日向飯

愛媛県明浜町(あけはま)に古くから伝わる郷土料理です。生きたアジを用いた火を使わない汁かけ飯の一種で、伊予水軍の料理と伝えられています。日向飯と呼ばれる由来として、①この料理を食べていた漁師たちの本拠地である日振島(ひぶりじま)の「ひぶり」がなまった ②宮崎県の日向から伝わった ③明浜町の織物業者が宮崎県の日向で作って食べていた など諸説あります。用いられる魚はアジの他にイワシ、タイ、サヨリ、カツオなど新鮮なものが使われます。地域によっては用いる材料が「魚、卵、ごま、ねぎ、しょう油、海苔」の6種類であることから「六方飯(六宝飯)」とも呼ばれています。新鮮な魚と卵が身上のごはんです。

アユの姿寿司

酢じめの鮎にすし飯を詰め、柿の葉で巻く鮎の姿寿司は鳥取県の郷土料理です。柿の葉で巻くのは毒消しの意味があり、中風にならないと言い伝えられています。鮎は日本全国の清流に棲む川魚で、1年しか生きないといわれることから「年魚(ねんぎょ)」、特有の香りを持つことから「香魚(こうぎょ)」などと呼ばれています。鮎の香味は酢との相性がよいことから鮎寿司は多くの地域で作られていますが、柿の葉を巻く鮎寿司が鳥取県の特徴です。

鬼まんじゅう

小麦粉にサイコロ状に切ったさつまいもを混ぜて作る田舎風のおやつです。「いもまんじゅう」ともいいますが、デコボコした表面が鬼面や鬼の金棒を連想させることから「鬼まんじゅう」と呼ばれています。名古屋市千種区の覚王寺日泰寺の山門の前にこれを名物にする菓子屋が並び、毎月20日頃の弘法様のお参りに多くの参拝客がお土産として買い求めます。

七色汁

西三河の禅家の家ではお盆の16日の朝、野菜たっぷりの「七色汁」を作り、精霊を送る慣わしがあります。7種類の材料を使うことからこの名で呼ばれる健康食で、この時期に取れる旬の野菜をたっぷり使い、ご先祖への感謝の気持ちを表します。油揚げの他にれんこん、ごぼう、しいたけ、じゃがいもなどもよく使われます。

ウナ茶漬け

浜名湖周辺では水質や温度が適していることから、ウナギの養殖が盛んに行われています。養殖の始まりは明治30年代。ウナギには特に旬はありませんが、夏に多く出回り、秋になると海に下る産卵直前の天然ウナギが美味とされ珍重されています。浜名湖辺りまでが関東風の焼き方で、背開きのウナギを素焼きにしてからタレをつけて焼きます。

浜焼きサバと新じゃがいもの煮物

とれたてのサバを「若狭の一本グシ」と呼ぶ太く長い竹グシに刺して焼き上げたのが「浜焼きサバ」です。若狭には数多くのサバ料理が伝わっており、その中でもこの浜焼きサバは代表的な郷土料理です。昔、若狭湾で水揚げされた魚介類は18キロ離れた京都に運ばれて京の食文化を支え、天皇の食べ物を供給することから、福井は「御食国(みけつくに)」と呼ばれていました。特に腐敗を防ぐために塩をしたサバは人気で、京へサバを運ぶ若狭街道は「鯖街道」とも呼ばれていました。福井県内では田植えの後や半夏生(はんげしょう)には必ず食べるのが習わしといわれています。

ケンサ焼き

焼いたおむすびに甘味噌を塗って焼いたケンサ焼きは新潟県の郷土料理です。そのまま食べたり、熱い番茶を注いでお茶漬けにします。中越や下越での小正月によく食べられ、夜食や酒宴の後に出される料理です。ケンサキ焼き(剣先焼き)、ケンサン焼き(献残焼き)、味噌のつけ焼きなどとも呼ばれています。名の由来として①上杉謙信が出兵の際、雑兵が冷たくなった握り飯を剣の先に刺して焼いた「剣先焼き」がなまった ②献上品の残り物を使った など諸説あります。

せんだご汁

じゃがいもの団子を入れて作るせんだご汁は、キリシタン信仰が盛んだった熊本県天草に伝わる郷土料理で、宣教師によって伝えられたと言われています。せんは「洗」で水洗いしたでんぷん、だこは「だんご」の省略と言われ、茹でたせんだごは、きな粉をまぶしておやつにすることもあります。

がめ煮

鶏肉と野菜を炒めてから煮詰める「がめ煮」は福岡県の郷土料理です。筑前炊き、筑前煮とも呼ばれ、1592年(文禄1年)、朝鮮出兵の豊臣秀吉軍が博多に幕営した折、付近の入り江に多いスッポンを捕まえて野菜と一緒に煮て食べたのが始まりという説があるように、古くは鶏肉ではなくスッポンを使って作られたといわれています。名の由来として、①この地方ではスッポンを「がめ」と呼ぶ ②博多弁の「かき集める」を「がめ繰り込む」というなど、諸説あります。春はたけのこ、夏はじゃがいも、冬は里芋やれんこんなど季節のものが使われます。

タコ飯

タコ飯は愛媛県今津の名物料理です。漁師が取れたてのタコをぶつ切りにして、船上でご飯に炊き込んで食した漁師飯で、うまみと風味に溢れ、タコから出る色素でほんのり桜色に炊き上がります。瀬戸内海のタコは春の訪れとともに身が締まり、春先には「木の芽ダコ」と呼ばれるうまみの高い小ダコが収穫されます。タコは北海道から九州に至る各地の浅瀬の岩礁に棲んでおり、同様の料理は瀬戸内海周辺の海岸地域や茨城県などでも作られています。