎ」による栄養不足が免疫力の低下につながり、様々な感染症や脳出血などを起こしやすいことが指摘されています。

食習慣で気をつけること

① 野菜を多く取る
② 塩分を取り過ぎない
③ 赤肉(牛・豚・羊。鶏肉は含まれない)は1週間に500gを超えないようにする。大腸がんのリスクが高まる。
④ 加工肉(ハム・ソーセージ・ベーコンなど)はできるだけ取らない。大腸がんのリスクが高まる
⑤ 食物繊維を取る
⑥ チーズなどの乳製品も適量取る
⑦ 規則正しい食事時間を守る
⑧ 熱すぎるものを取らない
⑨ 飲酒は適量を守る
⑩ 同じ食べ物を毎日大量に食べない。バランスのよい食事をする
⑪ 肉や魚の焦げた部分を食べない

がんを予防する栄養成分と食べ物

がんは日常の食生活と密接な関係を持ち、要因の1/3は食べ物に関係しているといわれています。健康維持に大切な栄養バランスに優れた食生活を基本とし、発がん性物質を避け、細胞の酸化を防いで免疫力を高める抗酸化成分を積極的に取ることが大切です。特に細胞の酸化を予防するSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)という体内にある活性酸素除去酵素は40歳をピークに減少していきますので、年齢に応じて高い抗酸化力を持つ成分を取ることが大切です。ビタミンA、ビタミンC、ファイトケミカル、食物繊維を十分に取る食生活を心がけましょう。

ビタミンA・カロテン(α、β、γカロテン、クリプトキサン)

皮膚や粘膜を健康に保ち、眼に栄養を与える栄養素。ビタミンAは動物のみに存在し、カロテンは動・植物中に存在します。ビタミンAはそのまま体内に吸収されますが、カロテンは体内でビタミンAの働きをし、カロテンの中でもβ―カロテンが一番強くビタミンA作用に働きます。カロテンは全種抗酸化力が強く、発がん抑制作用を持っています。カロテンは脂溶性のため、油を使った料理法にすると吸収率が高まります。

ビタミンAを多く含む食品:
肝油、バター、牛乳、チーズ、卵黄、緑黄色野菜(にんじん、かぼちゃ、さつまいも、春菊、ほうれん草、チンゲン菜、にらなど)、果物(プルーン、びわ、あんずなど)、魚介類(ウナギ、アナゴ、アコウダイ、イワシ、ホタルイカなど)など

ビタミンC

抗酸化性を有する水溶性のビタミンで、アスコルビン酸とも呼ばれ、多岐にわたる生理作用を持っています。血管・皮膚・粘膜・骨を強くし、免疫活動の主力である白血球の働きを強化します。胃がんの原因のひとつとされる発がん性物質ニトロソアミンの生成を抑制する働きを持ち、インターフェロンの生成を促進し、細胞に強力なコラーゲンの膜を張ってがん予防に働きます。抗がん作用、抗ウイルス作用に優れた栄養素です。加熱に弱く水溶性なので、加熱は短時間にし、汁ごと摂取するなどに気をつけて無駄なく取り入れるようにしましょう。

ビタミンCを多く含む食品:
野菜(ブロッコリー、水菜、れんこん、さつまいも、菜の花、赤ピーマン、パセリ、冬場のほうれん草など)、くだもの(いちご、みかん、柿、キウイフルーツなど)、海苔、ゆず、せん茶、など

ビタミンE

老化に伴って体内の脂肪は酸化され、細胞膜を破壊したり老化を進行させる過酸化脂質が多くなります。ビタミンEは過酸化脂質が多くなるのを防ぎ、ビタミンAやカロテンの酸化を防ぐ働きを持っているので、一緒に取るとより効果的に働きます。

ビタミンEを多く含む食品:
穀物、胚芽油、綿実油、緑黄色野菜、種実類(アーモンド、落花生など)豆類、ウナギなど
※動物性食品には少ない

ファイトケミカル

ファイトケミカルのファイトはギリシャ語で「植物」を意味し、植物の持つ化学成分のことで、体の免疫機能を調整して多くの病気を予防することが解明されつつある成分です。9割は野菜や果物など植物性食品の「色」「香り」「苦み」「辛み」などの成分含まれており、その種類は1万数千種類といわれています。

代表的なファイトケミカル:
スイカやトマトの赤色成分であるリコピン、大豆のイソフラボン、にんにくのアリシン、緑黄食野菜のβーカロチン、ゴマのリグナン、赤ワインのポリフェノール、お茶のカテキンやタンニンなど

食物繊維

体内で消化できないためエネルギー源にはなりませんが、「第6の栄養素」と呼ばれ、腸の活動を刺激して便通を整える、有害物質を排泄する、コレステロールや糖質の吸収を遅らせるなどの働きを持ち、大腸がん予防に大切な成分です。野菜・海藻・きのこ類を毎食取るのがおススメです。

食物繊維を多く含む食品:
水溶性の食物繊維:海藻(ワカメ、昆布、ヒジキ、モズクなど)、こんにゃく、マメ科の植物、きのこ、果物など
不溶性の食物繊維:穀類、野菜、豆類、きのこ類、エビやカニの表皮など

がんを予防するレシピ

がんは悪性腫瘍ともいわれ、要因の1/3は食べ物に由来するといわれています。裏を返せば、食べ方に注意すれば予防できる可能性が高いということです。がんの要因のひとつに体を構成する細胞の異常が原因と考えられ、細胞異常発生の要因のひとつに「体の酸化」が指摘されています。体の酸化を予防する抗酸化力の高い食べ物を取ることで免疫力を高め、細胞の異常を予防しましょう。栄養バランスに心がけると同時に、βーカロテン、ビタミンC、ファイトケミカルといった抗酸化力の高い食品、そして食物繊維を毎食取る食生活を心がけることが大切です。

コッカムサムの干し柿ドレッシングサラダ

コッカムサムの干し柿ドレッシングサラダ
柿を干して作る干し柿は、生柿に比べてカロテンや食物繊維の含有量が高い保存食品です。カロテンの抗酸化力が細胞の酸化を抑制し、食物繊維が腸内の有害物質排泄に働くため、大腸がんをはじめとするがん予防に有効です。ブロッコリーと水菜のビタミンCと一緒に取ると、抗酸化力が高まり、高い抗がん作用が期待できる食べ合せになります。美肌や生活習慣病予防にもおススメです。

キャベツ・りんご・グレープフルーツのサラダ

キャベツ・りんご・グレープフルーツのサラダ
キャベツ・りんご・グレープフルーツに豊富に含まれるビタミンCは、発がん性物質のひとつであるニトロソアミンの生成を抑える働きに優れているため、がん予防に有効な成分です。食物繊維も豊富に含まれ、腸内の有害物質が排泄され、便秘や大腸がん予防に有効です。抗酸化力の高いブルーベリーが免疫力の強化に働きます。

根菜ときのこの豆乳グラタン

根菜ときのこの豆乳グラタン
根菜ときのこは、ともに豊富に含んでいる食物繊維が大腸内で発がん性のある有害物質の生成を抑制するため、大腸がん予防に有効な食べ合せになります。にんじんのβーカロテン、まいたけのβ―グルカン、豆乳のイソフラボンが細胞の酸化を予防して活性酸素撃退に働きます。免疫力が強化され、便秘や生活習慣病の予防にも優れています。

にんじんとやまいものエビのせトロトロ焼き

にんじんとやまいものエビのせトロトロ焼き
にんじんはβーカロテンを豊富に含む緑黄色野菜で、特に肺がん予防野菜として知られています。β―カロテンは活性酸素の働きを抑制する働きに優れ、体内でビタミンAに変化して皮膚や粘膜を健康に保つため、潤いのある美肌やドライアイの予防にも有効です。滋養強壮に優れたやまいもと良質な脂質を持つエビが、細胞の酸化予防をさらに高めます。

かぼちゃ・にんじん・まいたけの揚げ煮

かぼちゃ・にんじん・まいたけの揚げ煮
かぼちゃとにんじんは活性酸素を強力に除去する働きに優れているため、代表的ながん予防野菜として有名です。また、まいたけは免疫機能を回復させる多糖質のβ―グルカンを他のきのこよりも多く含有しており、一緒に取ることで免疫力が強化され、がん予防に優れた食べ合せになります。かぼちゃ・にんじん・いんげんのβ―カロテンは油で揚げることで吸収率がグンとアップします。

えのきだけの信田巻きと根菜の煮もの

えのきだけの信田巻きと根菜の煮もの
油揚げ・えのきだけ・にんじん・じゃがいも・こんにゃくを一緒に取ると、β―カロテン・ビタミンC・食物繊維を十分に取ることができるため、高い抗がん作用が期待できる食べ合せになります。じゃがいものビタミンCは加熱に強く、効率よく体内に吸収されて胃での発がん性物質の生成を抑えます。脂質異常や動脈硬化予防にも有効な一品です。

豆とドライフルーツの梅酒煮

豆とドライフルーツの梅酒煮
豆とドライフルーツは、ファイトケミカルの宝庫のような食べ合わせです。高い抗酸化力・豊富な食物繊維・ビタミン・ミネラルが細胞の酸化を予防して免疫力を強化し、抗がん作用に働きます。梅の効能が溶け出た梅酒に漬けることで、胃腸の働きが高まり、高い便秘解消が期待できます。

れんこん豆腐

れんこん豆腐
れんこんは食物繊維やビタミンCを豊富に含み、豆腐に含まれているイソフラボン、鶏肉の不飽和脂肪酸と一緒に取ると、腸内の有害物質が排泄され、細胞の酸化が予防されてがんや生活習慣病の予防に有効な食べ合せになります。きくらげの抗酸化力と食物繊維、にんじんのβ―カロテンが免疫力をさらに高めてがん予防に働きます。ヘルシーなダイエット食としてもおススメです。

しめじ・えのきだけ・糸昆布の落花生和え

しめじ・えのきだけ・糸昆布の落花生和え
しめじとえのきだけは低エネルギーで食物繊維を豊富に含んでいるきのこです。豊富な食物繊維が腸内の有害物質を排泄し、便秘や動脈硬化予防にも有効に働きます。糸昆布が大腸内での有害物質の生成を抑制し、落花生のたんぱく質・脂質・ビタミンB群などが肝機能を増進して腸内の有害物質の排泄を促進するため、大腸がんの予防に有効な食べ合せになります。落花生の皮には「レスベラトロール」という高い抗酸化力を持つポリフェノールが含まれているので、皮ごと使うとがん予防効果がさらに高まります。

アジの梅味噌包み揚げ

アジの梅味噌包み揚げ
アジは良質なたんぱく質や脂質を含み、体の成長と細胞の再生に役立つビタミンB2を多く含んでいる青魚です。抗酸化力の高い青じそ、梅干し、味噌、にんにくと一緒に取ると、細胞の酸化が予防され、抗がん作用に有効な食べ合せになります。アジに豊富に含まれるEPA(イコサペンタエン酸)は、体の酸化を予防して免疫力を高めると同時に、血中コレステロールを下げて脳梗塞や心筋梗塞の予防にも有効に働きます。