しょうが

しょうがとは

しょうが

弥生時代以前に渡来していたしょうが

しょうがはショウガ科の多年草で、原産は熱帯アジアです。地下茎は多肉で強い芳香と辛みを持ち、食用、薬用、香辛料として広く利用され、現在では世界中で栽培されている野菜です。暖かい地方のしょうがは開花しますが、日本で育つしょうがのほとんどは花が開きません。日本への渡来は、3世紀に中国で著された『魏志倭人伝(ぎしわじんでん)』に古代日本の産物として「薑(きょう)」との記載があることから、弥生時代以前と推測されています。

薑は辛いものの総称

「薑」は「はじかみ」とも呼び、「辛いもの」の総称として用いられていた古語です。はじかみは「端噛み」の意で、丸ごと噛んでしまうと辛さで口中がしびれてしまうため、「端からゆっくり噛む」という意味を持っています。その後、辛いもの一般を指す言葉となり、現在でも葉つきの若いしょうがを「はじかみ」と呼んでいます。

万病に効くことから、旅には必ず携帯された

中医学(中国伝統医学)ではしょうがは「中」の食べ物と位置付けられ、体を温めて炎症を抑える働きに優れ万病に効くことから、旅に出る時には塩と同時に必ず携帯したと伝えられています。また、平安時代に著された現存する日本最古の医学書である『医心方(いしんほう)』には、しょうがの効能について「本草が云うには、味は辛で性は微温。傷寒、頭痛、鼻閉、眩嗽(げんそう)、気の上衡の主治食で、吐き気をとめる。長く食べ続けると、体臭を除いて、精神を明らかにする」(参考文献:『日本古代食事典』)と記されています。

生薬として利用されてきた長い歴史を持つしょうが

中国ではしょうがの根茎は「生姜(しょうきょう)」と呼ばれ、紀元前500年頃から生薬として利用されてきた歴史を持ち、方剤の多くに利用されています。体を温める、胃腸の働きを高める、水分代謝をよくするなどの作用があることから、現代においても風邪・鼻づまり・咳・ぜんそく・冷え性などの改善に利用されています。日本薬局方(厚生労働大臣が定めた医薬品の規格基準書)では、皮をむいて蒸してから乾燥させたものは「乾姜(かんきょう)」、乾燥させたものは「生姜(しょうきょう)」と区別されています。
※日本ではしょうがを漢字で「生姜」と書きますが、中医学や漢方では乾燥させたしょうがを「生姜」と書き、「しょうきょう」と呼びます。

品種は20種類余りあり、根茎が肥大したものが薬効に優れている

しょうがは塊の大きさにより、小しょうが、中しょうが、大しょうがに分けられ、栽培方法や収穫に応じ、芽しょうが、葉しょうが、根しょうが、新しょうが、ひねしょうが(土しょうが)などと呼ばれ、品種は20種類余りあるといわれています。香味野菜として使われるしょうがは、根茎が肥大したもので、薬効に優れています。
芽しょうが:光を遮り新芽を30cm程度に栽培したもの
葉しょうが:根茎の小さいものを葉つきのまま収穫したもの
根しょうが:葉しょうがの根が大きくなったもの
新しょうが:栽培した年に種しょうがから分かれて肥大したもの
ひねしょうが(土しょうが):元の種しょうがのこと

辛み成分と香気成分が様々な症状の改善に有効

しょうがの辛み成分はジンゲロンと油状のショウガオール、香気成分はモノテルペン類のゲラニオール、シネオール、ネラールなどで、強い殺菌力、発汗作用、健胃、解毒作用、消臭作用などの効能を持っています。さらに昨今の研究で、抗凝血作用のあることが解明され、血中コレステロール値や血圧を低下し、心臓病や高血圧などの予防に効果があると報告されています。

保存は紙に包んで常温で

熱帯アジアが原産のしょうがは高温多湿を好み、生育には18~20℃くらいが適しています。乾燥を嫌う野菜なので、保存する時に冷蔵庫や冷凍庫に入れてしまうと変質してしまうので注意しましょう。紙に包んで常温で保存し、鮮度が落ちても(水分が抜けて乾燥しても)薬効には変わりはありません。

しょうがに含まれる主な成分

しょうがは90%以上が水分で、栄養価はビタミンB1やカリウムなどが含まれている程度で特に目立つものはありませんが、独特の辛みと香りに多くの薬効が含まれています。薬効が健康に及ぼす効能は実に多岐に亘り、そのためしょうがは薬用として利用されてきた長い歴史を持っています。

強力な殺菌力を持つ辛み成分

しょうがの辛み成分は「ジンゲロール、ジンゲロン、ショウガオール」の3種類の油状物質で、強力な殺菌力を持っています。生魚や生貝による食中毒を予防する働きがあることから、鮨屋ではしょうがを甘酢に漬けた「がり」が必ず添えられています。同時に、吐き気を抑えて食欲を増進させ、胃液の分泌をよくして消化吸収を助ける働きを持っています。特にジンゲロンは、体内に適度な刺激を与えて血流をよくする働きにも優れており、内臓全体の機能を活発にする働きを持っています。

自然保存や加熱によって増加するショウガオール

辛み成分のショウガオールとジンゲロンは、ともにジンゲロールから生成される成分です。ショウガオールは保存されている間に自然に増加し、加熱によってさらに含有量が高まります。一方、ショウガオールとジンゲロンを生成するジンゲロールは、保管中や加熱によって減少していきます。自然保存や加熱によって増加するショウガオールは強い辛みを持っているため、しょうがは収穫後の日数が経たものや乾姜(蒸してから干したしょうが)は辛みが強くなります。

辛み成分のさらなる効能

しょうがの辛み成分にはたまねぎやにんにくの持っている抗凝血作用や、血中コレステロールや血圧を下げる効果があることが昨今の研究で判明しています。このことから、しょうがを常食すると血流がよくなり、高血圧や心臓病などの生活習慣病の予防が期待できます。

消臭作用や食欲増進作用がある香気成分

しょうがの香気成分はモノテルペン類のゲラニオール、シネオール、ネラールなどで、辛み成分同様に強い殺菌力を持っています。発汗作用や健胃、解毒作用に優れ、また消臭作用があるため、青魚や肉類などの調理の際に使用すると臭い消しに有効です。また、食欲増進作用にも優れています。

体を温めて炎症を抑え、美肌効果もある

陰陽の理論で「中」であるしょうがは、体を温めて炎症を抑える働きを持っています。加熱することで体を温める効果が一層高まることから、冷え性改善には乾姜(かんきょう)(蒸してから乾燥させる)が使われます。一方、発汗・咳止め・健胃などの改善には生姜(しょうきょう)(乾燥したしょうが)が使用されます。いずれにせよ、「消炎、発汗、解熱、健胃、解毒、利尿」などに働くため、「腹痛、風邪、食中毒、下痢、冷え性、打ち身」などの症状緩和に利用されています。また血流をよくしてシミを取るなどの美肌効果もあり、中国では産後に必ず食べる習慣があるといわれています。

しょうがレシピ

現代人の多くは体が冷えていると指摘されています。冷えは様々な体調不良を誘発し、また免疫力の低下にもつながります。しょうがは血液の循環をよくして体の中から温める効能に優れているので、しょうがを常食することで体を温め、新陳代謝を活発にして体質改善に役立てましょう。
しょうがの上手な食べ方は皮をむかないここと単品で取らないこと。皮の部分には多くの栄養成分が含まれているので、皮はむかずにこそげること。有機栽培のしょうがでしたら皮ごと使ってください。また、しょうがは刺激が強いので単品で取ると胃を傷めてしまうことがあるため、いろいろな食材と一緒に料理してください。
一般に体質改善に有効なしょうがの量は一日75g(1かけ=15g)、乾姜では2~3gくらいといわれています。無理をせずに、毎回の献立にしょうがを利用する料理を心がけ、常食することで体質改善につなげていきましょう。

豚肉巻きしょうがの春巻

豚肉巻きしょうがの春巻
豚肉は肉類の中で最もアミノ酸バランスに優れ、別名「疲労回復のビタミン」と呼ばれるビタミンB1を豊富に含んでいます。ビタミンB1は糖質をエネルギーに換えて疲労感や倦怠感の回復に働き、不足すると体や脳の働きが鈍くなり、脚気や心筋梗塞などを招きます。豚肉としょうがを一緒に取ると、しょうがの体を温め抗凝血作用や健胃作用により、食欲が増進され、冷え性や肩こり改善に有効な食べ合わせになります。ショウガオールとビタミンB1の脂肪や糖質代謝によりダイエット効果も期待できます。春巻きの皮の原材料の小麦粉には気力を増す働きがあり、しょうがの辛みや香気成分と一緒に胃腸強化に働きます。

しょうが五平餅のごま焼き

しょうが五平餅のごま焼き
しょうが、鶏肉、ごはんを一緒に取ると、しょうがの体を温めて炎症を抑える働き、鶏肉のお腹を温めて気力を充実させる作用、ごはんの血行をよくする働きが組み合わさり、冷え性改善に優れた食べ合わせになります。特に風邪の諸症状の回復や冷えからくる下痢などに効果を発揮します。しょうがを加熱することで増加するショウガオールには血流をよくしてシミを取る作用があり、白ごまと味噌のビタミンEがプラスされると、美肌効果がより一層高まります。

しょうがとイカの炒め物

しょうがとイカの炒め物
イカは高たんぱく・低カロリーな食品で、血を補い内臓の機能を高める作用に優れています。特有のうまみは遊離アミノ酸によるもので、抗酸化力の高いタウリンも豊富に含んでいます。タウリンは肝機能やインスリンの効果を高める働きに優れ、血中コレステロールや中性脂肪の減少にも有効です。しょうがとイカを一緒に取ると、しょうがの持つ抗凝血作用やコレステロール値低下作用と一緒に動脈硬化や脂質異常、糖尿病などの生活習慣病の予防に有効な食べ合わせになります。パプリカと小松菜のβ‐カロテンが細胞の抗酸化力をさらに高め、くるみのビタミンEが動脈硬化予防に働きます。

しょうがとアサリの卵とじ

しょうがとアサリの卵とじ
アサリは良質なたんぱく質、ビタミンB群、鉄分、カルシウムなどを豊富に含んでいる貝です。グリシンやコハク酸などのうまみ成分や、遊離アミノ酸の一種であるタウリンも豊富に含んでいます。しょうがとアサリを一緒に取ると、しょうがの血中コレステロール値を下げる作用との相乗効果により、動脈硬化や脂質異常などの生活習慣病の予防に有効な食べ合わせになります。たまねぎの硫化アリルがその作用をさらに高めます。完全食品といわれる卵の卵黄には健脳に働くレシチンが豊富に含まれ、アブラナ科の白菜には抗がん作用の高いジチオールチオニンと胃腸のぜん動運動を活発にする食物繊維が豊富に含まれています。加熱により増加するショウガオールが脂質や糖質の代謝に働くため、ヘルシーなダイエット食としてもおススメです。

しょうがと鮭のコーンスープ

しょうがと鮭のコーンスープ
しょうがと鮭は胃腸を温めて消化機能を増進する食べ合わせです。さらにしょうがの辛みと香気成分に含まれる抗凝血作用、血栓予防に働く鮭のEPA(イコサペンタエン酸)、きくらげの血流をよくする働きが組み合わさり、脳卒中や心臓病、動脈硬化の予防に優れた効能を発揮します。れんこん・コーンクリーム・きくらげに豊富に含まれる食物繊維が血中コレステロール値低下を高め、便秘予防に働きます。血液サラサラ、食欲増進にも優れたスープです。