「一汁三菜」は21世紀を生き抜く理想食

アメリカ政府が奨励する「アメリカ版和食」のススメ

2005年の初め、依然肥満が社会問題になっているアメリカで「2005年版―米国栄養ガイドライン―」が発表されました。概要は食事と運動で生活習慣病を予防するという内容で、食生活では穀物や魚の摂取を奨励しています。長寿国日本の食生活を念頭に置いたと考えられる、さしずめ「アメリカ版和食」といえるような内容となっています。
アメリカが理想の食生活とする和食とはどのようなものでしょうか。そして、つい近年まで日本人が当たり前に食べてきた和食とはどのような献立だったのでしょうか。

和食は穀物摂取比率の高い食事

日本人が長く食べ続けてきた和食は、でんぷん食(穀物食)の比率が高い食事です。たんぱく質は主として大豆などの植物性たんぱく質が中心で、時折魚などの動物性たんぱく質を補い、脂質は不飽和脂肪酸を含有する豆類や木の実類、魚介類で取っています。
体を作る三大栄養素は炭水化物、たんぱく質、脂質です。和食はこの三大栄養素に旬の野菜や海藻、果物を組み合わせてビタミン類やミネラル類を補う献立です。栄養の摂取配分が誠に理にかなったこの食事が、日本を世界一の長寿国にした大きな要因といえるでしょう。
エネルギーの55%以上(75%以上になると他の栄養素が摂取できない恐れがある)を各種炭水化物で取る食生活は、体脂肪蓄積の可能性を低減するという報告が発表させています。穀類を食べると太るのではなく、きちんと食べないことが肥満の原因にもなっているのです。
肥満は生活習慣病の温床であり、がんや脳梗塞や心梗塞、糖尿病などを引き起こし、結果、寿命を縮める結果となります。

和食の基本は「一汁三菜」

和食の基本は「一汁三菜」。一汁は1種類の汁物という意味で、通常はみそ汁を指します。三菜は3種類のおかずのことで、主菜1つと副菜2つ。主菜は通常魚類(刺身や焼き魚、煮魚)を中心に時に肉類に代わり、副菜は大豆系と根菜系で構成されます。ご飯と香のもの(漬物)は主食なので数えません。
使われる食材は旬のものが中心。旬の食材には太陽と大地からのエネルギーが満載されており、体に取り入れることで免疫力が高められ、体を酸化から守り、自然治癒力を高めてくれます。
「一汁一菜」「一汁二菜」という言葉があるように、和食に汁物は欠かせません。「菜」の種類が少ない時は、汁物を具だくさん(具だくさんのみそ汁)にして、栄養バランスを整えます。逆に「菜」の数が多い時は、シンプルな汁物にします。定番のごはんと漬物を基本に、「菜」と「汁物」で栄養バランスを考える、和食はプラスとマイナスを賢く応用する食べ方といえましょう。

日本型食生活を食卓に

肉類や乳製品などに代表される動物性高たんぱく質が中心のアメリカの食生活が、多くの生活習慣病の要因になっていることは自明の事実です。この食生活に警鐘を鳴らし、健康長寿を目指して、今、アメリカでは日本人が多食してきた穀類と魚の摂取を国民に奨励しているのです。日本人が最も多く摂取している大豆および大豆製品は、ここ数年で、かなりアメリカの食生活に定着しています。古来より、優れた食文化を形成してきた日本。その日本型食文化を、今、しっかり食卓に取り戻しましょう。日本型食生活を奨励するアメリカでは、がんによる死亡率が減少傾向にあります。一方、日本は依然と右肩上がりで増加しているのが現実です。
食べ物は体を作る基本です。毎日の食を考える時に「一汁三菜」を念頭において献立を組み立てる習慣をつけましょう。「一汁三菜」は21世紀の超情報化・超高齢化社会に対応できる理想食なのです。