いもタコ

瀬戸内海で取れる新鮮なタコとさといもを一緒に煮て作るいもタコは、瀬戸内海沿岸部を中心とした香川県の郷土料理です。使われるタコは手長ダコが一般的で、東讃(とうさん)地方の婚礼料理では大きな器に山盛りに盛り付けられて必ず登場する郷土食です。じっくり煮たタコのうまみを余すことなくさといもが吸着する、山と海の幸を堪能できる相性のよい料理です。

しょい豆(しょうゆ豆)

乾燥そら豆で作るしょい豆は香川県の郷土料理です。雨が少なく乾田が多い香川県では裏作でのそら豆栽培が盛んで、このそら豆を使って作るしょう油漬けは、家庭ごとに好みの味で作られ、行事や日常のおかず・酒の肴などに欠かせない料理です。お年寄りが札所巡りのお遍路さんにとそら豆を煎っていた時、はじけたそら豆が傍に置いてあったしょう油鉢に飛び込んだことがしょい豆の由来といわれ、四国霊場八十八ヵ所巡りと深い係わりを持つ郷土料理です。この郷土料理の消費拡大を目指して、県しょうゆ豆協議会では8日を「しょうゆ豆の日」と制定しています。

そばねっつり

そばねっつりは海や山の幸が豊かな山口県萩市周辺の郷土料理です。直接そば粉を入れることで「ねっとり」した感じになることが、名の由来といわれています。家庭の食卓にもよく登場する料理で、そば粉を使っているため満腹感を得やすく、また消化もよいので夜食としてもよく作られています。最後に入れるそば粉は一気に入れるとダマになりやすいので、少しずつ入れながらトロミをつけるのがコツです。

イリコのだんご汁

うまみがよく出るイリコで作るだんご汁は、広島県の郷土料理です。瀬戸内海で秋に収穫されるイリコは小型ですがうまみがよく出るため、だし汁に最適で、だんご汁は朝食によく作られていました。地域によって使われる野菜も異なり、調味料も白味噌やしょう油仕立てと多様です。イリコは、かつては貴重な食材であり、だしの出た後のイリコは取り出さずにそのまま食べ、貴重なカルシウム源としての役割を担っていました。米、小麦、そばなどで作られるだんご汁は日本全国にある郷土料理で、穀類を団子にすることで無駄なく食べ切る知恵が生み出した料理です。

いもぼた(いもぼたもち)

いもぼたは鳥取県弓浜半島の郷土料理です。水田に恵まれない弓浜半島では、1780年にさつまいもが境港に伝来して以来、米の代用食として日常的に食べられ、様々なさつまいも料理が誕生しました。いもぼたはそのひとつで、喉ごしをよくするためにさといもを加えて作られることもあります。弓浜半島では現在でも地域の特産品としてさつまいもが栽培され、「浜かんしょ」と呼ばれています。

ニシンそば

身欠きニシンをみりんで甘く煮付け、そばの上にのせていただくニシンそばは、京都を代表する名物そばです。北国生まれのニシンは乾燥した身欠きニシンとなって各地に輸送され、特に山間部の貴重な栄養源として食されていました。京都名物のニシンそばは、甘みはみりんだけを使い、塩味も薄めに作るのが身上です。甘く煮付けたニシンはそのままでおかずにもなります。

イカにんじん

イカにんじんは、かつては晩秋から冬にかけてどの家庭でも作られていた福島県の郷土料理です。北海道の郷土料理「松前漬け」の原型ともいわれ、昆布を入れないのが特徴です。酒、しょう油、みりんで味をつけた保存食品であり、お正月にはどの家庭でも登場する一品です。味つけは家庭ごとに調味され、定番おかずとしてお惣菜としても売られています。

マーミナ・チャンプル

沖縄県の代表的な郷土料理が「チャンプル」です。チャンプルは「いり豆腐」、マーミナは「もやし」。沖縄県で一番ポピュラーなチャンプルが、このもやしを使ったマーミナ・チャンプルです。豆腐ともやしを炒めるだけのシンプルな料理ですが、豆腐ともやしから水分が出ないよう、強火で短時間で炒めるのが極意です。沖縄の豆腐は炒めても煮崩れしない島豆腐ですが、普通の豆腐で作るときには水切りをしっかりするのがコツです。ゴーヤで作ると「ゴーヤ・チャンプル」、キャベツで作ると「タマナー・チャンプル」などと呼ばれています。

がね

出来上がりの形がカニに似ていることから「がね」と呼ばれるようになった都城地方の代表的な郷土料理です。精進料理として不祝儀の席に必ず登場し、お惣菜としても売られているポピュラーな料理です。さつまいもやごぼう、にんじんの他、その時どきの旬の野菜が使われ、お袋の味として日常の食卓に登場する揚げ物です。

団子汁

団子汁は大分県を代表する郷土料理です。野菜たっぷりの味噌仕立ての汁に小麦粉で作った団子を入れた汁物で、米が不足していた時代に庶民が主食代わりとして日常的に食べていたと伝えられています。江戸天明に書かれた『西遊雑記』(古川吉松軒 著)に「だんご汁は別名ホウチョウ(鮑腸)汁と呼ばれている」との記述があり、小麦粉で作る団子は鮑(アワビ)の腸の食感に似ているといわれています。だんご汁は春夏秋冬、晩ごはんに登場する日常食で、何杯もおかわりする食卓の中心的な料理でした。