健康薬効粥

お粥の薬味

お粥は本来味を付けずに作るもの。炊き上がりを塩味で調えるのが基本ですが、栄養バランスを整える意味から、いろいろな薬味を添えます。米の糖質にビタミン類やミネラル類をプラスして、より栄養価の優れたお粥をいただきましょう。もちろん、食もグンとすすみます。

お粥の薬味

●ゆずの細切り(前左)
  香りが高く、疲れを取る
●ねぎの小口切り(前右)
  体を温め、食欲を増進させる
●青じその細切り(後左)
  抗菌作用があり、胃腸の働きを増進させる
●しょうがの細切り(後右)
  発汗作用があり、消化吸収を高める

お粥の薬味

●白ごま・黒ごま(前左)
  血管を丈夫にして細胞の酸化を防ぐ
●カツオ節のしょうゆまぶし(前右)
  脳の働きを高めて、元気をつける
●のりの細切り(後左)
  血流を促進させ、粘膜を強化する
●塩昆布(後右)
  体内の代謝を活発にする 塩分の取り過ぎに注意

お粥の薬味

●にんにくチップス(前左)
  体を温め、免疫力を強化する
●炒り卵(前右)
  滋養に優れた完全食
●梅干(後左)
  胃腸を整え、老化を予防
●漬け物(後右)
  食をすすめ、腸内環境を整える

お粥の話

日本のお粥はさらりと仕上げるのが特徴

お粥は弥生時代から食べられていたと記録に残るほど、歴史の古い食べ物です。朝粥が頻繁に登場するのは平安時代。飽食といわれる現代では、カロリーが低いということから、ダイエット食としても人気がありますが、かつては貴重な米を大切に食べた先人たちの知恵が込められた食べ物。米をたっぷりの水で炊くことで、やわらかく消化のよいため、体調のすぐれない時にぴったりの栄養供給源であることは、今も昔も変わりません。
日本のお粥は、米の姿を残しつつ、さらりと仕上げるのが特徴です。一方、中国や韓国のお粥は、長時間炊き糊状に仕上げます。

お粥と雑炊の違いは?

どちらも米と水でやわらかく炊いたものですが、基本的にお粥は味をつけないもの。一方、雑炊は味をつけて炊くもの。雑炊はおじや(宮中の女言葉)とも呼ばれ、炊いたご飯を用いて作られることが多いのですが、本来はお粥同様、洗い米から炊いて作るもの。でも、時間のない時は、お粥も雑炊も炊いたごはんで作ってもよいでしょう。ただ、米から炊いたお粥はビックリするくらいおいしい。前の晩に分量の米と水を入れて置いておけば、朝20~30分で炊くことができます。

体調に合わせて、米と水分の量を調整する

お米は貴重なエネルギー源。ただ、胃腸や体調が悪い時には消化がよくないと吸収されず、エネルギーとして働くことができません。そんな時に消化のよいお粥はぴったりの米食です。お粥は米と水の量によって、全粥、七分粥、五分粥、三分粥と呼ばれる種類がありますが、米と水の分量は好みで十分。「中火で煮立てたら弱火でコトコト炊く」を守ればおいしいお粥ができあがります。

全粥米:水=1:5(米粒がふっくらとやわらかい)
七分粥米:水=1:7(器に盛ると水分がある)
五分粥米:水=1:10(水分は七分粥より多い)
三分粥米:水=1:20(ほとんど水分で、米粒が少ない)

お粥を作る時の注意

米は手早く洗うこと。雑穀を洗う時は茶こしを使いましょう

おいしいお粥を作る始めの一歩は、米を手早く洗うこと。水に漬けたままにしておくと、水に溶け出たヌカが米に付き、炊き上がりがヌカ臭くなります。たっぷりの水で手早くかき混ぜ、すぐに水を捨てる。この作業を数回繰り返し、水がキレイになったらOKです。粒の小さい雑穀は、水を捨てる時に流れ出てしまうので、茶こしに入れて洗いましょう。

米はしっかり吸水させる

洗った米は、分量の水でしっかり吸水させます。やわらかく炊き上がると同時に、米を水に漬けている間に「ギャバ(γ-アミノ酪酸)という成分が発生するからです。ギャバは血圧を安定させ脳細胞を活性化させる働きを持つ優れた成分。水に漬けて置くだけで発生する、この優れた薬効成分を無駄なく取り入れましょう。

始めは中火で、煮立ったら弱火にする

炊く時は、まず中火で煮立て(沸騰)ます。煮立ったらすぐに弱火(とろ火)にしましょう。弱火でじっくりゆっくりお米の芯まで火を通し、やわらかく炊き上げます。

コトコト炊く間は、フタを少しずらして乗せる

弱火でコトコト炊く間は、フタを少しずらして鍋に乗せます。きちんとフタをしてしまうと吹きこぼれるので注意。熱の逃げ道を作りながら、鍋の熱を逃がさず、米粒が静かに舞うように炊きます。

炊いている時に、混ぜないこと

弱火でコトコト炊く間は、混ぜないこと。混ぜるのは鍋に入れ煮立った時にさっと混ぜるだけにします。お粥は「さらり」と仕上げるのが特徴。混ぜるとネバリが出てしまうので気をつけましょう。

炊き上がったら、蒸らすこと

炊き上がったら、フタをして5~6分蒸らします。蒸らすことで芯までふっくらしたお粥になります。

できれば底の深い土鍋か、行平鍋を使うとよい

弱火でコトコト炊くお粥は、厚手の鍋の方が火の通りがよい。土鍋は火のあたりがやわらかく、また保温性にすぐれているので弱火で炊くお粥にぴったりの鍋です。行平鍋は、平安時代の歌人在原行平が海水から塩を作ったという土鍋で、その名にちなんで名付けられた鍋。フタ、注ぎ口、把手のある鍋でお粥作りに向いた鍋です。

白粥のレシピ

米を水から炊いて作る白粥は、お粥の基本。基本の炊き方を覚えておけば、あとは好みで好きなように応用することができます。米と一緒に山の幸や海の幸を炊き込んだり、米と水の分量を変えてみたり、あるいは水の代わりにお茶や牛乳を加えて炊いたりと、多種多様なお粥を楽しむことができます。ここでは、米に対して7倍の水を入れて炊く白粥の作り方を紹介しましょう。

材料(2人分)
米 1/2カップ
水 3と1/2カップ

  1. 鍋によく洗った米と分量の水を入れ、3~4時間置く(できれば一晩置く)。
    白粥の作り方
  2. 火にかけ、中火で煮立てる。
    白粥の作り方
  3. 煮立ったら弱火にして、フタを少しずらして乗せ、コトコト炊く。
    白粥の作り方
  4. できあがり(弱火で20分炊いたもの)。
    白粥の作り方
  5. 器に盛り、薬味を添える。
    白粥の作り方

健康薬効粥レシピ

米を多めの水でやわらかく炊いたお粥の特徴は、消化がよいこと。そのため風邪気味で体力が落ちた時、食欲不振やお腹をこわしている時などの体調不良時の最適のエネルギー源となり、体力回復に大きな力を発揮します。ちょっと具合が悪いなと感じたら、まず食生活をチェックしてみましょう。体調不良はまず食べ物で直すことが、免疫力を高める始めの一歩。消化吸収にすぐれたお粥に、野菜や豆類、木の実やきのこ、魚や肉を加えた栄養豊かなお粥を作ってみましょう。

くるみとごまのお粥

くるみとごまのお粥
くるみもごまも、良質な脂質と豊富な食物センイを含んだ食べ物です。もち米は体内を温める作用を持ち、食物センイも豊富な穀類です。もち米とくるみやごまと一緒に食べ合わせると、胃腸をはじめ消化器官が丈夫になり、腸の働きも高まります。また、もち米は冷え性を改善する働きがあるので、冷えからくる下痢にも有効です。

赤米入り干ししいたけとシラス干しのお粥

赤米入り干ししいたけとシラス干しのお粥
赤米の赤い色はポリフェノール系の一種のタンニンで、抗酸化力が強く細胞の若さを維持する働きがあります。お赤飯のルーツともいわれ、食物センイも豊富です。干ししいたけには水溶性の食物センイが豊富に含まれ、お腹をスッキリさせると同時にコレステロールを下げる働きもあります。ジャコはカタクチイワシの稚魚を干して作ったものです。

ヒジキとごぼうのお粥

ヒジキとごぼうのお粥
玄米は食物繊維・ビタミンB群・ミネラル類を豊富に含む穀類で、食物繊維は白米の約6倍も含まれています。玄米・ヒジキ・ごぼうを一緒に取ると、ヒジキの水溶性食物繊維とごぼうの不溶性食物繊維がプラスされ、整腸作用が高まり便秘解消に有効な食べ合わせになります。玄米は消化のよくないのが欠点ですが、お粥にすると消化がよくなります。

はと麦入り黒ごまのお粥

はと麦入り黒ごまのお粥
ごまに豊富に含まれる良質な脂質の不飽和脂肪酸は、常食すると血管を丈夫にして細胞の酸化を予防します。不飽和脂肪酸はビタミンEの働きと一緒に、細胞をイキイキとさせて美肌や黒髪作りに働きます。ごまはよく炒り十分にすって消化吸収を高めましょう。はと麦は中医学(中国伝統医学)では、むくみを和らげ肌荒れやシミの予防があるとされる食材です。

黒米と黒豆のお粥

黒米と黒豆のお粥
黒豆はアミノ酸バランスに優れたたんぱく質、脳の働きを高めて老化防止に働くレシチン、体や脳を若々しく保つビタミンEやサポニンを含んでいる豆です。ポリフェノールを含んだ黒米・カロテンを含むクコの実と一緒に取ると、抗酸化力が高まり免疫力が強化される食べ合わせになります。

はと麦と豚肉のお粥

はと麦と豚肉のお粥
体内の余分な水分を排出するはと麦は美肌効果の高い穀物で、良質なたんぱく質を持ちビタミンB群を豊富に含んでいます。豚肉はビタミンB群やビタミンEを豊富に含み、体や脳の若さ維持に働きます。にらの硫化アリルがビタミンB1の吸収を高め、はと麦が胃腸の働きをよくするため、はと麦・豚肉・にらのお粥は体力が強化され滋養に溢れた食べ合わせになります。

カキとなめこのお粥

カキとなめこのお粥
「海のミルク」と呼ばれるカキは、糖質にうまみ成分のグリコーゲンを豊富に含み、虚弱体質の体力強化に効果的な食材です。なめこのヌメリが胃腸を強化し、にらの硫化アリルがビタミンB1の効力持続に働くため、カキ・なめこ・にらを一緒に取るお粥は滋養強壮に優れた食べ合わせになります。

蓮の実と鶏肉のお粥

蓮の実と鶏肉のお粥
蓮子(レンズ)と呼ばれる蓮の実は、生命力を養う食べ物として中華料理では頻繁に登場する食材です。消化吸収に優れた良質なたんぱく質を含む鶏肉と一緒に取ると、体が温まって血流がよくなり、体力が強化される食べ合わせになります。お腹を温める作用を持つ蓮の実と鶏肉は、病後の体力が落ちた時に特に効果が期待できます。

大麦入り小豆粥

大麦入り小豆粥
月の始めと半ばに小豆粥を食べる習慣は、小豆でたんぱく質やビタミン類を取り体調を整えた先人たちの食の知恵です。小豆粥に、たんぱく質・脂質・ミネラル類・ビタミン類を豊富に含んだ大麦をプラスして、滋養強壮を高めます。小豆と大麦に豊富に含まれる食物繊維が、コレステロール低下や便秘予防に働きます。

やまのいもと大麦のお粥

やまのいもと大麦のお粥
別名「山うなぎ」「山薬」と呼ばれるやまのいもは、滋養強壮に優れた食べ物で、消化酵素やヌメリ成分が消化吸収を高めます。大麦は「五穀の長」と呼ばれる薬効の高い穀物で、消化不良に効果があります。昔からやまのいもと大麦を食べ合わせる麦とろは、消化のよい食べ物として有名。お粥にしてさらに消化を高めます。

梅干と青じそのお粥

梅干と青じそのお粥
梅干の有機酸は胃の中で胃酸の代役を果たすため、食欲を増進させて胃腸の働きをよくする作用を持っています。疲れを回復する効果にも優れ、疲れた胃をいたわり食欲不振を防ぎます。青じそも梅干し同様の働きがあり、梅干しと青じそを一緒に取ると、胃腸の働きが高まり食欲増進に有効な食べ合わせになります。青じその抗菌作用は細かく切るほど高まります。

青菜粥

青菜粥
春菊、ほうれん草、かぶの葉などの青菜は、β‐カロテンやビタミンC、食物繊維などを豊富に含む緑黄色野菜です。春菊とかぶの葉は胃腸を丈夫にする働きを持ち、ほうれん草は鉄分や葉酸などの増血作用の高い成分を多く含んでいます。栄養価の高い青菜のお粥は、食欲不振時のエネルギー源として最適です。

かぼちゃと鮭のお粥

かぼちゃと鮭のお粥
β-カロテンが豊富なかぼちゃは、体を温めて血流をよくする温性の野菜です。同様に鮭はビタミンAが豊富な温性の魚。かぼちゃと鮭を炊き込んだお粥は、粘膜を強化して消化吸収能力を高め、風邪の予防に働きます。かぼちゃのβ-カロテンは鮭の脂質で吸収率が高められ、眼に栄養を与え皮膚を健康に保ちます。

ゆずと白菜のお粥

ゆずと白菜のお粥
ゆずはビタミンCが豊富で体を温める作用を持っています。同様にビタミンCが豊富な白菜は体内の余分な熱を取り去る作用を持っており、ゆずと白菜を一緒に取ると熱のある初期の風邪に有効な食べ合わせになります。血行をよくするもち米をプラスして体力を増強し、白菜の特殊成分ジチオールチオニンが細胞の酸化を予防します。

焼きねぎとしょうがのお粥

焼きねぎとしょうがのお粥
ねぎの辛み成分であるアリシンは胃液の分泌を促して消化を高め血行をよくする働きを持っており、白い部分は中医学では葱白(そうはく)と呼ばれ、薬効が多く含まれています。咳を鎮める働きを持つしょうがと、胃腸の働きを増進させる青じそと一緒に取ると、体が温まり発汗作用が高まるため、初期の風邪予防に有効な食べ合わせになります。