ゆず

ゆず(柚子)とは

ゆず

耐寒性があり広い地域で栽培されているゆず

ゆずは中国原産(揚子江上流)のミカン科の常緑低木で、朝鮮半島を経由して日本に渡来したといわれています。栽培されている柑橘類の中で一番耐寒性があるため、南は宮崎から北限は東北地方といわれるように広い地域で栽培され、その栽培の歴史は古く奈良時代にさかのぼります(『続日本紀』に栽培が記されている)。香り高いゆずは「青い実の皮をそぎ酒に浮かべる」「※羹(あつもの)に和す」「蕾を軽く指先でつぶして椀の吸い口に利用する」など、古来より日本の食文化の中で利用されてきました。ゆずを使う食生活はまさに日本独特の食文化といえましょう。
※羹とは汁物、吸物などのことで特に熱汁をさし、現在の味噌汁と考えられる。

ゆずを食していた平安時代

ゆずの古名は「柚(ゆ)」。古くから邪気を払うといわれ、ゆず湯などに使われてきました。今ではあまりゆずを食べることはありませんが、『蜻蛉日記(かげろうにっき)』(平安時代の日記文学)には民衆がゆずを食べている記述が登場します。また、『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』(江戸時代中期の本草書。著:人見必大)には「柚の実は液分が多く酸(すっぱ)いので、汁をしぼって醋(す)に代える。それで東俗(あずま)では柚の醋といって、由須(ゆず)と訓じる」との記載があり、ゆずの汁が古くから酢の代用として珍重されてきたことが伺えます。さらに『本朝食鑑』では「菜や魚の毒や酒毒を解する」とゆずの効能が述べられています。『西鶴織留(さいかくおりどめ)』(浮世草子 著:井原西鶴)ではゆずに多いビタミンCが肌をなめらかにする漂白作用があることが記されています。(出典:『日本古代食事典』著:永山久夫)。

香気に富むゆず

ゆずの果皮はデコボコがあって厚みがあり、香気に富んでいます。果肉はやわらかく果汁は豊富、他の柑橘類に比べて種子が多いのが特徴です。皮はへぎとったり細切りにしたりして吸い口や天盛りに、果汁は絞って食酢として利用されます。ゆずを使って、ゆずこしょう、ゆずしょうゆ、ゆず酢、ゆず味噌などの調味料が作られ、ゆずの皮をすり鉢でよくすってそばに練り込んだゆず切りは、そばの中でも特に優雅なものとして珍重されています。

旬は青ゆずが8月、黄ゆずが11~1月

ゆずは初夏に花が咲き、6月末ごろに青玉と呼ばれる小粒な緑色をした実をつけます。この小粒な実は初秋に大きくなって青ゆずとなり、11月頃に緑色だった果皮が黄色みを帯びて黄ゆずになります。成熟していない青ゆずはさわやかな風味が特徴です。ゆずは貯蔵性があるため、12月までに収穫されたものは貯蔵され、春先まで店先に並びます。ハウス栽培もされているため通年入手できますが、旬は青ゆずが8月、黄ゆずは11~1月頃です。

刻んで冷凍すると香りが失われてしまう

保存性が高いゆずですが、原則は冷暗所で保存すること。温度が高い場合は乾燥を防ぐためにビニールなどで包み、野菜室に入れるのがおススメです。冷凍保存する場合は果皮を黄色い部分だけにしないで冷凍するのが上手な冷凍ポイント。黄色い果皮だけをそぎり細切りなどにして冷凍すると、細胞が壊れて香りが飛んでしまいます。

寿命が長いゆず

「桃栗3年 柿8年 ゆずの大馬鹿16年」などと喩言葉があるようにゆずは実をつけるまでに長い年月がかかる樹木です。植えてから実が収穫できるまでの期間が他の樹木よりも長いのですが、その分、木としての寿命が長いといわれ、樹齢100年以上といわれるものもあります。寿命が長いという意味で「柚寿」の字が当てられています。

冬至のゆず湯

お馴染みの「冬至にゆず湯」。この風習が広く一般化したのは江戸時代、銭湯が客寄せのために冬至にゆずを入れたのが始まりといわれています。客寄せのために始めたゆず湯ですが、ゆずの持つ効能が寒い冬を元気に乗り切るのに一役買ったのはいうまでもありません。この効能はゆずの持つビタミンCと精油成分によるものです。ゆずに豊富に含まれるビタミンCは肌の保水性を高め、高い抗酸化力を持っているため、ビタミンCが溶け出たゆず湯は肌のバリア機能を強化して乾燥などの肌トラブルを回避し、肌を丈夫にします。同時にゆずの香りによるアロマセラピー効果がストレスを緩和し、体の生理機能を調整します。香り成分は揮発性なので、湯に入れるとさらに香りが引き立ち、ゆず皮に多く含まれるリモネンなどの精油成分が角質保護に働き美肌を作ります。ゆず湯の効能として、血行促進、冷え性改善、風邪予防などが挙げられ、さらに神経痛や腰痛などにも効果があるとされています。

ゆず(柚子)に含まれる主な成分

ゆず

日本の食文化や暮らしと深くかかわってきたゆず。ゆずにはビタミンCを筆頭に、有機酸、精油成分、食物繊維などが含有され、黄色い皮にはβ‐クリプトキサンチンが含まれています。

豊富なビタミンCが風邪予防に有効

ゆずにはビタミンCが豊富に含まれています。含有量は果汁よりも果皮に多く含まれ、果汁の100g中40㎎に対して、果皮には150㎎と約4倍近い量が含まれていると発表されています(データ:高知大学)。ビタミンCはアスコルビン酸とも呼ばれる水溶性のビタミンで、高い抗酸化作用を持ち、毛細血管、歯、骨、軟骨や結合組織を丈夫にする働きがあり、欠乏すると皮下出血や歯茎が紫色になったり、深刻な不足は壊血病(※)を引き起こします。水溶性で熱に弱いので、有効に取るには生食がベストですが、火を通す時は短時間にしたり、揚げたりすることで損失を防ぐことができます。
※壊血病:ビタミンCの欠乏によって起こる病気。結合組織の形成が不良となり、歯肉などの出血からやがては静脈血栓を引き起こす。乳児の壊血病を報告した2人の医師名から「メラーバーロー病」とも呼ばれる。

赤血球の再生を助けるビタミンC

ビタミンCは風邪などの発熱時、ストレス、喫煙時にも消耗が激しいビタミンです。ビタミンCは免疫活動の主力である白血球の働きを強化し、免疫力を高める働きに優れています。発がん性物質ニトロソアミンの生成抑制効果やインターフェロンの生成促進などに働き、さらに、赤血球の再生を助ける働きがあるため、貧血時には鉄分と一緒に必要となるビタミンです。

カルシウムの吸収を助け、疲労回復や食欲増進に働く有機酸

ゆずにはクエン酸やリンゴ酸などの有機酸が含まれています。有機酸はカルボキシル基を持つ有機化合物の総称で、酸味やうま味の成分として働きます。クエン酸はさわやかな酸味を持ち、リンゴ酸はりんごなどの果実に含まれています。有機酸には疲労を回復する働きがあり、さらにカルシウムの吸収を助け、食欲増進効果にも優れています。

精油成分のリモネンが美肌効果とリラックス効果を発揮

ゆずの香り成分は「精油」という脂溶性の化合物に含まれ、精油の大部分は果皮表面の「油胞(ゆほう)」という粒状の組織の中に含まれています。精油成分の90%以上は爽快な香りを持つD‐リモネンという成分で、湯に溶け出すと角質を保護して美肌効果を発揮。最近の研究ではリモネンに「発がん抑制効果」「中枢神経の興奮を鎮静化する作用」「肝臓強壮作用」「腎臓機能促進作用」などに関する成果が報告されています。香り成分はリラックス効果が期待できることから、最近では代替医療にも利用されています。

食物繊維のペクチンが整腸、コレステロール低下などに働く

ゆずには水溶性の食物繊維ペクチンが豊富に含まれています。食物繊維はヒトの消化酵素で分解されない食物中の難消化性成分の総称で、水溶性と不溶性があり、ゆずに含まれるペクチンは水溶性の食物繊維です。水溶性と不溶性では生理作用が異なりますが、双方をバランスよく取ることが大切です。食物繊維には整腸、コレステロール低下、発がん性物質排除などの働きが認められ、動脈硬化や糖尿病予防などの生活習慣病の軽減効果も期待されています。

β‐クリプトキサンチンが細胞の酸化を予防し、シミをできにくくする

ゆずの黄色い皮に含まれるβ‐クリプトキサンチンは天然に存在するカロチノイド色素のひとつで、ビタミンA(レチノール)に変換されるため、プロビタミンAとされています。β‐クリプトキサンチンは抗酸化物質として細胞の酸化を予防し、メラニン色素の生成を促すチロシナーゼの働きを抑えてシミをできにくくするなどの働きがあるといわれています。

ゆず漬け3種の作り方

ゆず漬け3種
ゆず漬け3種
左:ゆずの調味漬け 右:ゆずしょうゆ麹漬け 手前中央:ゆず塩麹漬け

保存性の高いゆずはそのままでも日持しますが、調味液などに漬けておくと、栄養価が高まり、保存性もより高まります。刻んで調味料として使うと、味に深みが生まれ、料理の幅がグンと広がります。もちろんそのまま召し上がっても美味しいです。漬けた翌日から食べられ、漬ける時間が長いほど味に深みが出てきます。保存のコツは「水洗いしたゆずの水気をしっかり取ること」。水分があると腐敗が早まりますので気をつけてください。

ゆず塩麹漬け

<材料>ゆず、塩麹…各適量

  1. ゆずを水洗いし、水気をよく取り、縦半分に切り種を取り出す。
  2. 種を取り除いたゆずを、さらに縦4~6等分に切る。
  3. 容器(ガラスかステンレス)にゆずを隙間がないように重ね入れ、上から塩麹を注ぎ入れる。菜箸などで重なった柚子の隙間に塩麹が届くよう、軽くつつく。
  4. 菜箸でつつく作業を数日繰り返したら出来上がり。
ゆず塩麹漬け
ゆず塩麹漬け
漬けた翌日
ゆず塩麹漬け

ゆずしょうゆ麹漬け

<材料>ゆず、しょうゆ麹…各適量

ゆず塩麹漬けの作り方と同じ。

ゆずしょうゆ麹漬け
ゆずしょうゆ麹漬け

ゆず調味料漬け

<材料>ゆず…適量
    調味液…しょうゆ:砂糖:酒=2:2:1

  1. ゆずを水洗いし、水気をよく取り、縦半分に切り種を取り出す。
  2. 種を取り除いたゆずを、さらに縦4~6等分に切る。
  3. 容器(ガラスかステンレス)にゆずを隙間がないように重ね入れ、上から調味液をゆずがかぶるくらい注ぎ入れる。
ゆず調味料漬け
ゆず調味料漬け

ゆずレシピ

特有のさわやかな芳香を持つゆずは、和食の名脇役として欠かせない食材です。特に苦みや酸味を獲得した大人にとって、ゆずは必要不可欠的存在。ビタミンCや有機酸と同時に、黄色い皮に含まれるβ‐クリプトキサンチンや、果皮表面の湯胞に含まれるD‐リモネンなどの成分が免疫機能の強化に働きます。果汁を酢の代用としたり、果皮をへぎとったり細切りにして利用する一方、たんぱく質や糖質と一緒に取ると、滋養豊かな料理を作ることができます。本来、保存性の高いゆずですが、調味料などに漬けると、より保存性と栄養価が高まり、さまざまな料理にゆずを利用することができます(参照:ゆず漬け3種)。

ゆずとカニの豆腐かまぼこ

ゆずとカニの豆腐かまぼこ
豆腐の栄養価は大豆とほぼ同じですが、大豆よりも消化吸収に優れています。豆腐には木綿と絹があり、押し固めて漉して作る木綿にはカルシウムが多く含まれています。ゆずと豆腐を一緒に取ると、カルシウム吸収を助けるゆずの有機酸との相乗効果で、骨や歯が強化され精神安定に働く食べ合わせになります。豆腐とカニはともにコレステロール値を下げる低脂肪食品。栄養価が高くダイエットにもおススメです。

ゆず巻きサンマのチーズ焼き

ゆず巻きサンマのチーズ焼き
サンマのたんぱく質はアミノ酸スコアに優れ、脂質は多価不飽和脂肪酸のEPA(イコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)。悪性貧血に有効なビタミンB12の含有量が高く、ビタミンやミネラルをバランスよく含んでいる滋養強壮に優れた魚です。パルメザンチーズはイタリア・パルマ地方の超硬質なチーズ。熟成期間が長く、水分含有量が少ないためすりおろして粉チーズにしたり、薄くスライスしたりして食される保存性の高い完全食品です。ゆずとチーズはカルシウム補給に優れた食べ合わせで、サンマが加わることで滋養強壮の高い一品になります。

ゆずと鶏ひき肉の白菜ロール

ゆずと鶏ひき肉の白菜ロール
鶏肉は淡泊でやわらかく、脂質はコレステロールを減らす不飽和脂肪酸を多く含んでいます。白菜は体内の余分な熱を取り去り、体内に溜まった水分を出す作用を持ち、発がん物質を退治するジチオールチオニンを含んでいます。鶏肉、白菜、ゆずで作る白菜ロールは、細胞の酸化が予防され、動脈硬化や脂質異常などの生活習慣病予防に有効な食べ合わせになります。ゆずと白菜の食物繊維が腸の働きを促し、コレステロール低下に働きます。

ゆず酢飯

ゆず酢飯
ゆず果汁をたっぷり使うゆず酢飯は、ゆずのビタミンCと有機酸がたっぷり取れる酢飯です。黄色いゆず皮にはカロチノイド色素のひとつであるβ‐クリプトキサンチンが含まれ、細胞の酸化予防やシミをできにくくするなどに働きます。ゆず皮部分には精油成分のリモネンが含まれ、リラックス効果と同時に発がん抑制効果などに働きます。ゆず酢の有機酸が食欲増進に働き、米の糖質とマグロのたんぱく質と脂質を一緒に食べ合わせると、エネルギーに溢れたバランス食になります。

ゆずと豚ひきバーグのマフィン

ゆずと豚ひきバーグのマフィン
豚肉はビタミンB1を豊富に含む肉です。ビタミンB1は糖質を分解してエネルギーに変える働きをするため、豚肉を取ると体や脳の働きがよくなり、肩こりや腰痛予防にも有効です。ゆずと豚肉を一緒に取ると、ゆずのビタミンCと豚肉のたんぱく質が免疫力強化に働き、脳や体の若さ維持に有効な食べ合わせになります。ゆずとにんじんの抗酸化力が、細胞の酸化を予防し、老化防止に働きます。かぼちゃ、トマト、たまねぎなどを付け合せると抗酸化力を高めることができます。