しょうゆ麹

しょうゆ麹とは

原材料はしょうゆと米麹

しょうゆ麹はしょうゆに米麹を漬けて熟成・発酵させた発酵食品で、昨今ブームの塩麹に続いて誕生した現代生まれの新しい調味料です。ご存知のように、しょうゆは麹菌によって作り出された日本を代表する発酵調味料で、「甘み・酸味・塩味・苦味・うま味」の5つの味と300種以上といわれる香り成分、抗酸化作用や抗腫瘍作用などの効能を持つ和食に欠かせない万能調味料です。そのしょうゆに米麹をプラスして作られるしょうゆ麹は、麹菌の生み出す酵素の働きで、より高い栄養価を得ることができる発酵食品へと生まれ変わります。

よく似た調味料「三升漬け」

しょうゆ麹は塩麹に続いて誕生した現代の調味料ですが、古くからよく似た調味料として「青なんばん(青唐辛子)・麹・しょうゆ」を原材料とする「三升漬け」が存在しています。三升漬けは青なんばん・麹・しょうゆを一升ずつの分量(同分量)で漬け込んだ保存食で、北海道や東北地方の郷土料理。この三升漬けから青なんばんを除いて作られるしょうゆ麹は、辛さがないため、「かける」「和える」「漬ける」などのあらゆる調理方法に用いられ、しょうゆとは一味違った調味料として暮らしに浸透しつつあります。

日本の食文化に貢献してきた麹菌(アスペルギルス・オリゼー)

しょうゆ麹の麹には米麹が利用されるのが一般的です。そもそも麹とは、蒸した米、大麦、大豆、小麦などに麹菌(麹カビ)を繁殖させたもので、麹菌を繁殖させる材料により、「米麹」「麦麹」「豆麹」と呼ばれています。麹菌は有効カビの代表的な菌種で、日本の伝統的な発酵食品である清酒、しょうゆ、味噌などの原料になる麹の製造に利用され、日本の食文化に貢献してきた日本特有の有用菌。日本の環境でしか生存しない菌のため、日本醸造学会により「国菌(こっきん)」と位置付けられ、その歴史は古く、『延喜式(えんぎしき)』(平安時代中期に編纂された律令の施行細則)の造酒司(みきのつかさ)に、「麹」の表記が登場しています。麹菌は子嚢(しのう)菌類に属し、多くは無性生殖で増殖。コロニー(集落)は初期の頃は白色ですが、分生胞子ができ始めると色合いは黄色→黄緑色→緑色→褐色へと変化し、そのため黄麹菌とも呼ばれています。

加齢とともに減少する体内の分解酵素

麹菌はデンプン質の食品によく生え、アミラーゼ、マルターゼ、インベルターゼなどの糖化酵素やタンパク質分解酵素を生産します。分解酵素はタンパク質をアミノ酸に分解してうま味成分を、デンプンを糖に分解して甘み成分を作るため、麹を使った食品にはうま味と甘みが倍増して備わっています。また、食べ物をやわらかくして消化をよくし、胃腸の負担を軽減し、食味向上に働きます。

栄養価が倍増される調味料

米に麹菌を増殖させて作る米麹には、酵素が約100種類以上も含まれているといわれて、代表的な酵素は消化を助ける消化酵素です。しかし、酵素はその性質上、もっとも活発に活動する温度帯は30~50℃といわれ、80℃以上になると働きが止まり作用しなくなるため、麹の発酵・熟成は常温で行います。温度に作用されるので、当然ながら夏場と冬場では発酵のスピードが違い、夏場は短く、冬場は長くなります。また、酵素の働きを有効に取り入れるなら、高温加熱の調理法は避けた方が有効でしょう。

優れた調味料として食生活に位置する

しょうゆ麹の優れた点は、しょうゆの持つバランスのよい味と香り、食材のうま味を引き出すなどの働きに、さらに麹の持つパワーがプラスされることです。甘みやうま味と同時に麹菌によって作られる酵素の働きで、栄養価が倍増されます。ビタミンやミネラルが豊富なしょうゆ麹は、しょうゆよりも優れた調味料として、これからの食生活に確固たる地位を占めていくと推測されます。

しょうゆ麹に含まれる主な成分

しょうゆ麹は米麹にしょうゆを加えて発酵・熟成させた調味料です。麹菌の働きにより、うま味や甘味、そしてさらに高い栄養成分が生み出され、万能調味料であるしょうゆが原料として使用されているため、他の調味料をほとんど必要としません。そのため、特に減塩に有効で、それが家庭でのしょうゆ麹の人気・浸透の大きな要因ともなっています。
しょうゆ麹の特性は麹に含まれる多様な酵素が生み出す働きです。100種類以上といわれる酵素は適正な温度環境の中で生き続け、食品にうま味や甘み、消化のよいやわらかさなどを与える発酵食品となり、私たちの健康を支えてくれます。
しょうゆ麹に含まれる優れた成分を紹介しましょう。

しょうゆ麹に含まれるしょうゆの効能

しょうゆ麹の主原料のしょうゆは、大豆と小麦を麹菌で発酵させた発酵調味料で、発酵過程でできた「甘み・酸味・塩味・苦味・うま味」の5つの味がバランスよく含まれています。他の調味料にはない特有の香り成分は300種以上も含まれているといわれ、その芳ばしい香りは、食欲増進やリラックス効果などをもたらします。さらに食品の保存性を高め、食材のうま味を引き出し、消臭、抗酸化作用、抗腫瘍作用、アレルギー症状の改善などに働きます。これらの効能は麹菌の作り出す酵素の働きによって生み出されるため、発酵・熟成期間を経た本物のしょうゆのみに備わっている効能です。

しょうゆ麹に含まれる麹の効能

しょうゆ麹のもうひとつの主原料は麹です。麹は日本生まれのしょうゆ、味噌、日本酒、みりんなどの発酵食品を作る「菌」です。人間にとって有益な菌であり、酵素を作って風味や味を変化させ、栄養価や保存性を高めるなどの優れた働きを持っています。発酵食品であるしょうゆに、この麹パワーがプラスされるのですから、しょうゆ麹がいかに優れた効能を持っているか想像できるでしょう。

しょうゆ麹に含まれる酵素の働き

しょうゆと麹に含まれる麹菌が生産する酵素は実に多様です。主な酵素として、でんぷんを分解する「アミラーゼ」、たんぱく質を分解する「プロテアーゼ」、脂肪を分解する「リパーゼ」、グルコースを生成する「グルコアミラーゼ」、遊離アミノ酸を生成する「ペプチダーゼ」などが挙げられます。
麹にはこれら高い分解能力を持つ数十種類もの酵素が含まれており、それらの酵素が食品中のでんぷんやたんぱく質を分解して食品にうま味や甘味を与え、食材をやわらかくて消化をよくするなどの優れた効能を生み出します。酵素の働きによって生み出された効能によって、栄養成分は体内に無駄なく吸収され、体を健康へと導いていきます。それゆえ、麹を使った発酵食品は古来より健康維持に欠かせないものとして、日常の食生活の中で確固たる地位を占めていたのです。

疲労回復、美肌、便秘解消が期待できる

しょうゆ麹が持つ麹は、酵素の力によって素材の栄養素を倍増させる働きを持っています。ビタミンB群や乳酸菌、ミネラルなどが増えることで、疲労回復や美肌などに効果的となります。有用菌である麹菌は腸内環境を整えて、消化・吸収・排せつなどの代謝機能の正常化に働くので、便秘解消や肌荒れ改善が期待できます。
さらに最近、麹菌の細胞内でビタミンBの生合成に関わる酵素が働いているとの研究も報告されています(丸山潤一助教授 東京大学大学院農学生命科学研究所微生物研究室)。ただし、ビタミンB群は水溶性のビタミンなので、体内に蓄積することはできません。日常的に麹を取り入れる食生活で、ビタミンB群を体内に上手に取り入れ、健康維持に役立てましょう。

しょうゆ麹の作り方

しょうゆ麹の原料はしょうゆと麹(米麹が一般的)です。もともと発酵食品であるしょうゆに麹を加えることで、麹の持つ酵素の働きがプラスされ、栄養価がグンと高まるという調味料に変身します。
しょうゆ麹を寝かせる期間(発酵熟成期間)は環境によって異なり、気温が低いと寝かせる期間が長くなり、逆に気温が高いと短くなります。米麹の芯がなくなり甘酒のような状態になったら出来上がり。完成したら冷蔵庫で保存しますが、発酵させている間は常温で保存し冷蔵庫に入れないようにしましょう。麹の持つ酵素が活性する温度帯は30~50℃のため、冷蔵庫に入れると酵素の働きが弱って発酵が進まなくなってしまうからです。
出来上がりのしょうゆ麹の味に大きな影響を与えるので、使うしょうゆは本物のしょうゆ(原材料が「大豆・小麦・塩」のみのもの)を使ってください。

所要時間:10分
寝かせる時間(目安):冬場は約2週間、夏場は約1週間

材料

米麹200g
しょうゆ200cc

作り方

  1. 米麹はボウルに入れ、手で握ってもみほぐすようにし、麹が粒状になるまでよくほぐす。
    米麹
  2. ①にしょうゆを加え、麹としょうゆがよく混ぜ合うように両手でもみ合わせる。
  3. 清潔な保存容器に入れ、フタをして常温で寝かせる。
    しょうゆ麹の作り方
  4. 毎日1回混ぜて空気を入れる。発酵が進み、甘酒のようなトロミが出てきたら出来上がり。冷蔵庫で保存する。
    しょうゆ麹の作り方

しょうゆ麹レシピ

しょうゆ麹は発酵食品であるしょうゆに、さらに米麹を加えて発酵力を高めた調味料です。日にちが立つほど発酵・熟成が進み、味はまろやかで甘みやうま味が生み出され、「かける」「漬ける」「和える」などの幅広い調理法に利用できる調味料に変身します。また、しょうゆと麹の生み出す深い味わいは、他の調味料の味を必要としないため、特に減塩に気をつけている方には有効な調味料となります。焼くと香ばしさが増し、過熱すると素材の味が引き立つなど、しょうゆ麹を使うと料理はより一層美味になり、また味付けの失敗もないので、毎日の料理に積極的に利用しましょう。料理にしょうゆ麹を使うと、麹に含まれる酵素が食材をやわらかくするため食べ物の消化吸収が高まり、豊富なビタミンB群や乳酸菌が免疫力の強化や腸内環境を整えるために働きます。

凍り豆腐と落花生のしょうゆ麹揚げ

凍り豆腐と落花生のしょうゆ麹揚げ
凍り豆腐はかために作った豆腐を凍結して乾燥させた保存食品で、豆腐の栄養成分が凝縮された形で含まれています。凍り豆腐1個と豆腐1/2丁の栄養価はほぼ同じで、たんぱく質はアミノ酸組成に優れ、脂質はコレステロール低下に働く不飽和脂肪酸です。落花生も凍り豆腐同様に良質なたんぱく質と不飽和脂肪酸を豊富に含んでいるため、一緒に取ると動脈硬化の予防に有効な食べ合わせになります。また、ビタミンB群やEも多く含まれているため、体力回復・老化防止・冷え性改善なども期待できます。揚げ油にオリーブ油を使うと、高いコレステロール除去や血管強化が期待できます。

ひき肉のしょう油麹と豆腐の揚げボール

ひき肉のしょう油麹と豆腐の揚げボール
豚肉はビタミンB1を豊富に含んでいる肉です。しょう油麹に漬けると、酵素の働きで肉がやわらかくなって消化吸収が高まり、疲れのもとが体内に溜まるのが予防され、疲労回復に働きます。豆腐とアーモンドの脂質はコレステロールを洗い流す不飽和脂肪酸なので、豚肉・豆腐・アーモンドを一緒に取ると、血管が強化され、動脈硬化の予防に有効な食べ合わせになります。食物繊維も豊富に含まれているため、麹の乳酸菌と一緒に便秘予防に働き、美肌効果も期待できます。サラダを添えてビタミンCを補います。

サバ缶とヒジキのしょう油麹ふりかけ

サバ缶とヒジキのしょう油麹ふりかけ
サバは動脈硬化や心筋梗塞などを予防する不飽和脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(イコサペンタエン酸)、体のもとを作るたんぱく質、体に抵抗力をつけるビタミンB2を豊富に含んでいる青魚です。ヒジキはビタミンやミネラルを豊富に含む海藻で、特に豊富に含まれるカルシウムは、骨の成長や維持・高血圧や動脈硬化の予防・精神不安解消に働きます。サバとヒジキを一緒に取ると、動脈硬化や高血圧、脂質異常の予防に有効な食べ合わせになります。にんじんには血中の脂質を低下させる働きがあり、ヒジキの持つ浄化作用を高めます。ヒジキやごまの豊富な食物繊維と麹の乳酸菌が腸内環境を整えて便秘を予防し、コレステロール排泄をさらに促します。

エビとしめじのオクラ和え

エビとしめじのオクラ和え
オクラはビタミンやミネラルを豊富に含む緑黄色野菜です。さやの中にある独特のネバリ成分は整腸作用やコレステロールを減らす働きを持っています。エビ・しめじ・オクラを一緒に取ると、エビのベタインがコレステロール低下に働いて糖の吸収を阻害し、しめじの食物繊維が便秘を解消して血中や肝臓のコレステロール低下に働くため、脂質異常や動脈硬化の予防に優れた食べ合わせになります。しょう油麹の乳酸菌が腸内環境を整えるため、便秘予防にも有効です。

しょう油麹の寒天寄せ

しょう油麹の寒天寄せ
寒天は海藻のテングサやオゴノリを原料にして作られ、食物繊維やカルシウムなどのミネラルを豊富に含んでいる乾物です。食物繊維は胃酸で分解されるとアガロオリゴ糖という物質になり、抗酸化作用を持っています。卵は必須アミノ酸のすべてをバランスよく含んでいる完全食品で、特に肝臓機能障害や増毛に効果の高いメチオニンを多く含んでいます。寒天と卵を一緒に取ると、卵に足りない食物繊維が補われ、滋養や健脳に優れた食べ合せになります。良質なたんぱく質が取れるダイエット食として、肥満予防にも有効な一品です。

豆腐としょう油麹和えほうれん草のチーズ焼き

豆腐としょう油麹和えほうれん草のチーズ焼き
豆腐にはコレステロールを洗い流す作用を持つレシチン、サポニン、ビタミンE、リノール酸などが豊富に含まれています。ほうれん草のカロテンはがんや動脈硬化を予防し、葉緑素と一緒にコレステロールの排泄促進に働くので、豆腐とほうれん草を一緒に取ると、動脈硬化や糖尿病の予防や改善に働く食べ合わせになります。チーズのビタミンAとほうれん草のカロテンが粘膜を強化して病気の抵抗力を高め、目に栄養を与え、肌を乾燥から守ってパサつきを防ぎます。チーズのカルシウムはたんぱく質と結合した状態で含まれているため吸収に優れており、骨粗鬆症や血管の老化防止に有効です。

ごはんのしょう油麹焼き

ごはんのしょう油麹焼き
ごはんと小麦の主成分である糖質は、人間の生命活動に欠かせない大切なエネルギー源です。たんぱく質、ビタミン、ミネラルなども含有されており、しょう油麹と一緒に取ると、麹の生み出す酵素がごはんと小麦の栄養成分の消化吸収を高め、体力強化・疲労回復・イライラ防止などが期待できる食べ合わせになります。大豆類とオリーブ油の不飽和脂肪酸がエネルギー源となると同時に、コレステロール低下に働きます。白米を胚芽米(あるいは玄米)、小麦粉を全粒粉に置き換えると、ビタミン、ミネラル、食物繊維の含有量が高まり、より高い効能を得ることができます。

さつまいもとパスタのしょう油麹サラダ

さつまいもとパスタのしょう油麹サラダ
江戸時代、青木(あおき)昆(こん)陽(よう)によって飢餓食として日本各地に伝わったさつまいもは、ビタミンCやビタミンE、カリウム、食物繊維などを豊富に含んでいる芋です。さつまいものビタミンCは加熱に強い優れもので、ビタミンEと一緒に細胞の酸化を防いで抗がん作用に働きます。アスパラガスと一緒に取ると、アスパラガスに含まれるアスパラギン酸とグルタチオンの持つ抗酸化作用により、高いがん抑制が期待できる食べ合わせになります。パスタとしょう油麹に含まれるビタミンB群が体力強化や疲労回復に働きます。

大豆ときくらげのしょう油麹炊き込みごはん

大豆ときくらげのしょう油麹炊き込みごはん
「畑の肉」と呼ばれる大豆は、肉や魚に劣らない良質なたんぱく質と脂質、ビタミンB群、ビタミンE、食物繊維、サポニンやレシチンなどを含んでいます。黒きくらげはビタミンB群やビタミンE、ミネラルやレシチンを含んでいるため、大豆と黒きくらげを一緒に取ると、動脈硬化・脂質異常・老化防止などに有効な食べ合わせになります。大豆、黒きくらげ、にんじんの食物繊維は、しょう油麹の乳酸菌と一緒に腸内環境を整えて便秘予防に働きます。汁物の卵がプラスされることで、たんぱく質のアミノ酸スコアは満点になります。

鮭のしょう油麹マフィン

鮭のしょう油麹マフィン
鮭は良質なたんぱく質、不飽和脂肪酸、ビタミンAを豊富に含み、身の赤い色はカロチノイド色素のアスタキサンチンで、体内に入るとビタミンA効果を発揮します。ビタミンB群も豊富に含まれ、しょう油麹のビタミンB群がプラスされると、体力強化や気力充実が期待できます。鮭と卵を一緒に取ると、ビタミンやミネラルが豊富な上に、アミノ酸スコア100%となるため、免疫力が高まる食べ合わせになります。レタスとりんごでビタミンCを補い、粘膜強化や抗酸化力を高めます。ふすま入りのマフィンにはビタミンやミネラル、食物繊維が豊富に含まれており、麹と一緒に免疫力強化や体内浄化に働きます。