ゆず寿司(かきまぜ)

「かきまぜ」とも呼ばれるゆず寿司は、ゆずの産地として知られる徳島県の旧木頭村(2005年合併で現在は那賀町の一部)の郷土料理です。那賀川上流はゆずの産地として知られ、古くからゆずを使った料理が作られています。寿司飯の合わせ酢にはゆずの搾り汁を使い、ゆず皮のみじん切りを混ぜ込むことで芳しいゆずの香りが堪能できる寿司です。

イワシの粟和え(イワシの粟漬け)

庭に植えたゆずが黄色に冴える頃に作られるイワシの粟和えは、ゆずの香りと酸味を生かした山口県の郷土料理です。粟漬けは五穀豊穣や出世を願う縁起物として各地で作られ、魚は酢漬けにしたイワシやコノシロなどの表面が青白く光ったものが使われます。蒸して冷ました粟と酢漬けの魚を交互に重ねて押しをかけた粟和えは、年末からお正月にかけて作られ、約1ヶ月保存が可能です。

おはっすん

野菜や魚介などの山海の食材で作る煮物「おはっすん」は、広島県の郷土料理です。安芸門徒(あきもんと:広島県西部地域の浄土真宗門徒)の多い地域の郷土料理として有名で、慶弔を問わず人の集まる時には必ず作られる料理です。具材の数は祝儀の時は奇数、不祝儀の時は偶数にするといわれています。客は他の料理は持ち帰り、おはっすんを何倍でもお代わりして酒やごはんをいただきます。出来上がった料理を直径が八寸(24cm以上)もある器に盛ることから、この名で呼ばれ、余った時は、何度も煮返して食べます。

煮いも(いも煮)

「いも煮」とも呼ばれる煮いもは、島根県津和野の郷土料理です。津和野は昔から里芋の生産地で、特に山麓笹山地区で生産される里芋は、土壌が火山灰土質で培われているため、きめが細かくて腰があり淡白な味で有名です。煮いもは秋の収穫後や、紅葉狩り、秋祭りなどに作られ、「煮いもをやろうか」というのは、親しい人の集まりの代名詞に使われています。初秋になると店頭に煮いも用の「あぶり鯛」が並び、秋の訪れを実感させる風物詩ともなっています。

船場汁

船場汁は、商人の町、大阪船場で生まれたサバのアラで作る汁物です。船場の商家では丸ごとの新鮮なサバを買い求め、身の部分は主人とその家族が食べ、使用人は残ったアラでだしを取り、大根を加えて汁物を作り食していたと伝えられています。残り物ですが船場汁は体の温まる栄養価の高い汁物です。使用人の日常食はアラを使った船場汁など、残り物を利用した料理が多かったのですが、月の1日と15日の夕食にはサバやイワシなどの青魚を食べたといわれています。船場汁はうまい・安い・栄養があるという大阪生まれの合理的な料理です。

なつめの甘露煮

なつめのうま煮は、秋になると必ず登場する飛騨地方の郷土料理です。かつてはどこの家でもなつめの木が植えられており、生食が主ですが、岐阜県や愛知県足助町ではうま煮にします。寒さの厳しい中部地方では、うま煮や干したなつめを、厳しい冬を乗り切る貴重な保存食として食していました。現代でも、秋になると飛騨の店頭にはなつめが並び、作ったなつめのうま煮は瓶に詰めて冷蔵庫で保存します。

さといも赤飯

さといもを一緒に炊き込む「さといも赤飯」は、福井県奥越地方の郷土料理です。奥越の農家では、春祭り、お月見、秋祭り、彼岸などにさといも赤飯を作り、嫁いだ娘や親戚一同に届け、絆をより強くしていったと伝えられています。奥越のさといもは、独特の甘みと歯ごたえを持ち、江戸時代から特産物として栽培され、また子いもや孫いもがたくさんつくことから、子孫繁栄の縁起物として今なお重宝されています。

辛子れんこん

特有の食感と辛みを持つ辛子れんこんは、熊本県の郷土料理です。病弱だった肥後藩主三代目細川忠利公の健康食として玄宅和尚が考案したと伝えられ、300年もの間門外不出とされていた料理です。れんこんの周りにある8つの穴が細川家の家紋「九曜の紋」に似ており、熊本ではおせち料理に欠かすことのできない料理とされています。

豚の角煮

角煮はもともと中国料理で、宋代の有名な詩人、蘇東波(そとうば)が好んだとされているため「東波肉(トンポウロウ)」とも呼ばれています。長崎の家庭に馴染んだ料理のため、家庭ごとに「我が家流」があり、おふくろの味として親しまれています。主客ともに同じ食卓を囲む「卓袱料理」の中心になる料理で、箸で切れるほどのやわらかさになるまでコトコト煮るのがポイントです。

こんちん

ささがきしたごぼうをおやきのように焼いて作るこんちんは、高知県大豊町に伝わる郷土料理です。砂糖が入っているためほんのり甘く、子どもの代表的なおやつとして、また軽食としても日常的によく作られていました。えごまを入れて作られますが、昔は麻の実を入れていたといわれています。