あさつき

あさつきとは

あさつき

あさつきは古くから自生してきた野草

あさつきはユリ科の多年草で、根にはらっきょうに似た長卵形の鱗茎(りんけい)があり、その外皮はややかたく、薄い紫褐色を帯びています。中国・日本・朝鮮半島の山野で古くから自生してきた野草で、ねぎよりも色が白く、わけぎ(ねぎとたまねぎの種間雑種)に似た香りを持っています。ハーブの仲間といわれるチャイブの変種ともいわれており、冷涼地に広く分布し、春、若芽のやわらかい内に取ってにら同様に油で炒めたり、茎は刻んで薬味などに利用されています。高い効能を持つ香草で、東北や関東地方では野菜として栽培されています。

『万葉集』や『源氏物語』にも登場

あさつきは、にらやにんにくと一緒に滋養野菜として重宝され、春の貴重なビタミン源として食されてきた香草です。その存在は『万葉集』や『源氏物語』にも登場し、1709年貝原益軒(かいばらえきけん)(江戸時代の本草学者)によって編纂された『大和本草(やまとほんぞう)』にはその名の由来として「やせたる=細い」「き=葱の古語」と記され、ねぎの仲間ではもっとも細いことからこの名で呼ばれていると著されています。また色がねぎより薄い(浅い)ことからこの名で呼ばれているとの説もあります。山野に自生することから地域ごとに「せんぼんわけぎ」「いとねぎ(糸葱)、」「えぞねぎ」「三月わけぎ」など、様ざまな呼び名で呼ばれています。

闇夜でもよく物が見えていた古代人

あさつきは体の生理機能を整える薬食同源(医食同源)の食べ物です。葉の濃い緑部分には、体内でビタミンAの働きをして眼に栄養を与えるβ‐カロテンが豊富に含まれています。そのことから、あさつきを常食していた古代人は闇夜でもよく物が見えたといわれています。『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』(江戸中期の本草書。人見必大著)に、あさつきの効能として「気を下し、食を消し、また能く食を進める」と書かれています。胃を丈夫にし、風邪・神経痛・頭痛などの予防をし、腸の働きを整える効能があり、虚弱体質や病後の栄養補給に食されてきました。

コンパニオンプランツとして働く

チャイブの変種といわれるあさつきは、コンパニオンプランツ(共栄作物)として利用することが可能です。コンパニオンプランツとは主植物の傍に栽培すると主植物の生長にプラスに働く植物をいい、あさつきはトマトやナスのコンパニオンプランツとしてアブラムシを回避、またにんじんのコンパニオンプランツとして土壌の殺菌に働くといわれています。

お雛さまのお供えに欠かせない山菜

初春に緑の葉をつける香気豊かなあさつきは、カルシウムやカリウムなどのミネラル類や、β‐カロテンやビタミンB群・Cなどのビタミン類などを豊富に含む野草です。その強い生命力と生長の早いことから、子どもの健やかな成長を願い、お雛さまのお供えに欠かせない山菜とされ、今なおその風習が残っています。

あさつきに含まれる主な成分

あさつきは山野に自生し、春の貴重な栄養源として古くから食されてきた香草です。白い部分は淡色野菜、青い部分は緑黄色野菜で栄養成分が異なります。青い葉の部分には体内でビタミンAの働きをするβ‐カロテンが豊富に含まれ、白根部分には薬効部分が多く含まれています。ビタミンC、カルシウム、カリウム、食物繊維などの栄養成分が含まれ、特有の辛みは硫化アリルの一種のアリシンです。

特有の香り成分「アリシン」が健康維持に働く

あさつき特有の香りはねぎ類に含まれる硫化アリルによるものです。硫化アリルの一種のアリシンには、ビタミンB1の吸収を高める働きがあり、消化液の分泌をよくして食欲を増進させ、疲労回復に働きます。血行をよくして体を温め、血小板の凝集を抑制して血液をサラサラにし、血中コレステロール除去に働くことから、血栓・糖尿病・高血圧・動脈硬化などの予防に働きます。また殺菌作用も高く肉や魚の生臭さを和らげる作用も持っています。アリシンは揮発性成分のため、長く加熱したり水にさらし過ぎると、その効能が半減してしまうので注意しましょう。

カロテンが視神経の働きをよくする

あさつきの葉の部分にはβ‐カロテンが豊富に含まれています。β‐カロテンは皮膚や粘膜を健康に保ち、視神経の働きをよくする栄養成分です。欠乏すると暗い所での視力が低下し、夜盲症(暗い所で物が見づらい)を引き起こすことがあります。古代人が闇夜でもよく物が見えたといわれているのは、このカロテンの働きによると伝えられています。カロテンは吸収率が低いのですが、脂溶性の成分なので油を使った料理法にすると吸収率を高めることができます。

抗がん作用や抗ウイルス作用に働くビタミンC

あさつきの葉の部分に多く含まれるビタミンCは、毛細血管や皮膚、骨や粘膜を強化する働きを持ち、生理作用は抗がん作用、抗ウイルス作用、解毒作用と多岐にわたっています。欠乏すると皮下出血や歯茎が紫色になったり、壊血病(体内の各器官で生じる出血性の障害で、全身の倦怠感や関節痛などが現れやがて死に至る)を引き起こします。風邪や発熱時の消耗が激しく、また貧血の時にも鉄と同時に赤血球の再生を助ける働きをします。熱に弱く水溶性のビタミンなので、生食が好ましく、加熱の場合は炒めたり揚げたりすると損失が少なくてすみます。

豊富なカルシウムが骨や歯を強化し、筋肉のけいれんや精神的なイライラを予防する

あさつきに含まれるカルシウムは、体内にもっとも多く存在するミネラルで、大部分は骨や歯に含まれています。そのため不足すると骨や歯がもろくなったり、筋肉のけいれん、精神的なイライラ、心臓筋肉の収縮作用の異常、出血が止まらないなど、様ざまな症状を引き起こします。カルシウム吸収にはビタミンDが関与し、またリンの割合が多いとカルシウム吸収は悪くなります。カルシウム補給に牛乳がよいといわれるのは牛乳にビタミンDが含まれているからです。

あさつきレシピ

あさつきは山野に自生し、冷涼地に広く分布しています。古代から食されてきた香りのある野草で、ほんのりした甘みは茹でることでさらに増します。そのため古くからさっと茹でたあさつきを和え物やぬたなどにして食してきました。カルシウムやカリウムなどのミネラル類、β‐カロテンやB群、Cなどのビタミン類、硫化アリルの一種のアリシンなど、病後や虚弱体質の人の栄養補給に有効に栄養成分が豊富に含まれています。三大栄養素のたんぱく質・脂質・糖質を一緒に取ることで、体の生理機能が整う栄養バランスに優れた食べ合わせになります

あさつきの海苔巻

あさつきの海苔巻
海苔はビタミン、ミネラル、食物繊維を豊富に含んでいる海藻です。あぶると緑色に冴えるのは葉緑素によるもので、葉緑素には粘膜のただれを治し、コレステロール値低下や増血作用などに働きます。あさつきを雑穀米やシラス、海苔と一緒に取ると、カルシウムやカリウム、食物繊維が豊富に取れ、骨や歯の強化、精神安定、血圧安定、血中コレステロール低下などに働く食べ合わせになります。

あさつきと鶏ササミの酢味噌和え

あさつきと鶏ササミの酢味噌和え
あさつき、鶏ササミ肉、くるみを一緒に取ると、あさつきに含まれる食物繊維と、鶏ササミ肉とくるみの不飽和脂肪酸が、コレステロール低下に働き、脂質異常や動脈硬化予防などに有効な食べ合わせになります。鶏ササミとくるみに含まれるビタミンEが動脈硬化予防をさらに高め、あさつきに豊富に含まれるβ‐カロテンが皮膚や粘膜を強化して老化防止に働きます。

あさつきのおから入り蒸しローフ

あさつきのおから入り蒸しローフ
豚肉はアミノ酸バランスに優れたたんぱく質を含み、ビタミンB1を豊富に含んでいる肉です。おからは良質な植物性たんぱく質、カルシウムやカリウムなどのミネラル、食物繊維を豊富に含み、豆腐と同じような栄養成分を含んでいます。あさつき、豚肉、おからを一緒に取ると、体力が強化され、動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病の予防に優れた食べ合わせになります。あさつきのアリシンと豚肉のビタミンB1が疲労回復力を高め、あさつきとおからのカルシウムが骨粗鬆症の予防や精神安定に働きます。

あさつきとイワシのマリネ

あさつきとイワシのマリネ
イワシは私たちが体内で作ることのできない多価不飽和脂肪酸のEPA(イコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)を豊富に含んでいる青魚で、あさつきのアリシンや大豆のリノール酸と一緒にコレステロール値低下に働きます。あさつき、イワシ、大豆にはカルシウムが豊富に含まれ、歯や骨の強化・精神安定・筋肉のけいれんを治すなど、体のさまざまな症状の緩和に働きます。オリーブ油に含まれる一価不飽和脂肪酸のオレイン酸は血中LDL(悪玉コレステロール)を低下させる働きに優れ、動脈硬化の予防に有効です。

あさつきのスープ煮

あさつきのスープ煮
アサリは良質なたんぱく質と鉄分やカルシウムなどのミネラル類、ビタミンB群を豊富に含んでいる貝です。特有のうまみ成分はグリシンやグルタミン酸、コハク酸などで、エネルギー源になると同時に、コレステロール低下に働きます。あさつきと一緒に取ると、疲れが取れて肩こりや腰痛が予防され、増血作用が高まり、コレステロール値や中性脂肪を減らし、動脈硬化・脂質異常・糖尿病などの予防に有効な食べ合わせになります。しいたけのうまみ成分のグルタミン酸やレンチシンがその効能をさらに高めます。