糖尿病
糖尿病とは
糖尿病とは
糖尿病とは三大栄養素のひとつである「糖質の代謝異常」が原因となって、血糖値の高い状態(=高血糖)が続くことで引き起こされる病気です。
血糖値とは
血糖値とは「血液中のブドウ糖の量」のことで、ブドウ糖が血液中にどのくらいあるかを示すものです。糖質は食べ物の中にでんぷんやショ糖として含まれています。食べ物によって摂取された糖質は肝臓でブドウ糖に分解され、血液に入って体の隅々の細胞まで届けられる仕組みになっています。そのため、食後は血液中のブドウ糖が増え、血糖値が上がります。
上がったブドウ糖をインスリンがコントロールする
食後に血糖値が上がるのは自然のメカニズムです。この上がった血糖値は、その後すい臓から分泌されるインスリンというホルモンによって調整され、正常値に戻ります。
しかし、インスリンが不足したり、うまく作用しなくなると、血液中のブドウ糖は細胞に送り込まれず、血液中に溢れ、血糖値が下がりません。この状態を高血糖といいます。
インスリンとは
インスリンは食後に上がった血液中のブドウ糖をコントロールして血糖値を下げる働きを担っています。そのため、物を食べるたびにすい臓から分泌され、血糖値を正常にするために働く仕組みになっています。規則正しく食事をしていればすい臓は規則正しくインスリンを分泌してブドウ糖をコントロールできますが、暴飲暴食など絶えず物を食べていると、すい臓は休みなくインスリンを分泌し続けなければなりません。その状態が長く続くとすい臓が疲弊し、インスリン分泌に異常をきたしてきます。
糖尿病の種類
◎Ⅰ型糖尿病:すい臓のランゲルハンス氏島にあるベータ細胞が破壊され、インスリンの量が絶対的に不足して起こります。若い人に多く、インスリン注射が必要。子どもの時に始まることが多く、以前は小児糖尿病とかインスリン依存型糖尿病と呼ばれていました。
◎Ⅱ型糖尿病:暴飲暴食などによる肥満や運動不足から慢性的な高血糖状態が続き、糖尿病になるパターン。インスリンの出る量が少なくなって起こるタイプ、肝臓や筋肉などの細胞にブドウ糖がうまく取り入れなくなって起こるタイプがあります。日本人の糖尿病の約95%を占めており、症状によりインスリン注射は必ずしも必要ではありません。
◎遺伝子の異常や他の病気が原因となるもの:遺伝子異常や、肝臓やすい臓の病気、感染症、免疫の異常などが原因となって引き起こされます。薬剤が原因となることもあります。
◎妊娠糖尿病:妊娠中に発見された糖尿病で、新生児に合併症が出ることもあります。
放置していると合併症を引き起こす
血液中にブドウ糖が高い濃度で残っていると、血液は粘りをおび、ドロドロの状態になってきます。そのため血管の壁は傷つけられ、さまざまな合併症を引き起こします。
糖尿病が引き起こす合併症
◎糖尿病神経障害:合併症の中でもっとも早く出てくる症状です。手足のしびれ、怪我や火傷の痛みに気がつかない、筋肉の萎縮、立ちくらみ、発汗異常などの症状が現れます。
◎糖尿病網膜症:眼の底にある網膜の血管が出血したり詰まることで栄養不足の状態になり、視力低下・かすみ・飛び物が見えるなどの症状を引き起こします。放置していると網膜はく離を起こし失明する場合もあります。
◎糖尿病腎症:腎臓の毛細血管が悪くなり、だんだん尿が作れなくなる症状です。そのため、人工透析を受けて尿を作らなければならなくなり、日常生活にも大きな影響を与えるようになります。
初めは肥り、それから体重が減少する
暴飲暴食を繰り返すうちに体重は増えて肥満になってきます。一方、休みなくインスリンを分泌しなければならないすい臓は疲弊してきます。すい臓疲弊はインスリンの分泌機能を低下させ、血液中のブドウ糖濃度が下がらず血糖値が高い状態が続きます。そうなると私たちの体は肝臓・筋肉・脂肪組織に蓄えられていたブドウ糖が使われるシステムになっています。筋肉中のたんぱく質や脂肪細胞にある中性脂肪が分解されてエネルギー源として使われるため、蓄えが減少して体重減少が起こります。しかしこのエネルギーもインスリン作用の不足により十分利用できません。また、高血糖によって多尿になるため脱水症状になり、体重の減少につながります。
倦怠感が現れる
インスリンの働きが弱ってくると、細胞がブドウ糖をエネルギー源として利用できなくなってきます。このエネルギー不足により、全身がだるい・足の知覚異常・食後の眠気・下肢の倦怠感などが現れます。
自覚症状でチェックする
糖尿病は自覚症状がほとんどないため、気付いた時はかなり進行していることが少なくありません。日常的に以下の症状が見られる時は気をつけましょう。
・喉が異常に渇く
・尿量が多い
・始めは肥満で、後に痩せてくる
・体がだるい、足がつる、手足がしびれる、足がむくむ
・立ちくらみを起こす
・物が見えにくい
・精力が減退する
適度な運動で血糖値を下げる
運動をすると筋肉がエネルギーを消費します。まず筋肉中に蓄えられているグリコーゲンが使われ、次に血液中のブドウ糖が使われます。そのため、適度な運動は血糖値を下げることにつながります。逆に激しい運動をすると、肝臓がブドウ糖を放出して補充するため、運動終了後に血糖値が上昇するので気をつけましょう。
食後1~2時間の間に体を動かすことが大切
血糖値は食後1~2時間の間に高くなるので、この時間帯に体を動かして糖質を燃焼させましょう。糖尿病患者には「ベッド・ルーエ(休息)を強いてはならない」といわれています。これは適度な運動で糖質を燃焼させることが症状改善に有効だからです。
食事療法で気をつけること
糖尿病療法で食べてはいけない食品はありません。問題は栄養バランスと食事量(適正なエネルギー)です。一日3回の食事を均等に取ることですい臓を疲弊させず、インスリン分泌をスムーズにすることが大切です。また、油脂の取り過ぎは高カロリーになりやすいので気をつけましょう。
糖尿病を予防する栄養成分と食べ物
糖尿病を予防する時に「食べてはいけない」食品はありません。大切なことは栄養のバランスと、食べ過ぎに注意することです。エネルギー源であるたんぱく質・脂質・糖質をバランスよく適量取り、食物繊維、マグネシウム、タウリンなどの成分をしっかり取りましょう。
食物繊維
体内で消化できないためエネルギー源にはなりませんが、「第6の栄養素」と呼ばれ、小腸の中でブドウ糖の吸収を遅らせる働きを持っています。水溶性と不溶性の食物繊維があり、特に水溶性の食物繊維はブドウ糖の吸収を防いで糖の代謝を正常化する働きに優れています。
食物繊維を多く含む食品:
水溶性の食物繊維:海藻(ワカメ、昆布、ヒジキ、モズクなど)、こんにゃく、きのこ、果物など
不溶性の食物繊維:穀類、野菜、豆類、エビやカニの表皮など
マグネシウム
成人の組織中、約60~65%は骨に含有されており、骨はマグネシウムの貯蔵庫ともいわれています。不足すると骨から放出されますが、その時にマグネシウムの約5倍ものカルシウムも一緒に放出されるため、余分なカルシウムが細胞内に入り筋肉の収縮がうまくいかず、けいれんやふるえなどを起こします。清涼飲料や加工食品を多く取る食生活では摂取不足になりやすく注意が必要です。体内で自然にインスリンを生成するのに必要なミネラルといわれており、2004年、医学雑誌『Diabetes Care』(米国糖尿病協会発行)に糖尿病発症予防にマグネシウムが有効という論文が発表され、同様の研究は国内でも実施されて効果が認められています。
マグネシウムを多く含む食品:
ナッツ類(アーモンド、カシューナッツ、かぼちゃの種など)、大豆、干しヒジキ、納豆、木綿豆腐、カツオ、海苔、ワカメ、昆布など
タウリン
魚介類だけが持つ硫黄を含むアミノ酸で、血液の流れをよくして動脈硬化の予防や血圧降下に働きます。インスリンの分泌を促す働きを持っており、すい臓にも豊富に含まれています。加熱しても壊れませんが、水に溶け出しやすい成分なので、煮汁を一緒に取れる調理法がおススメです。
タウリンを多く含む食品:
貝類(アサリ、シジミ、ホタテ貝柱など)、イカ、タコなど