ホメオスタシス -体の内なる声を大切に-

ホメオスタシスってご存知ですか。
私たち動物は外的・内的に影響を受けても、自分の体内でバランスを取り、生命を維持できるような能力を持っています。体温を維持したり、血糖値を調整したりして生きていく上で大切な機能を常に正常に保とうとする働きが備わっており、この働きをホメオスタシスといい、「恒常性の維持」と訳されています。

ホメオスタシスは体の内なる声

野菜不足の状態が続くと無償に野菜が食べたくなる、汗を大量にかくと塩分が欲しくなる、甘いものが無償に食べたくなる、食べ過ぎの状態で苦しくなると早く排泄しようとする…というような状態になったことはありませんか。
これらがホメオスタシスによる働きで、足りない時は取り入れ、多すぎる時は出そうとする体に備わった能力です。体内でバランスを保ち健康を維持する、ホメオスタシスとは体の内なる声、体の危機管理システムともいえます。
遭難した人が、わずかな食料や水で何日間も命をつなぎ生還するという奇跡があります。これは体の危機に際して、ホメオシスタスが働き、それによって最低限の食料でも命が維持できた結果といえましょう。

サプリメントで栄養素を取ってみると

ホメオスタシスによる体の内なる声を聞くことは、必要な栄養素を取って健康な体を維持する上で大切なことです。
例えば、成人の一日に必要なビタミンC所有量は100mg。普通、私たちはこのビタミンCを野菜や果物など食べ物から取っていますが、これをサプリメントで取ったとしましょう。
一日の所要量100mgをレモンで取るにはレモン5~6個分の果汁を必要とします。1000mgだったら50~60個分のレモンの果汁が必要になります。一度にこんなにレモンを食べられませんが、レモン50個分のビタミンCが入った飲み物や錠剤なら、一気に飲むことができます。
取り過ぎたってビタミンCは水溶性だから余計なものは尿として出てしまうから心配ないと多くの人は考えがちです。しかしビタミンCの過剰摂取は尿路結石を引き起こすことが知られています。

脂溶性ビタミンの取り過ぎに注意

さらに気をつけたいのは、ビタミンAやD、Eのような油溶性のビタミン類。油になじみやすいものは蓄積されやすく排泄されにくいという性質を持っています。
とくに単品でこれらの栄養素を取り入れると、体内の脂肪の部分や細胞膜に蓄積しあらゆる部分に取り込まれます。排出されにくいために体内にどんどん溜まっていきます。どんどん溜まったビタミンはどうなるかというと、肝機能を低下させたり、また妊娠中のネズミにビタミンAを大量に投与すると胎児に影響の出ることなどが証明されています。

過剰摂取は弊害を生む

体にどんなに必要な栄養素であっても過剰の取り過ぎは、かえって危険な結果を招きます。これ以上は必要ないという体の内なる能力ホメオスタシスが働かないため、栄養素はアンバランスに、しかも大量に摂取されやすく、結果、取り過ぎによる弊害が生み出されるのです。

栄養素は食べ物から取るのが基本

過剰摂取を防ぐには、食の基本である食べ物から取ることがベストです。食べ物からは一度にビタミンCを1000mgも2000mgも取ることはできません。
にんじん10本分のβ―カロテンが入った飲み物なら、難なく飲むことができますが、一度ににんじんを10本も食べることはできません。
当たり前のことですが、カロテンはにんじんなどの緑黄色野菜から取る、ビタミンDは魚などから取る、ビタミンEは大豆などから取る、というように自然の食べ物をバランスよく食べて栄養素を取り入れることが大切で、そのような食べ方をすれば、決して取り過ぎることはありません。
食べ物を食べるということは、単体の栄養素だけではなく、その食べ物に含まれている計り知れないほどの多くの栄養素や薬効が、私達の体に取り入れられるということです。サプリメントと自然の食べ物との大きな違いは、この一点にあるといっても過言ではないでしょう。